メイドさんと食事
この子出して良かったんだろうか......
ガッ!ガシィ!
そんな鈍い音と共に、江見ちゃんとラフィーの体がぶつかり合い動きが止まる。
「はぁー...はぁー...やっ、やるじゃない」
「主こそ...ふぅー、やるではないか」
江見ちゃんは肩で息をしていて、ラフィーも同じような状態だ。
よし2人とも疲弊してるなここいらが潮時だ。
「はい、そこまで」
僕はそう言うと2人の隙をつき素早く近づくと肩辺りを掴み、止めるように促す。
「ちょっと智樹!まだ勝負はついてない!」
「そうじゃ主殿!もう少しで決着がつきそうなんじゃ!」
......いやラフィー、君が戦いに没頭してどうするんだよ?訓練の為に召還召還したんだからね?
あと江見ちゃんもこんなとこで本気で戦う事に熱中しないで欲しい。
「2人ともこれが訓練って事を完全に忘れてるね?やり過ぎだよ」
「えー!大丈夫よ、まだもう少しやれるもん」
「わらわもまだやれるぞ」
......やれやれ、どうしたものかなぁ。
まあ2人には悪いけど、いい加減訓練を終わらせたいんだよな、そろそろもう少ししたら夕食位の時間だし。
この世界には明確な時間はないけれど、大体一日は日が落ちて沈むのを基準としている。
朝日が昇れば起きて、真上に太陽が来れば昼時、日が落ちれば夕時、といった具合だ。
少し日の傾きを見れば、もう日が落ちかけ始めている。
もうじき夕暮れになるだろう、このままほおっておいたらドップリと日が沈むまでやってそうだし止めよう。
「いいから2人とも止める事、でないと僕は知らないよ?」
「うっ...」
「それは...」
そう言って軽く睨みながら声をかける。
2人とも僕が言う事を聞かないとどんな目にあうのか分かっているので、しぶしぶ訓練を止めた。
ちなみに暴力なんて使わないよ?ただ、暫く2人が話しかけてきても聞こえてないフリするだけだし、大体これで2人はすぐに(ごめんなさいー)と泣きながら僕に謝ってくる。
全く、変な所で似てるんだから2人とも......
「じゃあ訓練はこれ位にして、夕食にしないとね」
ちなみに信也や春奈、皐月は2人の戦いを見て訓練に及び腰だったので、魔力による身体強化と障壁を張る事を少し離れた場所で覚えさせた。
物覚え良すぎて、あの様子だと数日でマスターしてしまうだろう、本当に2人とも魔力の扱いが優秀だ。
そして残る皐月はというと、同じく少し離れた所で僕が多少手を抜きながら相手をしていた。
皐月も才能の塊というのだろうか、物凄い速さで体術を僕から吸い取っていっていった。
更に、その後刃を潰した剣で立ち回りと基本を軽く教えてあげたのだが、これもまた筋がいい。
やっぱ異世界から来る人って、能力と潜在能力が高いって聞くけど本当だなぁ。
......では僕はどうなんだろう?
確かにこの体は異世界(現代)の体だ。
でも、心はこの世界の住人だった......まあもう現代の方に偏り始めてる気がするけどね。
半端者なのかそれとも......
そう考えていると、春奈から声がかかった。
「智樹君、そう言えば晩ご飯はどうするの?」
「そりゃ自給自足でしょ」
「えー、俺作れるのカップラーメンとか目玉焼き位だぜ?」
「いや、もうちょっとレパートリー増やそうよ信也」
「っていうかお城に居るんだし、今回ぐらい出して貰いましょうよ」
「うーん...そうだなぁ」
今後、僕らは冒険者としてやっていくのに自給自足は必要だろうけど、城に居る間位は食事を出してもらうようにして貰えないかなぁ?僕達がそう言いながら考えていると、城の中から誰かがやって来た。
確かあの女性は第二位の人だったかな?確か名前は...フィーリアさんだったと思う。
彼女は片手を上げながらこちらに声をかけてくる。
「はーい、皆元気に訓練してた?」
「ええと......」
片手を上げながらフランクに挨拶をされたけれど、そう言われて室内訓練場を壊してしまった事を思い出して居たたまれない気持ちになる。
チラッと皆の方を見ると皆同じ気持ちのようで、ばつの悪そうな顔をしている。
「すいませんでした」
兎に角先に謝っておこう。
「もしかして室内訓練所の事?」
「壊しちゃったんで......」
僕のその言葉に、皐月が江見ちゃんを睨み、江見ちゃんが小さくなる。
「あはははは、盛大にやったみたいね。まあ、悪気は無かったんだし良いでしょ、それより御飯のお誘いに来たわよ」
「え?良いんですか?」
「良いも何も勇者様とその仲間でしょ?元気があっていいじゃない、...それに馬鹿も都合よく暫く退場させられたし(ボソ)食事位出さなきゃ失礼よ、それじゃあ先にお風呂浴びた後食事にしましょうか付いて来て」
何かボソっと言ったようだが、問題は無さそうな気配だったので気にしないでおこうと思った。
そしてそう言われてついていってまず着いたのが風呂場なのだが......
「え?混浴一緒なの?」
「大丈夫よ、脱衣所は別だからさ、行きましょう」
「いや、そういう問題じゃなくて...」
そう言いながら女性陣はフィーリアさんに連れられて、僕らとは別の方に入っていった。
僕らも脱衣所に入ると、そこに籠が用意してあった。
「智樹、服はこれに入れるのか?」
「そうだろ、多分」
「着替えとかどうするんだろ?」
「さあ?」
などと言っていると、脱衣所の中に誰かが入ってきた。
......メイドさん?
年の頃は16、7位の女の子で眼鏡を掛けていて、長い髪を三つ編みにして更にその髪を首の辺りで軽く巻いて髪留めで留めている。
珍しい髪の結い方だなぁ?普通そのまま伸ばしているか、ポニーテールとかツインテールじゃないのかな?
僕がそう考えていると、メイドさんはゆっくりと両手で何か服のような物を抱えてこちらに歩いてきていて......躓いて転んだ。
しかも両手で持っていた衣類を離せばいいものを、それを持ったまま前のめりに顔からいった。
ちなみに躓いてから転ぶまでが非常に早かった為、手を差し伸べる事も出来ずに(すべし!)とかいう擬音が聞こえてきそうな盛大こけ方を目の前でしてくれた。
信也は横で(マジかよ...眼鏡属性でドジっ子メイドなんてリアルで始めて見たぜ...)とか変な方向で感心していたが...なんだそれ?
「だ...大丈夫ですか?」
取り合えず散乱した服は今置いておいて、このメイドさんに声をかける。
「~~~~~~~!!」
メイドさんは声にならない声を上げながら、顔を押さえながら丸くなって何かを必死に堪えている。
痛みなのか、恥ずかしさなのかそれとも......
「わふれへくらはい...」
「は?」
「いらのは...わ...わふれてふらはい!...///」
メイドさんはそう言いながら顔を上げ、眼鏡がずれたまま顔を真っ赤にして鼻を押さえて涙目でそう言ってきた。
「忘れて...って?」
「ひまのはのーはんでふ!やりなおひをようひゅうひまひゅ!!」
......いや、何故やり直しをしようとするかな......
「やり直しても同じような結果になると思うんだけど」
信也がそう言うと、メイドさんはキッ!と涙目で信也を睨みながら
「そんなことはないれす!こんろはしっかりと...」
そう言いながら片手で鼻を押さえながら、もう片手で急いで体を支え起き上がろうとする。
しかし...丁度片手を置いた場所、そこには彼女が持って来て散乱した衣類があって、バランスの悪い状態で立ち上がろうとした彼女は......
「はぐぅ!」
またもやこけて脱衣所の床に倒れこんだ。
流石に今度は僕も信也も何も声を掛けることは出来なかった。
少し沈黙した後、顔を自分達とは逆に向いてシクシクシク...とメイドさんが泣き始めた。
「せっ...せっはふ...勇者はまたひがほられたはら...ひょうほそは、ちゃんとひようほ...おもっはのひ~...」
あー、あー、ボロボロなき始めたよ...というかどんだけドジなんだよこの人...思わず春奈を僕は思い出した。
ーーーー
「くちゅん!」
「春奈、どうしたの、風邪?」
「?んーん、大丈夫だよ。何でもない早くお風呂入ろう?」
「あんたは混浴に抵抗はないの?」
「離れてれば大丈夫だよ。2人とも変な事しないだろうし」
「もししたらアタシが成敗するけどね」
「だから大丈夫だよ」
「成る程」
ーーーーー
「ほら、メイドさん手を貸すから立って、そんなにボロボロ泣いてちゃ可愛い顔が台無しだぜ?」
そう言いながら信也は、まだ泣いているメイドさんの近くに行き手を差し伸べた。
信也が手を差し伸べるとメイドさんは泣きながら恥ずかしそうにそっと手を添える。
何と言うかこのメイドさん、見た目より幼く感じてしまうのは気のせいだろうか?
「誰だって失敗はあるしさ、気にしないで良いって」
「れも、せっはふゆうひゃひゃまはひのおへはがでひるへいよはほほはのに...」
ああ、そう言えば勇者一行のお世話って名誉な事だっていうの忘れてたよ。
この人気張ってたというかガチガチだったんだね。
......見事に大失敗したけど。
その後も信也に慰められているメイドさんを見ていると、どうしても信也が年上でメイドさんが年下としか見えなかった。
ちなみにその時持って来た衣類は僕らの換えの衣類だそうで、それを3人で集めて今回の事はオフレコという事でメイドさんと少しの時間話した後、分かれお風呂に入った。
ちなみにお風呂では特に特筆する事は無かったよ?
ちゃんと時間をずらして入るようにしたよ。
だって内部は大きな浴槽だからといって、一緒に入ったら......江見ちゃんからどんな目に遇わされるか、もう分かりきった事になるじゃないかやらないよ。
命は惜しいし。
風呂に入りさっぱりした後、案内されたのは大きな部屋に大きなテーブルがありそこには大勢
の人が座っており、そしてそのテーブルの上にじは沢山の豪勢な食事が並べられた部屋に案内された。
その料理は中に野菜や米のようなものが詰められた大きな鳥の丸焼きとか、大きな皿に並々と盛られたスパゲティの麺とか(味付けは横にあるトマトベースのソースとか塩、胡椒で自分好みに味付けする)、現代では見る事の出来ない果物が山のように盛られていたり、綺麗に花のように飾られたレタスやキャベツのような野菜達(確か名前は違う)、キラキラと輝いていたり艶やかな光沢が美味しそうなデザート......凄いな。
てか僕の横で4人がそれを見て、ゴクッ!と喉を鳴らして、瞳をキラキラさせ涎を...ああもう汚いなぁ、まあ兎に角皆の視線は料理に釘付けだ。
そんな時テーブルの上座に王様が座っているのが見えて、僕らが部屋に入ると侍女さん達が僕達を席に案内させた後わざわざイスを引いて座らせてくれた。
そして僕らが席に座ったのを確認すると、メイドさん達は下がってその後に王様が皆に向かって声をかける。
「おおみな来たな、今日はめでたい日じゃ、今日は大いに飲んで食べようぞ」
王様がそう言うと、席に座った人々が一斉に食事をし始める。
江見ちゃんや信也なんかは、もう言われた瞬間に一番近くにある物に皿とフォークを伸ばしていた。
がっついてるなぁ...まあそれだけお腹が空いてたって事なんだろうけど。
皐月はお腹が空いているけど、慌てずに皿に取って食べている。
春奈は...何から食べようか何を取ろうか迷っている。
まあ春奈らしいけどね。
ちなみに江見ちゃんと信也は物凄い勢いでガツガツと食べている。
...いや、2人ともがっつき過ぎ。
僕は僕のペースでのんびりと食べてはいるのだが......今さっきからオタオタしてあんまり食べれてない春奈が気に掛かっている。
しょうがないなぁ...まあ丁度横だし取ってあげるか。
僕は皿に食べ物を幾つか取ると、その皿を春奈の前に置いた。
「智樹君?」
「取りにくいんだろ?取ったから食べるといいよ」
「うん、ありがとう智樹君」
「あ、智樹君良かったらそのサラダ取って」
「皐月、これ?」
「そうそう」
そうやって僕らは穏やかに食事をしているのだが、江見ちゃんと信也は...
「ちょっと!信也、そのプリプリな海老みたいなやつ取らないでよ!」
「だったらお前もその手に2、3本確保してる肉よこせ!」
「「ガルルルルル」」
「......何かあそこだけ食べ物の減りが早いね...」
「他人のふりしてましょう」
「やれやれ...」
......あれ?何か忘れてるような......?
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吊り下げられたままの人
「んむーーーーー!おほへー!...ははへっは.....」
「(こらーーーーー!降ろせー!...腹減った......)」
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