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肉塊

唐突に思い付いて書きました。よかったら感想下さい。

「好きだ……ずっと君を……見ていた……」


 綺麗な花が咲く庭で、それを塗りつぶす程に美しい人に告白を受けた。彼の名前はエルヴァン・ハプスブルク。この国の悪魔と言われる独裁者であり、しかしながら国民は彼の信者という怖いほどのカリスマ性をもつ男だ。


「結婚してくれ」


 そんな男に告白された私は物凄く幸せものであり、雰囲気もバッチリだが、私は断らなければならない。


「すみません、それはいやです」


 その理由は父を殺されたからでも母を殺されたからでも、監禁生活を送られたからでもなく、勿論、父や母を食べさせられたからでもなくって、もっと根本的な問題として……


 私はエルヴァンの母親だからだ。






 前世というのを信じるだろうか?まずは前世があるということを前提として話をさせて欲しい。でなければ18も年下の私が彼の母親なんてのは無理だからだ。


 私は前世で底辺の娼婦をしていた。多分病気とかも沢山持ってたと思う。んでもって、処理を行い損ね、堕ろし損ねた末に生まれたのがエルヴァンだった。


 相手が誰だかはよく分からない。しかしながら、産まれたものは仕方がないとばかりに私は彼を育てた。まぁ、4~5くらいなのだと思う。


「おかーだいしゅきー」


「私も愛しているわよ」


 本当に愛していたのかは分からない。当時の私は薬をはじめてしまったせいで頭がフワフワな状態だったからだ。幻覚見まくったし、禁断症状だしまくってた。


 最終的に私は何か適当に彼を捨てて(暖かい場所へとは思った)私は薬のせいで頭が可笑しくなったまま崖へ落ちたか誰かに刺されたかで死亡。あっけない死だろう。


 完璧に地獄に落ちたと思った。窃盗、殺人、賭け事、売春、子供を捨てる、麻薬、結婚詐欺……うん、それなりの偉業はしてたと思うが、天国にいける要素がないので完全に地獄に堕ちたと思ったのだが、私は輪廻転生した。


 産まれたばかりの私に前世の記憶などなく、ごく普通のパン屋の夫婦の間に産まれた普通の女の子だった。多分、これが絶頂期だ。幸せだった。


 優しい父に少し怒りんぼの母、それを笑う近所の人たち。ひどく平和で、そしてそれが当たり前の日々……


 運命が変わったのは、エルヴァンが客として表れたときだった。


「君は……」


「こんにちわ!何か食べますか!?」


 そして、城へ連れていかれて奥の部屋へと監禁された。


 …………うん、物凄いすっとばしに見えるけど、本当にそうなんだよ。笑顔で接客しようと思ったらいきなり目の前が真っ暗に暗転してね、気がついたら変な部屋に監禁されたのよ。


 当時、単なる普通の少女がそんな状況に耐えられるはずがないじゃない?親と離れてこわいじゃん?そしたらなくじゃん?


「ウワァアンン!!おかぁざん!おどうざぁあん!!」


 泣きわめくじゃん?やばいじゃん?怖いじゃん?


 そしたらコイツなんて言ったと思う?


「君のお父さんとお母さんってコレだ」


 といって『塊』を指差して言ったんだよ。

 いやね、ヤバイよ。プルプルとした柔らかいピンクのゼラチンにギザギザした茶色っぽい何か、ザラザラの砂のような表面に時々突き出ている白くて尖っている骨らしきもの。


 父と母だったらしい何かの塊だと言われた私は自分の脳ミソが沸騰した。そりゃそうだ、意味が分からない。


 ついさっきまで普通に暮らしていたのにこの仕打ちはないだろうと、いや、もうそんな思考すら出来ない程に私は脳ミソが沸騰し、血が蒸発した。


 8歳になるかならないか位の子供だぞ、なんでこんな事をするのかと、掠れた声で聞けば彼はいった。


「分からない……なんだか……何処かで見た気がしたから作ってみた」


「…………っ……」


 この瞬間、私は別の意味で脳ミソがボンと沸騰した。というか目玉ボンとなりそうだった。


 この瞬間に脳ミソの中にあり得ない色んな情報が出たからだ。神経むき出しの表面をヤスリでザリザリされた感じに近い。そして一番始めにクリアな情報としては


 あ、私も塊作ったことあるな。だった。


 ええーっと確か、前世でヤバイ薬の副作用で頭可笑しくなってた時に何かこんな感じのを作ったんだった。確かそんときは羊とか犬とかを殺して作った。グチャグチャバキバキと……


 〔ホラァ!!食べなよ!!美味しいよぉぉおお!!!食えよ!一つ残らず食ぇええ!!〕


 んでもって、それを子供に無理矢理食わせてた。この女、完璧に頭狂ってんな……と思ってたら私だった。この時点で前世の記憶を呼び覚ました。


 しかし、この時の私はまだ抗っていた。記憶=人格ではないので、私はまだ単なる子供だったし、何より前世の息子と会う訳がないと思っていたのだが……


「ほら、食べろよ。美味しいよ」


 エルヴァンは『塊』を指差して笑った。それは薬で可笑しくなった女……つまりは私にとてもソックリな笑いで愉快そうにスプーンでグチャリと肉を抉り掬って私の口元に差し出していった。


「食えよ、一つ残らず全部食え」


 ハハハ、これ完璧に私の息子だわ……


 因果応報、自業自得、悪いことをしたら後で痛い目に会う。どうやら私の罪は一回死んだだけでは償いきれなかったらしい。



主人公は前世で色々とやらかしてます。

エルヴァンは、捨てられた後、色々あって国王になりました。

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