理不尽で口が悪いけど可愛い彼女(改)
のんびりと書く予定なのです。
私は幼馴染の智樹を城の中で、追いかけ続けている。途中何か当たって弾き飛ばしたような気がするけど、気のせいだろう
(お願い江見ちゃん気にしてあげて)
(電波とばしてきてんじゃないわよ!)
(ひいっ!ごめんなさい!)
私は前を走る智樹の背中を睨みつける。
「いい加減に止まりなさい!!」
「何もしない?」
「する!」
即答した。
「嫌だよそれはーーーー!」
更に加速する私の幼馴染。
やるわね!伊達に私の幼馴染やってないわ!ならば私も!!
更に加速して距離を詰める。
「まちなさいいいいいい!!」
「待たない!」
「今なら全殺しで済ませてあげるから!!」
「それ生きてないよね!」
「些細な問題よ!」
「全然些細じゃないよ!!」
なかなか差が縮まらない・・・
「男の癖に小さいわよ」
「小さくて構わないよ!!」
「男なら、ばーーんとKILLされなさい!」
「言い方変えても、嫌だっていってるだろーーーー!!」
「大体あんた魔王なんだから観念しなさい!」
「魔王だって命は惜しいよ!」
「私の精神の平和の為に観念しろーー!」
「それ、江見ちゃんの勝手だから嫌だーー!」
「贅沢言わないの!」
「十分慎ましいよ!!」
城の中庭や食堂、大広間、執務室、会議室等々、智樹と江見は城全体を走り回って、追いかけっこをしていた。
==暫くして==
「い...いい加減...止まりなさいよ...」
「江見ちゃんが、...ふぅ...止まってくれたらね」
「...止まるわよぉ」
その言葉を聞いて智樹は、足を止め江見の方を見る。
すると物凄い勢いで、智樹を捕まえに来た。
「もらったぁ!」
「やば!」
このまま捕まるとお仕置き確定なので、上体を反らして捕まえにきた江見を避ける。
思わず江見はたたらを踏む。
「ちいい!」
「女の子がそんな言い方しない方がいいよ」
「男尊女卑よ!」
「今、それ関係無いよね?」
二人は構えながら呼吸を整える。江見の方がやや息が上がっているようだ。
「はぁー、はぁー、しぶといわね...」
「鍛えられたお陰でね」
毎回逃げているらしい。
「大体なんで僕お仕置きされなきゃならないの?」
「それは......」
言えるわけない、いきなり召還されて、調べてみたら幼馴染が魔王と言われて、他の人が「邪悪なる者などいらぬ」とか「なんでこんな奴が」とか悪口言われてるのに、当の本人はのほほ~~ん としていつも通り流すつもりだったのが腹立たしいとか...
何で怒らないのこいつ?あんたが悪口言われたのよ?いや、分かってないのかも、だったら私がお仕置きしながら教えないと......
結局、智樹が悪口を言われたのが気に食わないのだ、それをのほほん と聞いていた智樹に対する暴力は単なる八つ当たりだとは分かっている。
「江見ちゃん?」
何も言わなくなった江見を見て、何かあったのかと江見の顔を覗き込む
「!?」
思わず近い距離に智樹の顔が近づいて声が出ない江見
(ちッ近い近い近い!)
思わず顔が真っ赤になる江見。
「あれ?江見ちゃん顔が真っ赤だよ?熱でもある?」
そう言いながら自分の額を、江見の額に当てて熱をみる。
(あうあうあうあうあう)
最早、茹蛸のようになる江見。
「江見ちゃん。何か凄い熱だよ。息も荒いし」
それは智樹が原因なのだが気がついていない。
「病気かな?少し何処かで休憩させて貰おう」
真面目な顔で江見にそう言うと、智樹は江見を両手で抱えるように持ち上げる。 お姫様抱っこというやつだ。
「おおおおおお姫様抱っこ......経験しちゃったぁ......」
彼女の目はグルグルと回っている。
「じゃあこのまま休む所を...」
「いやーーー!」
江見の右ストレートが智樹の頬にぶち当たる。
「な......なんで...」
そのままダウンする智樹。
「あ、ああああああやっちゃったぁ......智樹、智樹ーーー!」
その後、殴られて白目な智樹と、ばつが悪そうな顔をした江見が国王の元に連れ出された。
「何があったのじゃ...一体......」
中には(流石勇者)とか(もう魔王を倒されてしまったか)とか(あれ、お願いする魔王とは違うんじゃね?)とかいう声が聞こえるが、聞こえない、キコエナイ、聞きません、聞かないから
「え...江見ちゃん...流石に...それはどうかと...思うよ...」
「あ、生き返った」
「勝手に殺さないで...いたたたた...」
頬を摩りながら、起き上がる智樹。
「では、落ち着いたところでワシの話を聞いて頂けるだろうか?」
「うん、まあいいんじゃない?お髭の国王様」
「お...お髭...」
「貴様!勇者と言えど、国王様に失礼であろう!」
なかなか高そうな鎧を着て、腰に剣を吊るした、ガタイが良さそうなオジサンが何か言ってきた。
「うっさい!筋肉ダルマ!」
「きっ筋肉ダルマだと貴様...このワシに向かって...」
でも彼女の口は止まらない。
「煩い、黙って、臭そうだから寄らないで、脳筋が喋るな」
まだ機嫌が悪いのか絶好調で口が悪い。
「きっ貴様ーーー!」
江見に掴みかかろうとするが、他の兵士から止められる。
「はっ離せーーー!離さんか貴様らーーー!」
「ふん、所詮は小娘の戯言よ」
それにカチンときた江見。その文官らしき一人にターゲットを定める。
(何も言わなきゃ良かったのにあの人...)
智樹は内心ため息をついていた。
「うっさいわよ!そこの醜い文官A!いやらしいのは顔だけにして!」
(江見ちゃん、言いすぎ...)
「だっ誰が文官Aじゃ!そこに直れ小娘!!」
憤慨して、人差し指を突きつける文官Aさん。
「うっさい、バカ、何であんたに従わなきゃいけないのよ?頭に虫わいてるんじゃないの?」
より一層ヒートアップしている江見
(僕は止めないからね...今入ったら僕までターゲットにされる...)
「きっ...貴様!召還された勇者だからと言って図にのっておるな!この小娘!!」
「はあ?図にのってる?ふざけんじゃないわよ!召還したのはそっちが勝手にしただけの事じゃない、本当だったら私と智樹は中学行って、普通に生活してるだけだったんだから!こっちは被害者なんだからね!出来る事なら今すぐ返してもらいたいわよ!!」
(うわー...江見ちゃんに挑発や悪口言わせたら、かなわないなぁ...)
妙な事で感心している智樹であった。
「いやあの......」
「なんじゃと!小娘!!」
「ちょっと...」
「うっさいわね!いやらしい顔したすだれハゲ!だからモテないのよ!大体何であんた偉そうにしてるわけ!あんたが偉いわけじゃないでしょ?はー、嫌だ嫌だ人の権威を自分の物のように振りかざす。そんなバカみたいなオヤジの顔見てるなんて、今すぐ消えて、いやいなくなって存在そのものを!」
「ゆ...勇者どの...?」
そこへポンポンと肩を叩かれたので振り向くと、魔王と言われた智樹が居た。
(王様、国王様...失礼ですが、ちょっとお耳をお貸し下さい)
小声で国王に話しかけてきた。
(あ、ああ...なんじゃ?)
(あの状態の江見ちゃんに話しかけても、自分に火の粉が降りかかるだけです。ここは鎮火するまで、ほおって置いてください)
周りを見てみると衛兵も呆気に取られている...
(お主幼馴染なんじゃろ?何とかできんもんなのか?)
(無理です。僕が話しかけようものなら更に火の勢いが増します)
頭に片手を添えて項垂れる国王。
(...暫くは成り行きを見守るしかないと言う事か...)
(それが賢明な判断かと存じます)
今だ続いている激しい口論。
(しかし何じゃの?お主伝説の魔王の生まれ変わり、とは宮廷魔術師が言っておったが...そんな雰囲気は無いの?どちらかと言うと...平和的な性格をしておるが?......昔の記憶が無いのか?)
(ありますよ)
彼はハッキリと言った。
(昔の記憶はあります。部下の記憶や大魔法を使って敵を殲滅した事色々です)
驚く国王
(...ならば何故今この場で暴れたりしないで傍観者になっているのだ?)
すると智樹は言う。
(国王様...口情報なんて簡単に改竄出来ます。ましてや、歴史なんて本当の事は、その当時の人しか分かりません。歴史や出来事なんて下手をしたら勝者が勝手に改竄出来ますから...)
(ふむ...歴史には裏があると言いたいのだな)
(ご想像にお任せします)
(ふむ、しかしお主のその性格は前世からの物なのか?)
(......江見ちゃんの幼馴染やってたらこうなりました......)
(同情するわい)
(ありがとうございます)
二人の間に妙なシンパシーが生まれていた。
(江見ちゃんキツイんですよね。兎に角)
(ああ...今目の前でのやり取りでそれは良く分かる。ワシの妻よりキツイわ...)
(国王様の奥方はどんなお方で?)
(おお、これがのよくできた女子でな、ワシとの仲も良好で)
(それは良いですねぇ)
目の前で広げられている雑言大会は、意識の外に出している。
(そう言うお主は思い人はおらんのか?)
(いますよ?)
(おお、それはどこに?)
そう言われて、少し考えた後。
(秘密ですよ...目の前のあの子です)
...目の前で2,3人と言い合いをしている江見を指す。
(......お主...それは茨の道じゃぞ?)
(それでも歩きますよ、あれで可愛いとこが有るんですよ)
(ほうほうそれは以外じゃな)
(この前なんて子犬を見つけて、江見ちゃんに見せたら目を大きくして潤ませて、抱かせてあげたらもう頬が緩みっぱなしだったんですよ)
(ほうほう)
(他に花とかぬいぐるみも好きですねぇ)
(そこら辺は普通の女の子じゃのぅ)
(ええ、全く)
(......しかしお主話せば話す程、魔王らしくないのぅ。本当に世界征服を目前に死んだ魔王か?異名は<破滅の魔王>じゃったかの?)
すると苦い顔で智樹は答える。
(......そんな昔の古傷抉らないでくださいよ...今もあの時も、世界征服なんて望んでいなかったんですから、それに今の僕は幼馴染に恋している。ただの少年です。)
(世界征服を望んでおらんかったと?それは一体...)
しかしそこで恐怖の大魔王が光臨した。
「と も き いいいいいい!、あんた何そこでのんびりと話してんのよ!」
「ひいっ!」
そして江見(彼女)による智樹へのお仕置き(拷問)が始まった。
「ぎゃーーーーー!僕何にもしてないのにーーーーー」
「茨と言うよりは、奈落の底じゃな...」
言った瞬間、江見に睨まれたので慌てて顔を背けた国王であった。