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九十九妖伝記  作者: 黒園明智
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妖伝記の扱い方

少し長く書きました。いつも三千字から五千字の間でこれから書いていきます!

 春うららか。陽気な朝の日差し、母さんが朝ご飯を作ってくれる音。

 とかで起きれたら良かったんだけど……


 俺の朝は肉球パンチで目覚める。

「起きろ。もう朝だぞ」

 八神(やつがみ)猫モード。と俺はそう勝手に名付けている。図書館の一件から一夜……特になんともない。


「八神、隠れろ。妹たちが来る」

「はぁ?」

「いいから」

 八神をベットの下に隠す。俺は朝が弱い。だから妹たちが起こしに来てくれるのはありがたい話なのだが、問題は起こす方法だ。


「起きろぉぉぉぉぉ!!」 

 扉を荒く()(やぶ)られ、妹の一人が拡声器を使って全力で叫んぶ。

「うるせぇぇ! 今すぐその音響兵器をしまえ!」

「何言ってんだ兄ちゃん。これは音響兵器じゃなくて拡声器だぞ?」

 普通に言えばいいものの、こいつはこの言葉さえ拡声器で言いやがった。俺を難聴系主人公にする気か?


「お兄ちゃん起きて~!」

 一番危ないのが来る。

 もう一人の妹が遅れて来てなにやら手にキラリと光る物が……

「早く起きないとお兄ちゃんのイチモツ。今日のお弁当のおかずにするよ?」

 手に持っていたのは包丁だ。


「起きるから一回部屋から出ていけ!」

 これが俺の朝の日常。これじゃあいつか俺は妹たちに殺されちまうぜ。


 紹介しよう。双子の妹、名前は九十九(つくも)夏凛(かりん)。髪はショートカット。大人しくしていれば可愛らしいものなのだが、実際はかなりやんちゃで兄妹(きょうだい)喧嘩はしょっちゅう。これがまた強い。まぁ、空手部に入っているからだろう。


 そしてもう一人の妹、名前は九十九(つくも)(はる)()。こいつは夏凛とは何もかも正反対だ。髪は長いし、こっちはおっとりとしてるが腹の中で何を考えてるかがまったく分からない。もちろん、自分で言うのもなんだが、まぁ可愛い。が、こいつはいわゆるヤンデレだ。


 二卵生双生児らしくて性格は似てはない。似てる部分が無い訳じゃない。二人とも顔立ちは整ってるし、顔つきだって似てる。あとお兄ちゃんが大好きなところも。今も一緒に寝れるし、寝てる。と言うよりソファーとかで寝てると気づいたら俺に覆い被さってあいつらが寝てる。


 流石に一緒に風呂に入ろうとは言ってこない。

 あっ、でも春音はいまだに俺のお風呂を覗く癖がある。これじゃあ健全な男子高校生の理性は保たないときが必ず来る。その時は妹を避難させないと。


「さてと着替えるか……」

 妹たちが一階に降りた。あいつらはもう制服に着替えてた。あいつらはもう中学三年生。来年は高校生か。

 少しーーいや、だいぶ心配だ。

「まったく。元気な妹だな」


 八神がベットの下から這い出てきた。

「俺の可愛い可愛い妹だよ」

 八神は鼻でフッと笑いながら、窓から外の川の流れをじっと見てる。

 そうだ。凪姫(なぎひめ)はどうしたんだ? まだ寝てるのか? 四百年も寝ていてまだ寝足りないということはないだろう。


「凪姫は?」

 一応、八神に聞いてみる。

「まだ寝てる……あいつは昔から朝が弱い。起きるなら昼か、夕方くらいだろ」

 おいおい有り得ないだろ……朝が弱いっていうレベルの騒ぎじゃない。世界が滅亡するまで寝るんじゃないか? いや、我ながら行き過ぎた考えだ。


 着替えが終わり、八神を置いて俺も一階に降りる。母さんが朝ご飯を用意していた。

「お兄ちゃん。私の玉子焼あげるー」

「いらねぇよ、自分のがある」 

 なんてやりとりをこなしながら朝ご飯を食べている。

「兄ちゃん今度テストだろ?」

「あぁ……お前は今度空手の大会だろ」

「おう! 頑張るぜ」


 朝ご飯を食べ終わり、学校に行く準備を完了させて。

「んじゃあ、行ってきます」

「兄ちゃんもう行くのか?」

「お兄ちゃんもう行くの?」

 ここは双子みたいでそっくりだな……いや双子なんだけど。

「あぁ。行ってきます」 

「「いってらっしゃい!」」


 俺は家を出て、高校に向かう。周りにはほとんど何にもないが景色だけは良い。毎朝学校に行くまでの暇つぶしにはなる。

 気分も良い。

 後ろに黒猫がついてこなければの話だが。

 どうやら学校についてくるらしい。


「八神。俺はちゃんと妖伝記は持ってるぞ?」

「そういうことではない。儂は一応、用心棒だからな。お前のではない、儂は凪のためにだ」

「あー、はいはい」

 んだよツンデレキャラかよ……もう懐かしい響きのような気がするな、ツンデレって。

「儂はツンデレキャラではない」

「なっ!」


 心を読まれた!?

 妖怪って心も読めるのか? だとすると色々マズいような……

「読んだわけじゃない。お前の顔に書いてあるわ」

「ハハッ……」

 良かった。心を読まれたんじゃたまったもんじゃない。

 俺はなるべく人がいない道を歩く。人がいてそこで妖怪に襲われたんじゃ周りに被害がでるだろうと言う俺なりの配慮だ。


 っと言っても人通りはそんなに多くないけどな。

 それはそれで別にいいんだが、猫と話すところを見られると世間体に関わる。


「学校には入ってくるなよ。校則違反だからな」

「なんっ!? 儂は用心棒だぞ!」

「ダメなもんはダメだ」 

融通(ゆうずう)の利かんヤツだ」

 こればっかりはどうにもなんないだよ。

「周りでうろちょろしててくれ」


 そうこうしてる内に学校の校門についてしまった。

 早く来すぎたかな? 人が少ない。まっ、早く来るのも悪くないかな。静かだし。

 昇降口で靴をはきかえ、三階にある自分の教室へと向かう。


「あれ? 九十九(つくも)くん。今日はずいぶん早いね」

「あぁ、鳥峰(とりみね)。今日はそういう気分なんだ」

 階段を上る途中。俺はクラスの優等生、鳥峰(とりみね)()()()と偶然会った。

 肩まである黒い髪。実に女の子らしい体つき。クラスの人気は高いけどあまり目立たない。大和撫子とはまさしく鳥峰のために作られた言葉と言っても過言ではない。と俺は思う。


「鳥峰、お前も早いな」

「わたしはいっつもだよ。家にいるとつまんなくてさ」

 えへへっと可愛らしい笑みを浮かべた。とても好感が持てる笑顔だ。

「そうか、じゃあ教室で」

「うん。教室でね」


 教室に入ると、もう三人は席に座っていた。一人は音楽を聞いていて、もう一人は寝てる。最後の一人は教室を掃除している。

 掃除しているのは俺の友人だ。

「よぉ継。今日はやけに早いな」

「おう。おはよう。それ鳥峰にも言われたよ」

「朝から女子と会話か。憎いねぇ」

 こいつは(しし)()洋一(よういち)。眼鏡をかけていて背が高く、かなりのきれい好きだ。だから毎朝早く学校にきて黒板やら、机やらをきれいにしている。けっこう良い奴だ。

「ひがむなひがむな」 

 

 俺は席に着く。

 そして学校の勉強をすべてこなし今は放課後。


「さて……帰るか」

 俺は荷物をまとめて、教室を後にする。

「九十九くん。来るのも帰るのも早いね」

 昇降口で話しかけてきたのは鳥峰だった。

「そのまま言葉を返すよ」

「それもそうだね。わたしも人のこと言えないや」

 鳥峰が「じゃあね」と言って颯爽(さっそう)と帰って言った。


「ああいうのが、一番妖怪につけ込まれやすいのじゃ」

 鞄の中から声がする。

「うぉ! なんだ起きてたのか。びっくりさせるなよ……」

「んまぁの。ついさっき起きたのじゃ」

「で、さっきのはどういう意味だ?」

 俺は玄関を出て、人通りの少ない道を選び帰路へとつく。

「そのままの意味じゃ。優等生ってのは腹の中でどす黒いものを隠しているってことじゃよ。主様」

「あいつに限ってそんなことねぇよ」


 会話を交わしていく内に凪姫は静かに俺にこう言った。

「主様……囲まれてるぞ」

「え!?」

 囲まれてる? どうして? 誰にだ? いつから? やっぱり、凪姫と妖伝記を狙っているか……八神もいない。

 どうする……?

「主様、走れ!」

「クソッ!!」 

 俺はひたすら走る。そしてどこかで聞いたことがある足音。つい最近聞いた。


 狼だ。


「グルルルルル……」

 昨日の倍はいる。

「狼かのぉ、出てくるがいい(いぬ)の主!」

 凪姫がそう言い放つと影から犬耳? の生えた青年が出てきて、こちらに歩き寄ってきた。

 あれが狼の主。

 狼の耳に尻尾、牙に鋭い爪。人間にそっくりだがあれも八神や凪姫と同じ妖怪なのか……

「カッ! てめぇが凪姫か……妖伝記はどこだ?」

 そして俺を見る。

「お前が持ってんだな。匂いで分かるぜ。さっさとよこしな」


「クソ狗。図に乗るなよ」

 俺の後ろから声がする。

 その正体はーー

「てめぇか……八神ぃ」

 八神だ! 助けに来てくれたんだ。良かった助かった……

「久しいな……()(れん)。昨日の狼を見てもしやと思ってな」

 八神が猫モードから人型になっている。和風の袖を揺らしながらゆっくり、威圧感をたっぷりと纏わせて、夜憐に近づいていく。


 狼の鋭い眼光(がんこう)が八神を睨めつける。

 完全に臨戦態勢だ。ここまで押し押せてくる背筋に悪寒が走るような剣呑(けんのん)な雰囲気。

 春音だけに朝を起こされるのと同じ恐怖を抱く。

「てめぇらは妖伝記を奪え……オレは久し振りの大物を狩る」

 戦闘が始まる。

 

「行けぇ!!」

 夜憐の叫び声とともに狼が俺をめがけて襲いかかってくる。

 多勢に無勢過ぎんだろ!

「主様ッ! 妖伝記を使うんじゃ!」

「どうやってだよ!」

「それは妖伝記が教えてくれる」

 俺は鞄から急いで妖伝記を取り出し、ページをめくろうとすると妖伝記が勝手にぱらぱらとめくられ、あるページで止まる。

 そこには『対魔(たいま)』としか書かれていない。


 でも分かる。どう使うかがしっかり分かる。 

 深呼吸をし、妖伝記に手をかざす。

「対魔の札よ。主の願いを聞き入れ顕現(けんげん)せよ!」

 ページから札が顕現する。

「妖怪を払え!」

 札が光り、狼どもが消えていく。あの時の八神の光りと同じだ。


「んだこれ、はぁ……むちゃくちゃ疲れる」

「対魔の札はかなり体力を使うんじゃ。あまり乱発するんじゃないぞ。身が持たんからのぉ」

 そうらしいな……まったく疲れる。

 

「なんだと! あんな人間の小僧が……」

 八神が嘲笑うように。

「どうした? 夜憐」

 と言った。

「チッ!」

 夜憐は後退し、影へと消えていく。

「また狙うからな! 覚えておけ」

「ハッハッハ。まさに負け犬の遠吠えだな」


 妖怪は退けた……けどやっぱり疲れた。

「大丈夫か? 主様」

「まぁ……大丈夫だ。帰ったら寝る」

「んじゃあ(わらわ)も~」

「「お前は寝過ぎだ!!」」


 今日はなんとか終わりそうだ。だけど俺は少し、凪姫(なぎひめ)の言った台詞がどこか心に引っかかる。

 俺の役目はただ単純に妖伝記を狙う妖怪を払うだけじゃないのかもしれない。

ギャグとバトルなどを上手く描写できるように練習していきます!

意見、誤字脱字がありましたら教えてくれると幸いです

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