過去 母との再会
頭の可笑しさがヒートアップしてます。
10年後、俺は国を支配した。ようするに、この国の王となったのだ。まぁ、最初の5年で王族は支配下においてたし、母を愛していた血縁上の父の遺言で僕を後継者候補にはしていたらしい。
後は国民だったが、これも上手くいった。適当に相手国を挑発し、そして挑発にのって戦争をしかけてきた国を完膚無きまでに滅ぼした。
先に手を出したのはそっちだろということで、簡単に英雄になれた。
「……つまんねー……」
俺はベッドに寝転がって、そう呟いた。
ハッキリ言えば、俺は王なんて興味などなかった。ぶっちゃけそんな目立つ地位にいなくても、俺は貴族たちを相手とって裏で生きていけた。
暗殺者に囲まれるわ、気持ち悪い信者は増えるわで余りいいことがないが、これは必要事項なのだった。
俺がまだ城に来たばかりの頃、この国の、一番の占い師が俺を占った。別に占いの類いを信じていた訳じゃないのだが……
「貴女は母に歪んだ愛をもってますね」
老婆は、一発で俺の性癖を見抜いた。
いっておくが、俺はこの性癖を隠し通してたし、周囲にはむしろ『母のせいでひどい目にあった』という態度をとって、同情をひいてた。
「母に、会えますよ」
「ふざけんなぁあ!!!」
俺はそれを聞いた瞬間、老婆の服につかみかかった。しかし、老婆はニヤァと笑ったかと思うと、俺に取引をした。
「500人の血と引き換えに情報をあげよう」
「その血でどうする気だ」
「私は酷いことばかりしたのでね、神様に嫌われて天国にも地獄にもいけないんだ。だから500人の血と引き換えに輪廻転生をするのさ」
何いってるか、正直わからなかった。
老婆はその後、姿を消した。
別に信じた訳ではないが、嘘だと笑うには余りにも現実味がありすぎて、だから俺は王になって戦争をおこした。戦争をおこすのが500人の血を取るのが手っとり早いからだ。
んでもって、森に住むという老婆に500人分の血が入ってる樽を渡した。
「血だ、さっさと情報を渡せ」
「あぁ、いいよ。
明日、町をぶらついてみるといい。そしたら母にあえる」
「母は死んでるんだぞ?」
ここに来て、俺は幽霊の可能性を考えた。しかしながら、老婆は笑ってこういった。
「安心しな、ちゃんと実態はある。ただ、変わってる部分があるだけだ」
次の日、俺はフードをかぶり、バレないように町へ出た。
町は賑わっており、仮に母がいたとしても会えないんじゃないかというほど、人でごった返していた。
「まる たけ えびす に おし おいけ あね さん ろっかく たこ にしき……」
歌が聞こえた。少し幼いながらもかつて母が歌ってくれた東の国の歌。俺は何処から聞こえるのかと耳をすませたが、すぐに歌はきこえなくなり、この人だかりでは見つけるのは不可能だった。
「お母さん……どこにいるの?」
僕は泣きそう気持ちになり、さすがにどうやって、探そうかと考えながら適当にパン屋へ入った。
その時の判断を俺は誉めたい。
「いらっしゃいませ!」
そう言ったのは天真爛漫という言葉が似合う程にニコニコと笑い、幸せだと全身であらわす少女だった。まだ幼く、純粋無垢で可愛らしいが……それより目に入ったのは、
この国では珍しい黒目黒髪……
俺の母だった。
確証があるわけではなく、もしかしたら別人の可能性もあるが、俺はこれが母だと確信した。
「みぃつけたぁ」
素早い動作で懐から薬品を染み込ませた布を少女の口に当てる。
「んー!ーっ!!!」
少女は体をジタバタさせて暴れるが、小さな体を俺は抑えこんで布を口に当てていると、不意に甘くて優しい臭いがフワリと漂った。
「おかーさん……!おとーさん……」
ただの少女で、幸せがいっぱいな、母と違う甘い匂いを纏う少女が必死で親を呼んでいる。
俺の中で何かが切れた。
「(違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う母はこんな匂いじゃない泥臭くて血臭くて精子のドロドロした匂いが母だあぁ、なんで幸せそうなんだよ何一人で幸せになってんだ、俺はどうなるんだ。あぁ!ああ!やっぱり母は壊れてるぅう!)」
力任せに俺は布を口の中に突っ込んだ。唾液でベトベトになり、嘔吐反応で異物が逆流している。少しの血の匂い。あ、少し母の匂いに戻ったかも。
もっと戻らないかと、喉の奥で逆流する異物や大量に出てくる唾液を指でグチャグチャと夢中でかき混ぜてたら、いつのまにか母は気絶していた。
「……っ……あ……」
ピクピクと体を震わせ、泡をふいてる母は見ていて可愛らしく、もっと遊びたかったのだが、これ以上やったら死ぬし、目的は母を城に持ち帰ることだったのでこれでいいやと思った。
「やっと、戻ってきたね」
唾液と嘔吐物でドロベトになった手で、母を抱き締め、そっとキスをした。
この世界感では500人の血と引き換えに記憶つきで輪廻転生が出来ます。