魔法訓練続の解説と実戦開始(改)
始まった魔法の訓練と言っても、最初は地味なものだ。
僕の用意した10メートル位離れた位置にある紙に火をつけたり濡らしたり、風で揺らしたりまあ魔法を使ってやる簡単な事......の筈なんだけど
「ちょっと智樹!どうやって火を着けたり風で揺らすのよ?」
「紙に向かってふー、ふーって息を吹きかけるとか?」
「春奈...それ絶対違う、しかも距離遠いし」
「それじゃあ蝋燭だろ、しかもこの距離じゃあ動かないと思うぞ?」
そうだよねぇ皆魔力の無い世界の人だもんなぁ(まあ今は僕もだけど)火を着けるならライター、水を飛ばすならホースとか、風を送るなら扇風機とかで良いしねぇ。
という事は、まず皆に基礎中の基礎を教えないといけないんだな。あれ、待てよ?
「信也、お前どうやって、ジーハの前で魔法使ったんだ?」
「ん?魔法か?こう頭脳にビビっときて指を伸ばしてばーん!と」
「もういい、言わなくていい」
要するに直感だけでコイツ魔法を使ったのか!才能あり過ぎだろ!
普通は小さい頃から......現代で言うと小学校上がる位から大人から教わるんだよなぁ。
ええい、何か羨ましいぞコイツ!
「な...何だよ?こっち睨んで?」
「基礎を知らないで魔法を使えたお前の才能が妬ましい」
「え?基礎ってあるの?」
「あるわい!」
無かったら大変だ。
「魔法って、才能有る人が使うもんだってジーハさん言ってたぞ?」
「普通の人だって初歩は使うわい!洗い物したり洗濯物乾かしたり!」
「地味ね...」
「地味だな...」
「でも役には立つよ?日常生活には」
地味でも日常生活には役にたつから、誰でも覚えようとする。
明かりや炊事、洗濯の代金を自分の力で補えるのだ。
まあ、実際そういう人いるし、そういう人は生活費がかなり抑えられている。
「しかし、それでも中には魔法が使えぬ、魔力が少ない人物が何人かはおるものじゃ」
ウィンディーネがそう付け足してくれた。
「まあ、魔法って結局才能に左右されるしね」
「その点、俺は才能に溢れていたって事だな」
「嘘みたいに思うけど、本当みたいだな」
「失礼な!智樹、これは現実だぞ!俺が魔法を使っているのは!」
そう言いながら信也は腰に手を当てて、胸を張って威張っている。
「けどなぁ......本当によく知らないまま魔法を使えたよなお前、ジーハは全く見本とか手本とかしなかっただろ?予想するに」
「うん、全く解釈してくれなかった」
それを聞いて僕は頭が痛くなってくる。
「魔法を使った時の、お前の状況を聞いていいか?」
「ん?別にいいぜ?確かあの時は......いきなり魔法を(撃ってみろ)って言われたから(え?この人何言ってんの?俺こっちの世界に来たばっかだよ?説明も無しにどうしろって言うんだよ)って言おうとしたけど、物凄い形相で睨まれたから、何も言えずにしょうがなく的に視線を移して」
「......本当にすまん信也...」
何でアイツは何も知らない初心者に説明無しでやらせようとするんだよ!絶対に後で折檻だな。
*****
「えぶしっ!...ばぜが?」
「(えぶしっ!...風邪か?)」
*****
「初期の魔法を使うにはまず目標をしっかり見据えて、その目標に対してどんな効果を与えるのかをしっかりとイメージ出来ないといけないんだ。」
「例えば?」
「炎なら紙が燃えるように、一部でも全体でもいいから、自分のイメージ通りに出来るように、風なら紙を切り裂くとか、風をあてて紙を動かすとか」
「智樹君、魔法って見えてないと使えないの?」
「いや、そうでもない、熟練の魔法使いなら、見えない所に隠れている相手を魔法で感知した後、攻撃したりすることもできるよ」
「ふっ...この才能に恵まれた俺なら、すぐにでも見えない場所の敵に魔法を当ててみせるぜ!」
信也がなんか偉そうにしてるけど...大丈夫か?、このまま天狗になったままで手痛い失敗しなけりゃいいけど...
「まあ訓練する気があるのはいいんじゃない?怠けるよりは」
「信也君、授業中よく居眠りしてたもんねー」
「だって、つまんねーもん」
「信也、それでよく先生に怒られてたわよね。思い出したわ」
「しかもコイツ宿題も僕のを丸写しなんだよ...毎回毎回」
「お世話になってます」
信也はそう言って僕に向かって両手を合わせ拝んできた。全く困った奴だ。
兎に角、練習の為に用意した紙を壁に3つ貼り付け、練習の準備をした。
「俺の分は?」
「お前は今さっき散々撃ってたろ!休憩しとけ!!」
「ちぇー、分かったよー」
「さて、魔法を的に向かって当てる訳だけど、兎に角最初は目標を確認する。その後放つ属性のイメージを固める。そして体の内部から力やエネルギーを放出するのをイメージOK?」
「内部からの力って言っても...どんなのよ?」
「んー...そうだなぁ、じゃあ拳を軽く握って、そこに力とか意識を集中してみて」
「んー...集中?」
「属性を忘れないでね、炎とか水とか風とか」
信也を除く3人が目を瞑りながら拳を顔の前に上げて、集中し始めた。
すると皆の手がボンヤリと光り、それぞれの属性の色が片手に宿リ始めた。
「わっ!わっ!何か手にまとわり付いてきた!」
「春奈、集中、集中!じゃないと魔法使えないよ?」
「わ...分かった」
「分かってたけど...私達ってファンタジーを体験してるのよねー」
皐月は腕に水を纏い、それをじっくりと見つめている。
「うわー、何か拳に風が纏わり付いてる。このまま相手を殴れそう」
「いやいや、殴れるけど今回はまず飛ばす訓練からするからね?江見ちゃん!」
「えー、殴っちゃダメ?」
「今は我慢してまず飛ばしてよ、お願いだから」
「はーい」
江見ちゃんが魔法を使って相手を殴ったらえらいことになりそうだなぁ、とその時内心思ったのは僕だけの秘密だ。
「腕に属性が纏わり付いたら、風と水はそれを紙に向かって放つイメージで当てて、放つとか分からなかったら...投げるイメージでもいいや」
「私は?」
「春奈は土なんだ?」
「うん」
「土は良く使われる呪文で言えば<アーススピア>や<アースロック><アースシールド>とかだね」
「それってどんな効果があるの?」
「<アーススピア>は地面から土の槍が相手に向かっていって攻撃する呪文、<アースロック>は相手の体を土で固めて動きを封じる、<アースシールド>は土の壁を作る呪文だね」
僕がそう言うと、春奈はうんうんと頷きながら話を聞いてくれた。
「あれ?何で風とか水だと説明しないのに、土だと説明するのよ?」
江見ちゃんが聞いてきた。
「じゃあ江見ちゃん逆に聞くけどさ、風とか水なら目標に当てるのは想像出来るかもしれないけど、土で目標に当てるってイメージ出来る?」
「泥団子を投げる」
「いや、それ土と水の複合だからね?土だけだからね?」
「土とか砂を相手にぶつけて目潰し」
「...まあ間違ってはいないけどさ、それらは<サンドショット>って言われてて使い方は江見ちゃんが言った通りだね」
僕がそう言うと皆は。
「流石江見、そういった方法は良く知ってるわよね」
「江見ちゃんらしいよね」
「流石江見だ」
「あんたら、絶対褒めてないでしょそれ!」
皆でギャイギャイ言い始めた。
そんな皆をなだめて僕らは魔法の練習を再開する。
「主も大変じゃのうぅ...」
「うん、いつもの事だから」
「騒がしい連中じゃのぅ」
まあ、騒がしいのはいつもの事だから、僕はあんまり気にしなかったんだけどね。
「じゃあ再開するよ、目標の紙に各々の魔法をぶつける、放つイメージでやってみて力は要らないからね」
僕がそう言うと、江見ちゃんと皐月は普通に魔法を当てていた。
紙を濡らしたり揺らしたり、うん上手い上手い、けど春奈はと言うと...
「えい!」
何か石を投げるようなモーションで紙に向かって投球していた。
春奈にとってはあれがイメージしやすいんだな、でも確か春奈のコントロールって......まあでも魔法だから大丈夫だろう?
「おいだ!」
...春奈の後ろにいた信也に、魔法で具現化した小石が後頭部に当たった。
ああやっぱり...
魔法をいきなり具現化するのは見事だと思うけど、前に飛ばさないで後ろに飛ばしちゃってる。
まあ春奈だしなぁ、現代でやってたボール遊びだって全然見当違いの場所によく投げていたしなぁ。
「あれ?」
「あれ?じゃねぇー!痛いよ!」
「ごめん、失敗失敗今度こそ!」
「いや、春奈あんたは投げたら...」
江見ちゃんの声を聞くのももそこそこに、再び投げ始める春奈。
「あいた!」
...今度は横にいた皐月に当たった...
相変わらず凄いノーコンだ...
「むー、何で当たらないかなぁ?」
「いいから話を聞きなさいってはる...」
「えい!」
「あた!」
あああああ、今度は江見ちゃんに当たった...
「あいったー...春奈、あんたねぇ...」
「何でこっちに当たるんだよ...」
「どんなコントロールよ春奈...」
「こうなったら、数投げて当てるもん!」
春奈がそう言った瞬間皆の顔が引きつった。
「せーの...」
「皆、逃げろー!」
僕がそう言った瞬間、春奈とウィンディーネを除く皆が訓練場から逃げ出した。
その次の瞬間、訓練場に春奈が出鱈目に投げる石が訓練場に飛び交った。
訓練場の中では何故か、天井や壁にガン!だのゴン!だの石が当たる音が響いているのだけれど......
「もー!何で当たらないのよー!!」
...どうやら的には一向に当たっていないらしい...
「あたたたた...久々に春奈のノーコンを痛感したわ...」
「あれ、もうノーコンって言うより一種の才能よね...」
「俺、春奈ちゃんに畏怖覚えたの初めてだよ...」
「あれ?でも皐月も信也も学校の体育とかで春奈の投げる姿見た事無かったっけ?」
僕がそう言うと。
「...そう言えば見た事なかったなぁ?」
「そりゃそうよ、先生や周りの人が春奈に、<絶対に物を投げるな!>って言い聞かせてたの聞いた事あるだけだもん...あれってこういう意味だったのね」
「うん、春奈が物を投げると、何処に行くか分からないからね...」
「私が恐怖する事の1つよ」
ちなみに春奈はその後、暫く投げていたが1発<だけ>的の端に当てていた。
春奈の(やったー!あたった~ぁぁぁぁ...)と言った声を聞いた後、皆で訓練所に入ると石だらけになっていた......そして当の春奈はというと、魔力キャパシティを使い切ったのだろう、目をグルグル回して倒れていた。
「...まっまぁ春奈は回復魔法があるからこれ位の欠点はあっても構わないと思うぜ?」
「信也、幾らなんでもこのノーコンは、殺人的だと思うわよ?」
「殺人的は言いすぎだろ?」
「そうでもないんだよなぁ...」
「この子のノーコンは下手したら人殺せるわよね、無意識で...」
「怖い事言うなよぉ!」
でも、その意見に強く反対意見が出ないのは、全員が今さっきの春奈のノーコンを体験したからだと思う。
うん、あれは絶対に危険だ。
今後、春奈に物を投げさせるのは絶対に禁止しよう。
「で、目を回している春奈は他の場所に寝かせておくとして...この石だらけのこの状況どうするの?」
「ま、まぁ魔法を使うのには問題無いからこのまま練習続けようぜ?」
「...そうしましょうか、あれ?智樹?そう言えばウィンディーネは?」
江見ちゃんに言われてはたと気が付いて、辺りを見回してみる。
いた、その場で悠然とたたずんでいた。
よく春奈の全方位出鱈目投擲に当たらなかったものだ。
「よくあんた当たらなかったわね?春奈のあれに?」
するとウィンディーネは。
「ああ、あの攻撃か、確かに何処に飛ぶか分からぬゆえ避けるのは難しかろう、じゃから水で盾を作り来た攻撃だけを防いでおった」
違ったガードしてたのか...てか今頃気が付いたんだけど、このウィンディーネそこいらの精霊より力が大きくないか?
いやでも、姿はウィンディーネだし...けど何て言うか、普通のウィンディーネが僕ら位の少女の姿を反映させるのにこのウィンディーネ何か大人のドレスを着た姿だし...
少し自分が呼び出したモノが本当にウィンディーネなんだろうかと不安になってきた。
するとそれが顔に出ていたのか、ウィンディーネが口を開く。
「ふむ...その顔は自分が呼び出した精霊が本当にウィンディーネか?といったところか?」
「あ...顔にでてた?」
「うむ、しかし案ずるが良いわらわは間違い無くウィンディーネじゃ、まあ、少し事情により昔の主に強くしてもらったがの」
「へー、精霊って強くなるんだ」
「うむ、自分の得意する領域や、相性の合う主に付いたり、魔力を分けて貰えれば、有る程度はな」
「へー」
「だが、我はそれ以上の恩恵を主から貰い力を得た、かれこれ3000年も昔になるか...」
ウィンディーネは昔を思い出しながら、思いに浸っている。
へー、3000年前ねぇ...3000年前!?ちょ!待って!それって前世の僕が居た時代だよね?その頃ウィンディーネに力を与えたって......まさかなまさか...
一応聞いてみよう。
「あのー...ちなみに恩恵を貰ったって誰からですか?」
思い当たる事はあるけど、あえて聞いてみる。
「前の主の名前か?そうじゃのう、この世界ではその時<破滅の魔王アース>と呼ばれておったなぁ...」
「ぶっ!」
「ん?何じゃどうかしたのか?」
やっぱかよ!昔の自分じゃないか!てかコイツ何気に力を自分の物にしてるじゃないか!
ああもう嬉しいやら恥ずかしいやら、感情がごちゃまぜだ!
「お主、面白い顔をしとるのう?」
「ほっといて!」
思わぬ再会に複雑な心境な僕だった。




