智樹による魔法(と魔素)の話(改)
「あたたたたた...久々に江見ちゃんの全力ウメボシくらったよ」
そう言いながら僕は体を起こした。
「智樹がいつも通りじゃないからいけないのよ」
江見ちゃんにそう言われてぐうの音も出ない、出せない。
「うん、そうだね。こんなやつに振り回された自分が恥ずかしいよ、ありがとう江見ちゃん」
「誰がこんなやつだー!」
「で、何か聞きたい事はあるかな?皆?」
「おいコラ、魔王アース無視すんな!」
「僕もそんなに詳しいとは言えないけど、ある程度なら説明できる...」
「てめぇ!無視すんなコラ!大体お前が何言おうが魔王なんだろうが、いいから俺ともっぺんタイマンしてみせろ!今度は勝ってみせるぞコラ!」
ああもう、喧しいなぁもう!
「最早賢者つーより、ヤンキーのお姉さんだよなこれ」
「しかも、自分が気にくわなかったら、いちいち人に絡むタチの悪い人だね」
「おうこら!何か言ったかガキど...ひだだだだだだ!ひだいひだい!」
僕は全然黙らないジーハの口をつねって、言葉を中断させると、ニッコリと笑ってジーハの口を塞いでいた布で再びジーハの口に縛り付け、塞ぐ。
ああでもまだ心配だな、もう少しやっておこう。
僕は部屋を探して布を見つけると、更にジーハの目を塞いだ。
「もまー、まみむんまー!」
「(こらー、何すんだ!)」
「ジーハ、お前が喋ると煩いし、イライラするからマスクと目隠しをしといてぶら下っていなさい、多分明日下ろしてやるから」
「はぶんへはんはー!」
「(たぶんってなんだー!)」
「さて、これは無視して何か聞きたい事はあるかな?」
「もがー!」
「(こらー!)」
多少は煩いが、これで少しは大丈夫だろう、皆から質問が無いか聞いてみた。
「あ、じゃあさ俺の<魔法使い(ソーサリー)>って何だ?」
うん、流石親友、一番先に聞いてきてくれた。
話をして、少しでもジーハから意識を離そう、でないと僕がまた江見ちゃんに怒られる。それは嫌だ!
「ああ、<魔法使い(ソーサリー)>だな説明するよ、先ず普通に攻撃魔法や補助魔法を使うのが、一般的な<魔術師>これが一般の魔法職」
「あれ?そしたら俺、普通の魔法使いじゃないの?」
「んー、少し語弊があるみたいだけど、<魔術師>は魔力を四大元素の形にして周囲に放つ、そしてその他に、補助魔法で魔力を対象に付与して、相手や自分の力や魔力を増大させるとか、この反対で相手の体内に、妨害する魔力を注ぎ込んで相手の動きや、意思疎通を妨害する魔法も使う事が出来るんだ」
「おー、流石智樹詳しいわね」
「ありがとう皐月委員長」
「だから委員長はやめなさいってここでは!」
それにつられて皆から笑い声が出る。
うん、いつも通りだ。
「まあ、些細な問題は置いておいて」
「置くんじゃないわよ!」
僕は皐月の言葉もスルーして、まあ内心では感謝しつつも、説明を続ける。
「<魔法使い(ソーサリー)はそれらの魔法以外に、召還魔法、時空魔法、音魔法、無属性魔法、有属性魔法.あらゆる魔法を操る事が出来る可能性があるんだよ」
「マジ!マジか!智樹!俺そんな才能があるんか!」
信也が物凄い剣幕で食いついてきた。こっちが引く位に。
「あ、ああ...でもあくまでも<可能性>だからな?ちゃんと使いこなせるように勉強したり、実戦訓練したりしないといけないぞ?」
「まかしとけ!俺、普通の勉強より、こういう面白そうな事の方が大好きだから、絶対に覚えてやる!」
「いや、あの、信也君?勉強も大事だよ?」
「ああ、まあ信也なら、そういう反応すると思ってたわ」
「智樹の友達って、こんなのが多いの?」
「いや、江見ちゃん確かに信也は友達だけど、全員がこんな性格じゃないよ?」
というか、友達全員が信也みたいな性格は僕は少し嫌だなぁ、と本人を目の前にして考えていた。
「まあ、いいじゃねえか!おっし!やる気がバッチリ出てきたぜ!」
「あれ?でも質問いいかな?智樹君?」
「何かな?春奈」
「音魔法って何なの?それってどんな魔法なの?」
うん、あまり馴染みないから分かり難いよね。
「音魔法って言うのは、口から決まったキーワードを発声したり、音を出して構成させ、対象や目標物に働きかける魔法なんだよ」
「智樹、それイマイチ分かりにくい」
「そうだねぇ...例を挙げると陰陽師とか、ハーメルンの笛吹きだったかな?あれが有名だね」
「ああ、それなら分かるわ、最初からそう言いなさいよ」
「いやいや、説明の途中だったからね」
「ぶう」
頬を膨らませる江見ちゃん、うん可愛いけど、今は説明説明。
「でだね、まあ大体魔法っていうのは魔素を媒体、として仲介し命令、お願いして魔法を使うんだ。ちなみにお願いするのは精霊魔法ね」
「はいはい、智樹いい?魔素って?」
「うんそれはねいいん...」
「いい加減委員長って言うのやめなさい!」
「先手打たれた!」
「当たり前よ!」
まあ、そりゃ何度も何度も言ってれば皐月も嫌か、しょうがない普通にちゃち入れずに説明するか。
「普通この大気には酸素、二酸化炭素、窒素、水素等が有るんだ」
「まあ、そこは普通理科や科学の分野よね?」
「うん、でこの世界ではその大気の中に、魔法を発動させる為に必要な触媒、仲介する為の魔素があるんだ」
「それの有る無しでやっぱ魔法が使える、使えないになる訳?」
「そうだね、実際僕らの現代では、魔素が無かったから魔法が使えなかったからね」
「ああ、試した事あるんだ」
「あるよ、5歳位に試した」
あの時は魔法が使えなくて、愕然としたもんだったよな。
「ああ、だからあの頃の智樹、冷めた子供だった訳ね」
「冷めたって江見ちゃんそんなに僕冷めてた?」
「うん、冷凍庫の中位に」
「それ、分かるんだか分かりにくいんだか判別し難いよ」
「じゃあどう言えばいいのよ」
「江見ちゃん、こう言ったら?まるで睨むような目で、人と関わるのを比較的避けてたって」
「ナイスミー子、それは分かった。そっかそんな感じだったんだ僕」
「だから、何で私ミー子なのよー」
春奈が反論するが、まあいいやと思っていたら、江見ちゃんが僕の頭を頭を左脇に抱え、右拳で頭をゴンゴン叩いてきた。
痛い痛い痛い!
「私の説明で分かりなさいよ!」
「ちょ!いた!痛いって!!だだだだだだだだだ!」
「江見、自分の説明で理解されなかったからって、八つ当たりは止めなさい」
「智樹が理解しないのが悪いのよ!」
「だだだだだー!なんでだよー!」
ーー閑話休題ーー
「おー...いたたたた、頭がまだ痛い」
「あー、悪いが智樹、説明の続きお願いできるか?」
「ああ、分かった信也。魔法が世界で使える、使えないという風に区別されるのは、魔素の有る・無しで区別される。ここまでだったね」
「そうそう、そこまで説明して貰ってたんだ。でもさ?魔素ってどうやって発生してるわけだ?」
「ああ、魔素の発生だね。まあこれは恐らくなんだけど、魔物がその魔素を大気に放出してると僕は推測するんだ」
「魔物が魔素を?」
「そう、魔物が自分達に住み良い環境に世界をする為に、世界に魔素を放出して世界の大気構造をほんの少しだけ書き換える。そうする事によって自分達の生き易い世界に変えている訳だ」
「ちなみにそれって、どれ位昔な訳だ?」
「そんなの知らないよ、この世界では遥か昔から魔物が居たんだからさ、原初の魔物なんて分かる筈も無いよ」
「それもそうか」
そう、魔物=魔素みたいな方程式があるから現代社会では魔法は使えない、連絡手段がないから相手に言葉を伝えられないのだ。
「あれ?それだと魔物って魔素を放出するだけで、別に無くても生きられるの?」
「まあ、空想理論上はそうだね。別に外来種のペットが日本でも生きて繁殖するみたいにね」
「だったらさ、何匹か魔物を現代に持って帰って、野に放ったら魔素が散布される理屈か?」
「いや、まあそうだけどさ信也、持ち帰るつもりなのか?」
「その方がおもしろいじゃん!」
「じゃあ聞くけどさ、どうやって持ち帰るんだ?魔物?」
「う!」
ああ、やっぱりコイツそこは考えて無かったな。
「大体だ、ここに来たのだって召還されたからだぞ?だからこそ...」
「それだ!智樹!」
「は?」
「召還だよ召還そうすればいい!」
「いや、あのなだから現代には魔素は無いから、魔法自体が使えないって」
「いやいや、こっちの世界から送るんだよ!そうすればいいじゃん!」
は?ちょっと待て、コイツ今、物凄い事サラっと言わなかったか?
「ゴブリンだかコボルドだか繁殖力の高い魔物を、こっちの世界から送ればいいんだよ!そしたら魔素が現代にも散布されて、現代でも魔法使えるじゃないか!」
「まてまてまて信也、現代でも魔法が使いたいのは分かったけど、それは少し不味いんじゃあないのか?」
「え?何でだよ?智樹?」
もしかしてコイツ知らないのか?生態を...いや国王様やらも詳しくは知らなかったんだからしょうがないか。てか、現代に被害が増大するよ!
あ、やばい!江見ちゃんが拳をボキボキ鳴らしながら、信也睨んでる。早く説明しておかないと!
「信也、ゴブリンって知ってるか?」
「RPGで雑魚のモンスターだろう?」
「いや、それはゲームの世界だからな、まあ実際弱いモンスターと認識されているけど、それは一番弱いゴブリンだからな?種類が何匹かいるんだからな?」
「種類つーと、ゴブリン・ゴブリンシャーマン・ホブゴブリン・ゴブリンキング位じゃないのか?」
ああ、やっぱりコイツゲームでのゴブリンしか知らない。
「他はカードゲームで、ゴブリンアーチャーとかファイター、位か?そんなもんだろ?」
「14と1種類だよ!」
「うお!何気に多いな!」
ああああ、江見ちゃんの機嫌がゴブリンの話をする度にドンドン悪くなっていく。
春奈と皐月がそれを宥めてる。
「しかもお前、ゴブリンって種族が下位になるに連れて、繁殖力が上がるんだけど繁殖方法知ってるのか?」
「?普通に同じ種族とじゃねーの?」
「それも出来るけど、あいつ等はほぼ人の形をしてたら、どの種族でも繁殖できるんだよ!」
僕がそう言った瞬間、春奈と皐月は顔を真っ赤にし、江見ちゃんは僕を更に睨みつけてきた。
ひいいいい!僕悪い事まだしてません!!
「...マジか?智樹?」
「本気も本気だよ、あいつ等下位個体の強さはそこまで強くないけど、下位の奴らは大体何匹か集団でいるもんだしそこが厄介なんだよ!」
「そこまで多いつーか増えるもんなのか?」
「例えるとゴキ〇リ並に増えるんだよ!あいつら...あ」
「ぎゃーー!!その名前を出すんじゃないわよーー!!」
江見ちゃんはそう言った瞬間、右腕を脇に引き絞り、更に一瞬の間に身を屈めて、間合いを詰めてきた。はや!
そして弁解する余裕もなく、彼女は引き絞った右腕を下から上へ、アッパースイングというやつをしっかりと腰を入れて、僕の顎に叩き込んだ。
「ぐぼぁあ!」
「だからその名前を出すんじゃないわよー!!」
僕は遠ざかる顎の激痛と、宙を舞う浮遊感と遠ざかる意識の中、江見ちゃんこっちの世界へ来て、一番破壊力の篭った一撃だね。
と思いながら意識を失った。
「とっ智樹ー!」
「智樹君ー!」
「江見、アンタもう少し手加減してあげなさい!」
「ダメなのよあれは、アイツだけは!」
「そんな事言って、アンタ苦手なの他にもあるじゃないの!」
「あれが1番苦手なのよーー!」
倒れた智樹を傍らに、やいのやいのと皆が言い合っていた。
ーー再び閑話休題ーー
「い...生きてた。あだだだ、顎が無茶苦茶痛い...後、後頭部も」
「だから言うなって言ってるでしょうが!」
「江見、アンタは智樹君を抹殺したいの?」
「そんな訳ないでしょ」
「だったらもう少し手加減覚えなさい、春奈居なかったらどうなったか」
ちなみに今も、春奈が祈祷の呪文を使って僕の傷を回復させてくれている。
「春奈、なんかさ?回復呪文の効果が強くなってない?」
皐月がそう思うのも当然だろうな、まあ実際受けている僕が、確実に効果が増しているのを感じているし。
「当然だよ、あたたたた...何回も使えば、慣れていくから効果も上がっていくんだ」
「あー...あのオバサンの訓練の時、一人だけ回復だけしとけって言ってたのはそーいう事ね」
「もももーみ、めま、もままんむーま!」
「(そのとーり、てかオバサンゆーな)」
「じゃあ何で?俺まで戦闘訓練してたんだ?
「......多分めんどくさいからまとめてやったんじゃないか?」
「もももーみ!」
「(そのとーり!)」
「否定しろよ!」
「まぎゃ!」
「(うぎゃ!)」
思わず釣り下がってるジーハに、裏券で顔面に突っ込み入れちゃったよ。
「おっ俺って一体...」
「大丈夫だよ信也君、これからこれから!」
「ああそうだな、魔法を使って活躍すれば大丈夫さ」
「あ、ああそうだな智樹・春奈、これからさ」
「もめは、もーままー?」
「(それは、どーかなー?)」
「うっさい自称賢者」
「みもまめー!」
「(自称じゃねぇー!)」
まあ、今これはほおっておこう今はまだ説明が途中だ。
「で、説明が飛んだから、改めて纏めて貰うとだ、魔法を使うには媒介である魔素が必要、それは魔物が自然に、無意識に散布している、それでいいかな?」
「魔法の事で聞きたいんだけどさ、魔法って信也とか春奈が習って簡単に使ってるけど、そんなに簡単に覚えれるものなの?」
「ああ皐月、確かに普通は魔法とかは覚えにくいよ、やっぱ向き・不向きとかやっぱあるからね。後はそれにかける情熱とかね」
「向き・不向きは分かるんだけど、情熱?」
「うん、それに向いていない人でも、本気でやればある程度まではいけるんだ、まあそういう風に簡略化したのが初期魔法なんだけどね」
「でも、それじゃあやっぱり才能には勝てないって聞こえるんだけど?」
「いや、いくら才能があっても、練習もしない人は勝てないよ、それは現代でもこっちのファンタジーでも一緒だよ」
練習もしない天才素人が、達人に勝てる。
そんな素人が居たら教えて欲しい物だ。
「そういう訳で魔法の話に戻るんだけど信也、魔法の詠唱と初期魔法を何発撃てるか分かるか?それと魔法の撃ち方は?」
「細かいなーー智樹、えっと詠唱は<魔法の炎>火の玉を対象にぶつける。だったな確か、炎の大きさは手の平を開いたより大きかった。連続で14、5回かな?撃ち方は手の平を対象に向けて、<ぶっとべ!>とか思いながら手の平から火の玉が出るのをイメージだったかな?」
いや、間違ってないけどさ、ぶっとべってお前...
相変わらず雑なジーハにため息が出てきた。
「むー...むんむおー」
「(むー...なんだよー)」
「信也、魔法道具とかでもう少し消費を抑えて数撃てる様になるけど、効率のいい撃ち方教えるよ」
「あんの?そんな方法が?」
「ある、先ず撃ち方は人差し指を対象に向ける、その後火の玉は、ビー球とかそれ位の大きさをイメージする。で、最初は目の前に手を添えて撃つ、ちなみに手の形はよく昔やった指鉄砲の形な」
「ああ、あの昔指を銃の形にしてパーンってやつな」
「そうそう、後親指は立てても立てなくてもいい」
「本当に細かいなお前」
「まあ、いいから少し下でやってみ」
「分かった」
やれやれだ、後は何か分からない事があったらその都度教えていけばいいか。
「さて、下に行く前に」
僕はジーハに手を伸ばすと、皆に部屋の隅に寄るように伝える。
「じゃあ扉の方に行っておくわ」
そうして皆が扉を開けて中を見守っている。
「ま、まみむるむもみままーむ」
「(な、なにするつもりだアース)」
「それはな...」
僕は勢いをつける為、軽く歩きながらジーハの体を思いっきり押した。
釣られている部分を中心にグルグルと回るように。
「もがー!」
こいつには暫くこうしてもらおう罰として。
「さ、行こうか皆」
「智樹、アンタ何気にあのオバサンに酷い」
「じゃあ皐月は助ける?」
「冗談」
「じゃ、行こうか」
そうして僕達は、信也の魔法の試し撃ちをしに下へ降りていくのだった。
「はふへほーーーーー!びぼびばぶび...」
「(たすけろーーーーー!ぎもじわるい...)」
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