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タイトル不明(おそらく筆者による走り書きと思われる)

 時間が無いため列挙にとどめる。


『乱す王』(シルバリングス・ナカハラ)はいわゆる現代のオタクと呼ばれる者たちを描ききった怪作。触れるものをすべて黄金にしてしまう、あるいはロバの耳で有名な王様は、まるで王のごとく振る舞う彼らの鏡像たり得る。望みが叶えられ、しかしそれゆえに苦しむというのは、風刺としてはあまりに直裁であろう。


『造物主の悲しき非在』(ネムラ・ナムラ)は前述の本と関連した哲学書、或いは万学への指針、つまるところは融通が利きすぎるHowto本とも言える書物。あらゆるものはフラクタルであるという主張を中心として、グランドデザインを経た運命論・確率論を踏まえつつ、かのレムの『新しい宇宙創造説』の一部肯定、一部否定をしている。


『ゴルゴン・光線銃』(ミーナス・スタンフィールド編)は数々の神話が、SFにどのような影響を与えてきたのかについて光を当てたアンソロジー。編者がどこから拾ってきたのか、聞いたことのない作者の作品ばかりだ。そのくせ、どれも話題にならなかったのが不思議なほど妙趣に富んだ作品ではあるのだが、最後に収録されている掌編「ゴルゴンの涙」は、まさに珠玉の一作である。あまりに切ない終わり方に、読んでいるこちらとしても不意に涙を誘われる。ただ、これだけの作品と作者が世に出ていないとも考えづらいため、普段は別名を使っていることは充分考えられる。


『輝くはんぺん』(御堂砂銀)は「輝く断片」をもじったパロディ集。とはいえタイトルから想像がつく通り、かなりむちゃくちゃなことをやっているので普通の読者にはそっぽを向かれること請け合いである。ただ、ふざけたタイトルとは裏腹に、意外に骨太な短編が混じっているので注意。また、空腹を誘うような食事の描写がことあるごとに出て来るため、夜中に読むのは危険であると忠告しておく。


『ライブラリ・フェブラリィ・フェアリィ』(コダカ・リンレイ)。乙女と機械と空飛ぶ島の話。ぶっちゃけラピュタをモチーフにしているが、ガリバー冒険記を下敷きにした皮肉と毒の載せっぷりが微笑ましくも頼もしい。ただ科学技術の進歩や滅びへの流れがいまいち。考証以前に想像が足りていないと感じられる部分が多いので、そこは次回に期待したいところ。


『ロクセンカヅラ』(長倉かがり)。純文学……に見せかけたラノベ。ポストアポカリプスな世界観にもかかわらず、主人公は少女漫画的な感性で形成されており、あざといまでに可愛らしい女の子を、作風のネガとなると知りながら描いてしまっているあたりに作者の本音――あるいは限界が窺える。血と硝煙とセックスにまみれて、どこにも救いのないはずの崩壊後の世界に、どこまでも浮いた輝きを放り込む趣味の悪さ。そのくせそれを力業で納得させてしまうのは異常な筆致ゆえだ。ただ、その巧さは、どう考えても人間に対する冷徹すぎる観察から来てしまっている。世界から設定から人物描写から何もかもがフィクションに爛れているのに、まるで見てきたような、としか言いようのない感触なのだ。ありえないとは思うが、このまま芥川賞の候補にならないことを祈る。なったらなったで他人事として笑えるだろうが。ついでだが、タイトルが素直すぎると感じるのは邪推か。どうせなら、完全な遊戯とでも名付けるべきだったのではないか、と思ってしまうのは……作者の誘導に引っかかっていると見るべきかも知れない。


『イミテーション・ディストーション』『愛にすべてを、すべてに愛を』『ティル・アン・テイル』(ジェンド・スラー)の三部作は……正直、説明に困る。ファンタジー小説として傑作であることは間違いないんだが、どう見てもファンタジーの皮を被った何か別のものだ。いや、小説が表面の芸術である以上はそれはそれで正しいんだろうが、こう、とんでもないものを読んでしまった、という感覚に囚われる作品なのだ。初読と再読で印象が変わる作品というのはよく聞くが、三度目、四度目と毎回最初から読むたび、全く異なる雰囲気に変化し続けているのはいかなる理由か。ファンタジーのはずなのに、最初はミステリ。次はホラー。その次はラブロマンスで、再び読み返すとSFになり、躍起になって読み直した途端、メタフィクションとしか思えなくなった。内容自体は特に変わっていないはずで、これはファンタジー小説というより小説ファンタジーであると結論付けたのは、おそらく間違いではあるまい。


 以上。

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