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ペットがどっちなのか分からなくなってくる、悔しい。

四十八願さんの事があった次の日、俺たちは間近に迫っていた1年のキャンプについてクラス会議が行われていた。

「えーでは、一年キャンプについての話し合いを始めたいと思います」

ざわめきがクラスを包んでいく。

「静かに!静かに!!えーでは班分けをしたいと思います、部屋わけは先生方が事前にして頂いていますので後ほど紙を配ります」

「どんな風に決めるんですか?」

モブが質問してら。

「えーとですね…どうしましょうか?」

「くじ引きー!」

「まてまて、自由にしようぜ!」

「そうだよ、自由にしよう!」

「いやっふうぅうぅううう!」

このクラスの男子の考えは多分二分割されるだろう、直脳破壊的美少年萌派と美少女転校生猫屋敷奏音派、今や二人はクラスの男子の間ではお祭りである。

男子高校生の卑しさ力が爆発的に上がっているっ!1万…4万…12万、まだまだ上がる…53万、ぐわっ!スカウターが壊れるだと!?などと一人で妄想につかるのも悪くない。

おっと…やはり、二人は重点的に狙われているか。

「猫屋敷さんっ!俺と同じ班になりませんか!?」

「ごめんなさい、まだ誰と行くかとかは…」

「萌!一緒にキャンプしようぜ!」

「ええーと、僕はー」

こっちを二人でチラチラ見るな。

あーだこーだ人を取り合いしていると設けられた時間はすぐ過ぎ班のメンバーは決まらなかった。

「チッ、結局決まんねぇか、お前ら、明日までに四人一組で班決めとけ!」

先生、放任主義なのはわかるけどさ……

昼休みに入り俺は奏音が四十八願さんを上手く連れてこれるか少しドキドキしていた。

「四十八願さん…」

「…猫屋敷さん」

「行く」

「……どこに?」

「吹雪の所」

「……うん」

四十八願さんは席を立ちちゃんと俺の席の前まで来てくれた。

「ふええ!四十八願さん!一緒にご飯食べるんだ!わぁーい」

「あ…いい…かな?」

「ダメな理由がないよぉ!その変わりお弁当見せて―!」

「…うん、ありがと」

萌は男として最高の性格だろう、認めるしかない。

「うわぁあああ!スゴイ!吹雪!吹雪!!」

「何だよ」

「四十八願さんのお弁当!!すっごい豪華!」

「……うっわ!すげぇ!高級な品格が漂いまくってる!」

見てみると確かに高級そうな肉やら食ったこともないようなものが密集していた。

「……ありがとう」

「いやーすごい、交換して欲しいくらいだよ!」

「少し……食べてみる?」

「いーのぉ!?」

「こらこら萌、涎を拭かんか、涎を!」

「…何がいい?」

「エッ、エビフライ」

「素直すぎるだろ」

「……どうぞ」

あげる四十八願さんも四十八願さんだが。

「うわぁぁあ、ありがと!四十八願さんっ!」

「……うん」

「あっ!そういえばさ、キャンプの班…一…二、三…四!」

「…吹雪はいいとして」

「まぁ、俺は誰でも」

てかもう逃げられんだろこれ。

ぞっ…背中に冷たい殺気が……破滅をも予感させるような。

「猫屋敷さんと四十八願さんはいいかなっ!?」

「いいとも」

背中に氷点下の殺気が……死をも予感させるような…気のせいダネ。

「……邪魔じゃないなら…お願いします」

「やったぁあ!決まり!!」

萌ってすごい!改めてそう思った。俺の命は危うくなったけどなァ!

「部屋の班分けも確か四十八願さんは奏音と一緒だったよな?」

「……うん」

「部屋はどこらへんなんだ?」

「…確か」

「四十八願さん、ダメ」

奏音が声を上げる。

「…え?」

「答えちゃダメ、吹雪は寝てたらいきなり顔をお腹に突っ込んでくるから」

「……っ!」

オイコラ!

「吹雪ィィイ!!」

萌が発狂し始めた。

「ちょいまてぇえええい!それには訳があってだな!」

軽蔑するように見てくる四十八願さんと涙目で叫ぶ萌に精一杯の言い訳をする。

「吹雪、僕が居ながらも!」

「……」

僕が居ながらも…?いや深追いはよしておこう。

「萌がいても変わんなかった!四十八願さんお願い黙らないで目をそらさないで!」

冗談と奏音が言い、ざまぁみろと言わんばかりに嘲笑っていた。

「冗談か…いやーよかった、僕は知ってたよ、吹雪は生きるジェントルマンだもん」

信じてる風には見えなかったけどなァ!

「……なんだ、びっくりした」

真に受けたのか!この子は。

「吹雪焦り過ぎ」

この糞猫捨てるぞ!!まぁ実際猫のときはしてたんだがここで言われるとは……策士め!

「はぁ…」

「そう言えば…私はスマホを持っていない」

「猫屋敷さん持ってないんだぁ、珍しー」

「……買ってもらえないの?」

「どうだろう」

チラチラこちらを見るな、こちらを!


「―――で、どんなのがいいんだ?」

結局家に帰った後、せがまれて買いに行くことになったのだが……

「OSのヴァージョンは最新、2.2GHzはあってほしいな、あと4Kないとダメだよね」

「ha?」

何言ってんだこいつ、何で猫のくせしてそんな詳しいんだよ。

「あと……」

「ん?」

「毛玉を処理してくれる機能がいるかな」

それ―――

「ルンバ君でよくね?」

真顔でマジレスしてしまった、恥ずかしい。

「そう……吹雪はつまらない人だね」

うわああああああああああああ、男子高校生にそれいうか!?処刑だよ処刑!!

お前価値ねぇなって言ってんだぞ!言葉の重みを知れええええええ!!!!

「あっ、これいいかも」

目を光らせながらどれにしようか悩んでいる奏音と対照的に吹雪は灰になっていた。

「ふっ…」

その後、契約やらなんやらと話し合いが続き家に着いたのは8時を回っていた。

話している時に奏音が眼鏡を取り出し出来るOLみたいにしてるのがムカついた。

「やったー」

帰宅早々奏音は我慢できないと言わんばかりに箱からスマホを取り出していた。

「使い方とか分かるのか?」

「少しなら」

「そうか」

まぁ俺より詳しいんだから分かるよな。

「速く」

「何がだ?」

「アドレス」

「ああ、はいはい」

別に俺はDQNでもないしリア充でもないから女子のアドレスなんて都市伝説だと思っていた。

見たか!全国の童貞諸君、俺はそつなく女子アドレスGETだぜ!お前らには到底真似できまい、はっはっはっはー!

「赤外線」

「了解、ああけどな、赤外線で交換する時関係ない奴までお前のアドレス拾えるらしいから気にしとけよ」

別にレア度をあげたいわけじゃないヨ、まぁSSレアってとこか。ふへっ。

「うん、送って」

「へいへい」

「来た」

なんかまぁ買った初日だな、当たり前のことで驚ける。

「適当にメール送っといてくれ」

「送った」

「いやに早いな」

「うん」

ベルが鳴りおもむろにスマホを見ると一通メールが来ていた。

アドレス名がステータスバーに表示されている。

nyannyanmyaon……

かわええー!何だこれ!にゃんにゃんみゃおん!にゃんにゃんみゃおん!

「おお」

開いてみるか、まぁ最初だから『よろしく』とかだろ、酷かったら『あ』とか?こいつならしそうだな。

『おい早漏、5分以内にジュース買ってこい、炭酸きつい奴で』

ちょっと待てぇぇぇえ!!な、何が起きた!?

「な…」

「どうしたの?」

「い、いや」

そ、そうだ!赤外線でしたから違う奴が俺のアドレスを拾って悪戯でメールしたんだな、なるほど合点、ふざけた野郎だ!

「おいダリィ」

「奏音」

「ああ、奏音、お前アドレスどんなのにしてる?」

「え?メール送ってる」

「まぁ言えよ」

「…恥かしい」

「言ってくれ!」

「に…」

「に?」

少し冷や汗をかきながら待つ。

「にゃんにゃんみゃおん」

うわあああああああああああ!!!

「な、ならお前何でこんなメール送って来るんだ!?最初からこれ!?」

「そ……はや……最初のなんて読むの?」

「え…いや、そのまぁ」

「ん?」

「と、取り敢えずなんでそんな文字打ち込んだんだ?」

「普通に『そ』って入れたらそれが最初に出てきた」

「IME育ちす過ぎだろ!『そ』の変換で最初が早漏!?中古かよっ!!」

「ふふ、私のIMEはレベル99」

「残念すぎるだろ、さすがに」

「ところでだけどジュース買ってきて」

「分かってやってるだろ、お前」

「わけわかめ」

「はぁ、じゃあコンビニ行ってくるよ」

「あ、財布からお金とっていっていい」

「お前が1円でも持っているとは…で、その財布はどこだ?」

「……さっさとジュース買ってきて」

「適当に言ったんだな!」

「ハヤク!」

その言葉は俺をビビらせるには十分な怖さと理不尽さを共有していた。

「了解しました、炭酸強めでよろしいでしょうか?」

「ぐぅうど」

「行ってまいります」

「いってらっしゃい」

アパートの外に出ながらイライラしていた。

ったく、何がぐぅうどだよ、なんもよくねぇよ。

「はぁ」

「あ…ソーダでいいのかな?メールするか」

『お嬢様、ソーダでよろしいでしょうか?』

送信してから数秒で返信が来た。ずっと弄ってるな。

『いいにゃん(`・Ω・´)』

かわいい!何あいつ、毎回メールうつ奴変わってんのか?そして惜しい、Ωはωにしたかったんだろう。

『了解(`・ω・´)』

ふっ、スマホ使いの実力差は歴然だな。経験値だよ経験値ィ!最後にものを言うのはなぁ!経験だぁ!ヒャッハァー!!

何やってんだろ。


「―――会計500円になります」

コンビニで必要なものを揃えたので後は、買って帰ればミッションコンプリートだ。ゴルゴも驚くこの速さ。5分かかってないのではないだろうか。

くくっ、飼い主様の威厳を守るためにマシュマロも買ってあるのだ!!

二往復の可能性を回避するためなんて絶対言えない。

「ああ」

「カードはお持ちでしょうか?」

「いえ、持ってません」

いつも思うけど出すやつは聞かれる前に出すだろ。

「ではお作りになられますか?」

「いえ、いいです」

「でもお客様、ただいまカード会員様だけ500円お買い上げごとに一回くじができるキャンペーン中ですよ」

「いや、どうせ大したことないでしょ」

「ところがどっこい!」

おい、この子今日がバイト初日なのかところがどっこいって…。

「三等は、三泊三日温泉旅行!当たったら連れて言って欲しいものです!」

「ほうなかなか」

「二等!これもすごい!今はやりのハイブリッドカーヒッサンポリオス!」

「おおー!」

「そしてそしてぇ!一等は店長直筆サイン入りストラッ!つっ!!」

「え?どうした?」

「歯を噛んじゃいまひた、いたーぃ」

「舌でしょ」

「ひゃあまひがえまひた」

赤面してるしかわいいなぁ。なんか愛着湧いてきた、何だよこれ高校生の純愛みたいだな。

「だ、大丈夫?」

「ひゃい、らいひょうぶです!」

全然大丈夫じゃねぇー!涙流してるし。

「そ、そう」

「んぐっ、お、お客しゃま、一等は店長じきひちゅサイン入りしゅとラップ!!」

ああ、痛いのに泣きながらよく頑張ったなー、褒めてあげたい。でもその一等…なんの罰ゲーム?

「ああ、えーと、うん」

「いててー」

「どうですか?会員になりませんか?」

なかなかしつこい、頑張るいい子だが。

「いや、今回はいいや」

「えぇー」

「舌まだ痛いだろ、家帰ったらうがい液で洗えよ、ばい菌入るかもしれないからな」

「あ、はい」

「また来るからさ、くじは今度にするよ、お茶とか飲んで痛み和げろよ、な」

「…はい」

「じゃあね!」

「あ、ありがとうございました」

吹雪の優しさにすこし呆けていると裏から店長が後ろに姿を現していた。

「あんた、顔赤いよ」

「え?うわああ!店長さんいつから後ろに!?」

「ついさっき、お客さんいるよレジしな」

「はーい…」

でも優しかったなー、また来るって言ってたしシフトが合うといいなー、ふふ。

「赤い」

「ふぐぅ…」


全力ダッシュだ!!

コンビニをでた吹雪は、家に駆け足で帰っていた。

しかしなんで俺がぱしられにゃならんのだ。


ダリィ様は♪ダリィ様は♪だるい事がお嫌いだ♪

毛は飛ぶし♪

ゲロ吐くし♪

お尻なめるし♪

お馬鹿だし♪


脳内でくだらない歌を歌いながら家を目指す。

「はぁはぁ」

家の入口に着くころには、息も乱れていた。

「遅い、ゴルゴも怒ってスナイパーを溶かして刀を作り直すレベル」

ムカ。

「さぁーせん姐御ぉ!」

嫌味たっぷりな反応に同じような反応で返す。

「姐御……カッコイイ」

ときめいてんじゃねぇよ!

「はぁ」

スーパーのレジ袋ごと奏音に渡し、ソファに腰掛けた。

奏音は人の苦労も分からずに机にソーダを置きコップを用意している。

「あ、マシュマロ……」

キタァ!さぁ敬え!

「二往復回避おめでとう」

ちっくしょおおおお。

「ん?あれ、コップふたつ?」

「吹雪飲まないの?」

ふああ、ええ子や。

「飲む吞む!頂く!」

嬉しそうにコップにつがれたソーダを眺めながら少し冷静になっていた。

なんで喜んでんだおれ……。

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