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とある忍者の珍道中

「馬は温泉街においてきたし、歩きで本能寺に行くしかないだろう」

「え~走っていこうよ」

「俺はお前みたいに体力が有り余っているわけではない。

それに、信長との戦闘のために体力は温存しておきたい」

「でもここからだと歩いてじゃあ6月2日までに間に合わないよ?」

現在、5月30日午後8時30分、確かに歩きでは間に合わない。

だったら一か八か、近くにある川の急流を利用して小舟で下っていく

しか間に合うすべがない。

だが、ここは近江の北側にいる、川までは数十kmもある。

その時点で間に合うかどうかわからない・・・。

「とりあえず、もう遅いから野宿しよう、2時間ごとに交代

起きて見張るようにしよう」

「え~なんでぇ?間に合わなくなっちゃう」

「早く寝て深夜に出発すればいいだろう、大体5時くらいがちょうどいいな」

「むぅ~上乃助のケチ」

「ケチとかの問題じゃないだろう・・・」

と、神楽も文句を言っていたが次第に眠くなってきたのか、午後9時14分、神楽が寝付いた。

「さてと、俺は見張りをするか、寝込みに襲われるなんてごめんだからな・・・」

一応、俺たちも狙われている身だ。

武田三森たけだみもり上杉影蔵うえすぎかげぞうを殺したことでほかの武将たちに

目をつけられている、正直、魔術で気配を消して追いかけられていてもおかしくない。

特に、神楽には手傷を負わせたくない。

「・・・結局徹夜か」

そして、飯の調達のため、近くにあった盗賊団のアジトらしき建物を

襲ったが気にせずに、午前5時。


「おら、起きろ神楽、朝だぞ」

「う~ん・・・ご飯なに?」

「おい・・・寝ぼけてないでさっさと起きろ」

「眠たい」

「・・・織田信長」

「はっ!上乃助!ご飯なに!?」

バシッ

「お前はご飯しか考えがないのか!」

と、ツッコミを入れる。

というか入れてしまったの方が正しいな。

条件反射ってやつかな・・・?

「とりあえず、ちょっと近くにあった盗賊のアジトらしき建物を襲って食料調達してきたから」

「あれ?交代しなかったの?」

「あぁ、起こしたが、起きなかったから・・・」

「またまた~私に傷をつけたくなかったからじゃないの~?」

「ぎくっ」

鋭い。

「と、とにかく行くぞ!」

「お、お~」

本能寺へ向かって進み始める。

数時間後、川にたどり着いた。

「おぉ~流れが速い~~~♪」

「とはいっても、もう夜が近い、早くくだらないと」

と、一本の刀を抜き、近くにあった大木を真っ二つに切り裂く。

グシャッ

ドドーンと音を立てて木が倒れる。

「今切った木、結構長いね、樹齢957歳だって」

「なぜわかった!?」

「年輪をぱっと数えてみた」

そういや神楽は昔から本の流し読みが出来たな・・・。

それの応用か?

しかも流し読みじゃあ普通は大雑把にしか内容を理解できないものなのに

完璧に内容を理解している。

こう見えて神楽は天才なんじゃ・・・。

「ま、太い木は船にはちょうどいいな」

上乃助はもう一本の刀を抜き、構えに入る。

そして・・・

形作斬ぎょうさくざん

形作斬、ものをイメージした形に斬る技。

上乃助のイメージした形は小舟、だから斬られた木は小舟の形に変わっていた。

「おぉ、さすが上乃助♪」

「早く乗るぞ」

「おー♪」

川は予想通り、流れが速い。

だからといってこんなに速いものか・・・?

流木が岩にぶつかって砕けたぞ?

「・・・どっかに縄ないか?」

「え?何で?」

「この急流だ、普通に川に浮かべただけだとすぐに流れて乗れない」

「じゃあさ、ここに浮かべて?私を乗せた状態で」

すとんっ

「まだ答えてないんだけど・・・ま、いっか」

上乃助は神楽が乗っている小舟を持ち上げ、神楽が指示した川岸に浮かべる。

「よっと」

ざっぱぁあああああ

神楽が岩を掴んでいる。

そして小舟が流れるのを防いでいる。

「お~すげぇ、よく掴んでられるな・・・」

「早く乗って!もたない」

パッ

「あ」

「きゃあ~~~~」

「マジかよ!!!」

小舟が流れていく。

それを上乃助は全速力で追いかける。

「きゃあ~~~岩にぶつかる~~~~!!!」

「やっべ!とりゃああ」

ビリビリビリッ

ドドーン

雷の魔術を使って岩を砕いた。

岩の芯に狙ったから水の中でも粉々になってるだろう。

座礁しなくてすむ。

「(でも、流れが急だからまだ乗ることは出来ない・・・だったらっ!!)」

瞬雷移動しゅんらいいどう!」

ビリビリッシュン

上乃助は小舟の少し先の空中に移動した。

「ちょっと~~~上からなの~~~~!?」

「どっこらしょ」

スタンッ

何とか着地した・・・でも小舟に着地したせいでバランスが崩れ、ふらふらな状態だ。

「うおっ!?」

「きゃああ・・・うっうるるるるるるる~~~~」

「このタイミングで吐くな!!!」

そして・・・。

「あ」

「ぶ、ぶつかる~~~~」

「うわああああああ」

ドシャーーーーンッッッ

小舟は勢いよくぶつかり、砕け散った。

「きゃああああああ」

「うわぁぁあああああ」

ザパァァァァン

二人は川に落ちた。

「(くそ!こんなところで・・・)」

「(死にたくないよ~~)」

二人は川の中へ沈んだ・・・。


・・・

「きゃあああああ」

「このガキ!さっさとつかまれ!」

「すばやいガキだ!」

ささっ

「貴様ら!のけい!」

「わが子を死なせはしない!」

「ええい!死ねぇええい!!!」

「上乃助!逃げろ!!!」

「逃げて!!!かみちゃん!」

「父さん、母さん!」

「早く逃げろ!!!上乃助!!!!」

ザシュッ

「うわあああ」

「父さん!!」

ザシュッ

「きゃああああ」

「母さん!!」

「早く逃げて・・・」

「母さ~~~ん!!!!!!」


「うわぁ!」

「夢か・・・ってここどこ?」

「お目覚めですか?」

「うわぁ!」

「ど、どうしたんですか?」

「あ・・・すまない」

目の前にはかわいい女性がいた。

・・・というか子ども?

「いえ・・・相当うなされてましたよ?

どんな夢を見ていたんですか?」

「ていうかあんた誰!?10歳の子ども!?」

「17歳よ!

ふぅ・・・私はゆかり、ここの女将代理よ」

「ここ・・・どこ?

ていうか神楽は!?」

「あぁ~、内葉神楽さんね、もう起きて料理場の手伝いをしてもらっています

ここは山城、摂津、丹波の国境近くにあることで有名な宿、なまくらです」

「なぁ、俺を侮辱してるようにしか聞こえないんだが・・・」

「まぁ、あなたは侍の方なんですね・・・なんて弱そうな体つきなのでしょう」

この女、ちっさいくせに一言多いな。

態度も無駄にでかい。

「まぁ今の一言は無視して、神楽に料理を手伝わせるな!」

「何でですか?」

「あいつが料理をやったら料理じゃなくなる」

「なるほど、それほどにまでド下手なんですね☆」

また面倒なやつと会ってしまったな・・・。

「とにかく、神楽とあわせろ」

と、立ち上がろうとする・・・が。

ポキッ

「痛って」

「大丈夫ですか?ちょっと体の内部を見たんですが

筋肉の形とかズタズタになってましたよ?」

「お前、俺が寝てる間に何をした!!!」

「あぁ、大丈夫です、決して身を裂いて中身を見たなんていいませんよ?」

「なぁ、今からお前を殺しにかかっていいですか?」

「ダメです」

「ちっ、とりあえず・・・」

こいつは山城、摂津、丹波の国境近くだとか言ってたよな。

本能寺はさほど遠くないか。

雷で強引にでも体のズタズタを直してさっさと行かないと。

「あ、ちなみに体のズタズタは直しておきましたので。

腰の痛みは副作用といったところです」

直す必要はなかった。

「そうかよ・・・じゃ、厨房に連れてってくれ」

「わかりました」


~厨房~

「・・・」

「いてててて、腰が」

「上乃助さん、眼を背けないでください」

「やだ!だってさ・・・ここって厨房なのか!!??」

「神楽さんによって厨房じゃなくなってますね・・・」

上乃助と縁が見たものは、厨房全体に紫のねっとりした液体がへばりついており、

どこかの拷問部屋みたいになっていた。

その部屋の料理台らしきところに神楽は立っていた。

「あ、上乃助、待っててね~早く作るから♪」

「ちょっと待て神楽!!!!」

「どうしたの上乃助、ピリピリしちゃって」

「そら怒るわ!厨房の今の惨状を見てみろ!」

「え・・・うわ!誰がこんなことを!!!」

「お前だ!!!」

「え!私!?そんなわけないよ~料理の腕は天才なんだから♪」

天才じゃなくてだな・・・。

「え・・・これは天才というよりというか真逆ね

白痴といったところでしょう」

「白痴?おいしいの?」

「白痴って言うのは、ふざけるとか馬鹿者って言う意味、つまりきっぱり言うと悪口だ」

「きぃぃぃぃぃぃなめてるのね!

縁とかいうやつ!」

いや、縁のほうが正論だ。

「決闘を挑むのね、のぞむとこ(ry」

「はいはい、わかったから」

上乃助は二人の襟元を両手で掴む。

右手に神楽、左手に縁。

姉妹喧嘩の仲裁に入ったお父さんのようだ。

「神楽、後は俺に任せろ」

「私の代わりに縁を殺すの?」

「違う!厨房の惨状をお前の変わりに何とかする!」

「ちぇ、じゃあ私がけりをつける」

「のぞむところよ」

「ブチッ」

10秒後・・・

「何で私は柱にくくりつけられてるの?」

「女将代理である私まで縛り付けて・・・もしや」

「お前等がうるさく、さらに鬱陶しいからだ!

この惨状の中で喧嘩なんかされたらもう手の施しようがない!」

「「はいはいわかりましたよーだ」」

変なところで気が合うんだな・・・。

「ちょっと待っとけ、客間にもちょっと言ってくる」


お客様、誠に申し訳ございません、ちょっとした事故が起きまして、

少し調理が遅れてしまいます、今しばらくお待ちくださいと、各部屋に伝え、厨房の掃除を

30分程度で終わらした。

食材は運良く・・・というか奇跡的になんともなっていなかったので、急いで調理した。

ここまでかかった時間は1時間半、何なんだこの超人は・・・。

ついでに客からのバッシングはなかったそうだ。

「ちょっと上乃助さん・・・何で私よりおいしそうなもの作ってるんですか」

「まあ、魔術をうまく使い分けて、調理方法とか知ってたらこれくらいに」

「魔術ですか・・・後日やってみます!

というわけでこの縄をはずしてください」

「同感!はやくほどいて!」

「ほどいた瞬間喧嘩始めたらぶった切るからな?今ちょうど包丁持ってるし」

「「ちっ」」

「訂正、今からぶった切るわ」

「「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」」

「わかればよし」

縄をスッとほどいた。

「とにかく、神楽は早く客室にもどれ、そして寝ろ!」

「なんで!?まだこんなに元気なのに」

「その元気は明後日に使ってくれ」

「俺も料理運んだらそっちへ戻るから」

「りょーかーい♪」

神楽は客室に戻っていった。

「私も手伝います」

「お前は無理やりにでも手伝わせてたけどな」

「助けた恩を忘れたのですか?」

「それとこれとは別だ」

大変長らくお待たせいたしました、今回は遅れたお詫びとして弾んでおきましたので、

じっくりご堪能くださいと、再び各部屋に言って回り、部屋に戻った。


シュー

「あれ、もう寝てるのか・・・まあいい、明日、朝早くに計画を伝えればいいか」

上乃助も布団を敷き、布団の中に入る。

疲れていたのか、すぐに寝付くことが出来た。

そして朝・・・


「んん~~~」

「お、起きたか神楽」

「んん~なんか縁と上乃助を縄に縛り付けてこの旅館の事件を丸く治めた夢見た」

「それは逆夢だ

とりあえず、さっさと着替えてくれ、そのあとに今後の計画を伝える」

「りょーかい」

「じゃあ厨房手伝ってくる」

上乃助は厨房にいった。

腰の痛みはもう治ってるな。

そして、厨房の手伝いが終わり、部屋に戻る。


「神楽!起きろ!!」

神楽はまた寝ていた。

着替えは既に完了してるが・・・。

「ん~~~私が縁をぶちのめそうとする夢を見てた」

「その先は俺がぶった切ってたな・・・

とりあえず、今から今後の計画を伝える」

「あいあいさー」

「まず、今からここを出る、そして一日かけていけるところまで歩いていく、

そして野宿、雷の結界を作っておくから見張りをつける問題はない

で、その次の日の夜に本能寺へ乗り込む」

「何で夜なの?ていうか前の野宿の際に最初から結界使ったらよかったじゃん」

「過去のことをグチグチ言ってもしかたがない」

その論だと復讐も無意味な気がするが・・・。←作者の意見

「まあいいや、とりあえず、しゅっぱーつ♪」


~なまくらの前~

「今日はありがとうございました」

「いえいえ、私たちも大変お世話になったので」

「女将さん、縁を良くしつけといてくださいね」

「どういう意味よ!」

「はいはいわかったから」

「上乃助くん、神楽ちゃん、女将である私からのお礼です」

「私の家に伝わる宝具よ」

なんか女将さん、急にえらそうになった・・・。

もらったものは、ピカピカに磨かれていた剣2本と鎖のついた銀色に輝く腕輪。

「これって、天羽々(あめのはばきり)天叢雲あまのむらくもじゃないですか!」

「正確には天叢雲剣あまのむらくものつるぎだけどね、別名草薙の剣♪」

「でも、天羽々斬はともかく、天叢雲は太刀でしたよね?」

「父さんが鍛冶の天才でね、天叢雲剣を太刀から刀剣にしてもらったの」

「ありがとうございます、あと、神楽の腕輪は・・・」

「これは魔強まきょうの腕輪、魔術の威力を高める力があるの」

「でも、その力は魔術を体にまとわせることと、1種類の属性しか使えない人にしか発動しないの」

「神楽は条件があってる上に魔術の威力は相当高い・・・最強じゃん!?

でもどうして鎖?」

「神楽は風でしょ?風は物を動かしたりとかできるから

鎖を器用に動かして拘束などに使えばいいと思う

か、勘違いしないでよね、あんたのために作ってもらったわけじゃないんだからね」

「あらまあ、縁も素直じゃないわね」

「ですね・・・」

「じゃあ試しに・・・」

じゃらじゃらじゃら

「え!?ちょっと」

ぐいっ

「何で私を縛るのよ!!!」

「ていうかいつの間につけてたんだ?」

「おやまあ・・・ふふっ」

「お母さん助けてよ」

ガシャン

上乃助は手に持っている天叢雲を縦に振った。

雷が天叢雲をまとっている。

「これ、魔術を通しやすいんですね」

「天羽々斬も通しやすいですよ」

「ちょっと上乃助!早速壊れちゃったじゃない!!

結構うれしかったのに!」

「大丈夫だ、見ろ、もう再生してる」

「え!なんで!?」

再生鋼さいせいこうだよ

でも、再生鋼って実在したんですね」

「はい、ある侍が提供してくれたんですよ」

「ある侍?」

「えぇ、名前は天乃草薙あまのくさなぎという人です」

「天乃草薙・・・知りません」

「上乃助でも知らないことってあるんだ」

「当たり前だ、俺が知ってることは俺が知ってることだけであり

俺が出来ることは俺が出来ることだけだ

俺が知らないものは知らないし、俺が出来ないことは出来ない」

「・・・と、とにかく女将さん、縁、ありがとうございました」

「ちょっと!鎖は切れたけどまだほどけてない!!!」

「はいはい私がほどくから」

「「ありがとうございました」」」

こうして二人は本能寺へと向かっていった。

本能寺まではあともう少し、復讐を果たすことは出来るのか・・・。

どうでもいい話、切られた鎖は再生し、腕輪の少し上部分に巻かれています。

次回、最終話

復讐の時・・・

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