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幼馴染は魔王でした。私は勇者のようです。  作者: うらぎった
過ぎ去りし日々...そして<破滅の魔王>の名の切欠(きっかけ)
21/47

3狂殺 4<シリアス> 彼の悲しみと怒り。

まあ大体予想がついていたとは思いますが、アース(智樹)が悪い事をした訳じゃありません。

ただ彼は貶められただけです。

彼がした落ち度と言えば...彼ら2人を生かしたことでしょうか。

 その日大魔王となったアースは多忙であった。

 あらゆる種族から祝いの言葉や祝辞を情報伝達魔法テレパスで伝えられていた他にこれから大魔王としての仕事は山積みだ。


「(...専用回線を作る術式を組む必要があるなこれは...)」


 アースは半ばゲンナリしながら皆からのお祝いの言葉に受け答えしていた。


「(ああ、その説は世話になった。また機会がれば会って酒でも交わそう、ん?俺もその席に混ぜろ?お前が来るともはや宴会になるだろうが、いや悪口ではない......)」


 その時である。

 祭りが行われている町の広場が騒がしくなり、自分の居る玉座に転移テレポートしてくる気配を感じた。


「ん?」


 そしてやって来たのは彼が良く知る2人の高位魔族とその側近数名であった。


「ガルザンとドラグルか、何の用だ?」


 アースは慌てた様子もなく彼らを冷静に見ている。


「クッカカカカカカ、なぁに用向きは至極簡単な事でのぅ」


 そう言いながらガルザンは手下に向かって合図をする。


「死んで貰おうかと思ってのう、魔王様や!!」


 その合図に従いアースに襲い掛かる側近達、だが...


「すまんな、少し情報伝達魔法テレパスが乱れる...消えうせろ!」


 彼がそう言いながら玉座に座ったまま片手を振るうと、その手から膨大な量の闇の魔力が放出された。そしてそれと同時に彼の使い間が召還される。襲いかかろうとした側近達はその場で消滅するか、即座に絶命した。

 そして彼はゆっくりと立ち上がった。


「何とも荒い召還よな主よ」

「そう言うなラフィー、緊急事態なのだ」

「...そのようだな、ガルザン、ドラグルが謀反か...まあ予想の範疇であろう?」

「まあな、だがこんな時に起こすとは暮らす民の事を考えて欲しいものだ。」


 そんなアースの様子を見て、焦るガルザン。

(くっ...やはり奥の手を使わなければ勝てぬか化け物め...こい我が人形達よ。来たれ!)

 ガルザンがそう念じた次の瞬間、アースの後ろに3人の女性の人影が現れる。


「誰だ?...何だお前たちか」


 彼の後ろに現れたのは3人の彼の妻達。


 神祖の血筋、高位魔族ヴァンパイアの継承者 カーシャ=バシュタイン。


 魔王アースの副官であり、努力により高位魔族にも引けを取らぬ魔力を得、彼の寵愛を得た者 ラルシェ=ストール。


 そして魔王アースにより一族を救われ、彼の寵愛を受けた者 ディーア=エクスティン。


 彼女等3人がアースへとゆっくりと近づいていく、彼女達は体を丸め顔をうつむいていていて表情が見えない。

 その手には何か澄んだ水晶を1つづつ握っていた。

(命じていた通り...やれ!)

 ガルザンの情報伝達魔法テレパスにより彼女等は早足でアースに駆け寄りアースを囲む。


「どうしたお前た...ぐぉ!」


 次の瞬間、彼女等は手に持った澄んだ水晶をアースの体に突き刺した。

 通常ならば彼の体にはその程度の物はダメージにはならないだが、その水晶はズズズズズッ...とアースの体にめり込んでいく。


「ぐっ...これは...」

「汝ら!主に何をしておるか!!」

灼熱フェルノ

「あぁぁあああああ!」

「ラフィー!」


 まずい!どんな理由で彼女等がガルザンに手を貸しているかは知らないが、このままでは彼女は消滅させられてしまう、今のディーアにはそれだけの力がある!

 仕方ない!!


「我、汝の傷を癒すと共に契約を破棄し精霊界に帰すものなり!」

「あ...主?」

「こんな分かれ方だが生きろ、ラフィー」


 そうして彼女は精霊界に吸い込まれていった。

 あの傷なら死にはしないだろうが回復には長い年月がかかるだろう、それよりも今は彼女等だ。


「何をしているお前た...ち?...」


 ラフィーを送った後、彼女等の顔を上を向かせて顔を見た瞬間彼は絶句した。

 彼女等の顔は苦悶に満ちており瞳はあらぬ方向へ向いている。

 更に、目、鼻、口、耳といった穴からは血液が流れ続けている。

 その様はまるで彼女等が苦しみ嘆いているようであった。


「お前達どうし...ぐっ!」


 何かを言おうとした瞬間、水晶がアースの体にズブズブと進入してくる。しかもそれと同時に自分の魔力を吸収し彼女達に魔力を流しているような流れを感じる。

 いや...これは更に...彼女等を経由してドラグルやガルザンにも魔力が吸い取られて...


「あっははははははは!いいザマだなぁアースさんよお!」

「クカカカカカカ、気に入って頂けましたかな?ワシの(宿喰い虫)と(奪魔晶)は」



 ーーー少し前ーーー


 虫に脳を喰われ絶命し、ビクンッ!ビクンッ!と体を痙攣させているディーアの首筋を見てドラグルは呟いた。


「なあガルザンよぉ、お前が虫も使えるって事は知ってたけどよ...お前専門は死者や人体構造じゃなかったか?」

「ほう?良く覚えておったな?その通りじゃ」

「でもよ、これってそれ使ってねーよな?俺に(材料が要る)って言ってた割には?」

「何を言っておる?使っておるぞ?」

「は?」

「これでこの虫...いやこの(生き物)を見てみるが良い」


 そう言うと、小さい虫眼鏡のような物を取り出してドラグルに渡し、自分の懐から小さな瓶を取り出す。


「こやつ等は今ディーアに取り付かせたやつと同じものじゃ」

「げ!なんだこれ?」


 その瓶の中には2匹の虫...いや虫というのには醜悪な生き物がいた。

 何かの頭蓋骨に付けたかのような8本の昆虫の様な足、そしてず頭蓋骨が体なのであろうがその体の各所にある鋭い牙のついた口、ギョロリと周囲を前後を見渡す4つの瞳、そこから無数に蠢く触手とその先にある口。

 魔界であろうと、こんな虫は見た事が無かった。


「こりゃ作ったのか?」

「そうじゃ、これの材料は全て(生きた魔物、魔獣、魔族)を組み合わせた物じゃ」

「は?どうやって作ったよ?」

「何簡単じゃ、拘束してなかなか死なないように薬を注射した後生きたまま組み合わせればよい」


 簡単に言ってはいるがやる事はかなり猟奇的であった。


「じゃあこの体は魔族の頭蓋骨がベースか?...いやでも大きさが合わねぇぞ?」


 そう言うドラグルにクカカカカと笑いながら説明するガルザン。


「大きさか?、お主干し首は知っておるか?」

「ああ、あの煮ると首が握り拳位に小さくなるあれか?...って事は皮かこれ?」

「何を言っておる?それは正真正銘魔族の頭蓋骨を生きたまま体から切り取り血抜きした物じゃ、それにまだ全部(生きておる)」

「はぁ?」


 そう言われてよく見てみると、全体が脈打っているように見える。


「けどこの大きさは...縮小スモールか?」

「そうじゃ永続的にな、後あまりに詰め込みすぎて怨叉が激しすぎて3つしか命令が組み込めなかったわ」

「3つ?」

「そう、<食い破れ><進入せよ><乗っ取れ>とな」

「でもお前後で脳を都合よく作り変えるって言ってなかったか?」

「よく覚えておるのぅ...それはコイツの方じゃ」


 そう言って小さな牙の付いた触手を指す。


「こやつには<ワシの命令を聞くように作り変えよ>と組み込んである」

「ほー」

「つまりじゃ、こやつの本体が脳の中心で陣取りながら食事をして要る間に、触手の方は脳の隅々まで根を張り修復するのよカカカカ」

「えげつねーな...」

「まあただし、思ったより魔力が要るので数百年に1、2匹が限度じゃがの、しかも成功率もかなり低い」

「つまりは使い捨てだと?」

「そう言う事じゃ、もっと使い勝手が良い物を作らんとな...あ奴を始末した後に」

「そうだな...」


 そういう2人は陰湿な笑みを浮かべていた。

 そしてそのすぐ後にディーアであった物は立ち上がり傀儡くぐつとなったのだった。

 そしてその後助けにやって来た2人も同じ道を辿ったのであった。



 ーーーーー


「そういう訳での、そこにおるのは最早お主の女ではなくワシらの(傀儡くぐつなのじゃよクカカカカカカカカカ!ついでに言うとその水晶はお主の魔力を奪ってその物達や我らに魔力を流させる<流出>の魔術がかけてあるでの」


 ガルザンがそう言うと、あらぬ方向に眼球を向けて血の涙を流している彼女達は腕に力を込め水晶をアースの体に押し込む。


「がっガルザン、ドラグル、きっ......貴様らーーーーーーーーーーーーーーー!!」

「おっとアースを押さえとけお前ら」


 ドラグルがそう言うと彼女等はアースに抱きつきその行動を阻害する。


「おお!ガルザンいいなこれ!」

「まあお主とワシの言う事しかきかんがの」


 2人がそう言っている間にもアースの魔力は水晶に吸い取られていく。


「(このままむざむざ殺される訳には......しかし...)」


 アースは自分を拘束している自分の妻達を見る。

 その姿は苦しんで泣き叫んでいるようにも見えた。


「(すまん...お前たち...)我、制約によりその力を示せ...」

「その状態でどんな呪文を放とうというのじゃ?妻の亡骸がバラバラになるぞ?」

「そのような事にはならん...二重詠唱ダブルキャスト<魔力毒素>及び<魔力指定操作>」


 その言葉と共に彼の魔力を水晶を通して吸い取っていた彼女達が苦しみ出す。


「そして...<放出>」


 アースがしたのは水晶→妻達→ガルザン達と吸い取られている魔力の流れを逆利用したものである。

 先ず吸い取られている自分の魔力を毒素と変え、その魔力をいつでも操れるようにし思い切り相手に流し込んだのである。

 毒を体内に入れられるようなものなので当然お互いに苦しみは半端なものではない。


「ぐがががががががぁあああああ!」

「おぐがあああああぁああ、まっマジかこいつ!...ぐは!普通こんなもん取る奴いねぇ...ごぼぁ!」


 呪文の効果により、アース、ドラグル、ガルザンは血反吐を吐いて妻達はもがき苦しんでいる。


「ぐがあああ!もっ目的は果たした。今は逃げて解呪するぞドラグル!」

「ががああああ...あっ...ああ」


 2人はそう言うと、転移陣ですぐさま逃げて行った。

 それを確認した後すぐさまアースは解呪した。

 そしてその後には...倒れて動かなくなった侵入者と妻達の遺体と自分が残された。


「うぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」


 彼は血の涙を流しながら暫く慟哭し続けた。



 その後妻達の遺体はクリスタルによって封印された。

 魔界医師の話では今だ脳内部に生物が居り、取り除くのは不可能だという魔法による除去も意味を成さなかったらしい。

 そしてアースの魔力はその日から数段減少した。

 水晶や妻の体に魔力を吸い取られたからだ。

 あの日すぐに流失は封印されたのだが、彼女達や水晶達に奪われた魔力は戻らなかった。

 魔界医師が言うには。


「大魔王様の体の中の水晶は私では解析が出来ません。それと現在の魔力は1/8しかありません取り出そうとするとそれこそ死んでしまうでしょう、元の魔力を取り戻すには強くなって力を増やすか、それとも奥方様の亡骸を壊すしか...」

「力を増せば良いのだな?」

「ですが今のお体は封印されてるとは言え、体の中の水晶に少しずつ魔力を吸われている状態、早く元の魔力を戻すには...」

「黙れ!」

「ひっ!」

「もう彼女等を苦しめる事は許さん!」


 そしてそれからアース率いる魔王軍とガルザン、ドラグルが率いる軍団との戦いが始まる。

 そして更に...


「ぎゃああああああ!」

「助けてくれー!」


 人間を襲うドラグル、それは彼らにとっては次に計画的をしていた事。


「はははははは!恐怖しろ、怯えろ!俺らは大魔王アースを天辺に頂く魔王軍だ!歯向かう奴には死あるのみだ!!」


 そう言いながら彼らは村や町を略奪し壊滅していった。

 詳しい者ならそんな事は嘘だと分かるだろう、しかし魔族、あまり他の種族と戦争や戦い以外に関わりのない者......しかもその頂に位置する者、王族である。詳しい情報の有無が無い彼らにそれが分かる筈は無かった。

 そして全ての凶事は大魔王アースの指示の元行われていると、そう認識される事となった。

 そして彼は後に人種と魔族...ドラグルとガルザン側から追われる事となり罪をなすり付けられ死ぬ事となる。



 =====


『ここは何処だ?我は...そうだ...勇者に殺された筈...?』

『それは間違いない君は死んだ』

『何者だ?』


 そう言ったアースの前には、全身光に包まれた輪郭からして男性が現れた。


『私かい?魂の世界を管理する者...君達で言う所の神と言ったところかな?』

『その神が何か我に用か?』

『いや、用は別に無いよ?ただ君の意識が強すぎてこの世界で自我を保っているに過ぎないんだよ』

『この世界?』


 足元を見ると何やら川のようなものが流れている。その向こうの景色は霧でよく見えない。


『この世界はよく(あの世)とか(魂界)(霊界)とか言われている。ちなみに足元の川は(レテ川)や(三途の川)と言われている。そしてその川を渡ると君の記憶は全て失われる』

『そうか...』

『おや?あんまり驚いてないね?』

『今更だ。それで我はどうなる?』

『また生まれ変わる。それは元の世界か他の世界かは分からないけどね』

『そうか...では行くとしよう』

『思い切りがいいねぇ、普通はもう少しごねる人が多いんだけどね』

『......今更だ、もう我は死んだのだどうする事も出来ん。ではさらばだ』

『こんな事を言うのも何だけど...元気出して』


 そう言われたアースは川を進みながらフッ...と笑い。


『今更だ』


 そうして彼は転生した。

 ただし記憶を持って。

 何故記憶を持ったまま転生したのかそれは分からない、しかし彼は今もその胸の内に怒りと悲しみを秘めている。

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