温泉街の異変‐前編‐
現在、5月27日、午後1時30分。
「うぅ、苦しいよ~」
「おいおい、大丈夫か?温泉街、もう着いたぜ?」
「う、なんか出そう」
「おい!出すんならどっかで便所借りて出せ!」
「あぁ~もうだめ、出る・・・うるるるるるるるる」
「わぁあああ!出すなぁああああ~~~!道のど真ん中で吐かないでくれぇ~~~~」
こんな見苦しい場面から始まったことをお許しいただきたい。
ついに着いた温泉街、この温泉街には温泉が6ヶ所もある、全てを回るには、朝晩入るとして3日はかかる。
「よ~し、3日で全部回ろう~~♪」
「マジかよ!まぁ、まだまだ時間はあるからいいけど・・・」
「わ~いわ~い」
3日もこいつに振り回されるのか・・・体力持つかなぁ・・・
「よ~し、まずはここ~♪」
温泉は2ヶ所が宿屋が所持しており、もう3ヶ所が風呂屋が所持している。残りの1ヶ所は今で言う天然温泉、つまり誰も土地を所持していない温泉、でも、その天然温泉は近くにある山にあるため、人以外にもサルたちも集まってくる。
神楽が最初に選んだのは「ゆけむり」という宿屋だ、まだ昼だけど、宿は確保しておこう。
「やっほー早速温泉入ろ~~~」
「まだ昼だろう!!」
と、ツッコミを入れる。
そんなやり取りをしていると・・・
「おらぁおらぁ~首領のお通りだぁ」
すると、周りにいた人たちはその声と同時に道の脇で正座をして頭を伏せる。
刀や、槍を持った人が群れをなしてこちらに歩いてくる。真ん中に少し隙間があると思うと、その中心に一人の男がいる。
大名行列に似た感じだ。
「なにあれ?」
「さあ?」
隣にいる青年が声をかけてくる。
「お前さんがた、何してるんですか!早く頭を伏せないと死んでますよ!」
「は?」
「なんで?」
「あんたがた、旅のお方かい?」
「あぁ、そうだけど何これ?」
「これは、5,6ヶ月くらい前の話、この温泉街に、美濃では有名な盗賊団が現れ、この温泉街を占拠されてしまい、この様です」
こんな話をしていると、行列の一番前の人がこっちに目を向けた。
「こらぁ!そこの若者2人!頭を伏せんか!」
「はぁ?なんで?」
「座るのはいいけど正座はやだね、それとも、力ずくでさ・せ・る?」
神楽の目がキラキラと光っている、こうなると戦う気満々としか言いようがない。
でも、その盗賊はひるまずに・・・
「貴様ら!打ち首獄門じゃ!覚悟!!」
盗賊は刀を振り降ろした。肩から切りかかる感じだ。
これは打ち首なのか・・・?
周りで座っている人たちは誰もが死んだと思ったろう。
だけど・・・
カンッ
上乃助は腰に下げている2本の刀のうち、腰から1本を鞘ごと抜き、鯉口を切りながら、柄で刀を防ぐ。
「なに!?」
盗賊は思った以上に動揺している。
「やっりぃ~そのまま斬っちゃえ~~~~」
神楽の異様なまでに高いテンションとキチガイが吐くようなセリフは無視して・・・
「あんたら何なの?盗賊?」
「我々のことを知らんとは愚かな・・・」
動揺していた盗賊はすぐに我に返ったらしい。
中心にいる首領らしき人物とその部下らしき人たちがが講義しはじめる。
「旅のものか・・・まあいい、今回は引き下がってやろう、皆の衆、面を上げ」
盗賊たちはそのまま去っていった。
盗賊たちが去ったあと、周りがざわめき始める。
そんな中、隣にいた青年が・・・
「あんたらすごいなぁ、あいつらを追っ払うなんて~」
「ちぇ、殺せばよかったのに」
「ねぇ、そこのあんさん、このキチガイを何とかしてくだせぇ」
「あ、ちなみにあなたが私に攻撃してきたら首が飛ぶわよ?」
「ひぃ!」
「そんな怖いことをさらっと言うなよ」
「はいは~い♪」
まったく、キチガイすぎるったらありゃしない。
「そういやあんたら、ゆけむりで泊まるのか?」
「あぁ、そのつもりだが・・・」
「よ~し!宿確保~~~じゃ、今度は風呂屋に行こ~~」
「ちょっと待て!ここに荷物置いてからにしろ!」
「はいは~い♪」
「じゃあこっちに来てください、案内します」
「「え?」」
「あ、申し送れました、ここ、ゆけむりの女将の息子、裕と申しやす」
「あんた、ここの人だったのかよ!」
道理で普通の服と違うと思ったぜ。
「じゃあさっさと荷物置いて風呂屋にしゅっぱ~つ」
「はいはい」
まだ昼なのにどうして風呂に入らなきゃいけないんだ・・・
「見たらダメだよ!」
「はいはい」
部屋に荷物を置いて、浴衣に着替えた。
念のために、刀を1本持ち出した。
そして宿屋を出た瞬間・・・
「というわけでしゅっぱ~つ♪」
「ちょ!速すぎ!腕がちぎれる~~~!!!」
と、手を引っ張られ、岩盤という風呂屋に着いた。
「着いた~・・・あれ?どうしたの上乃助?」
「お前は俺の腕をちぎる気か!」
肩が痛い。
「とにかく入ろうよ!」
「はいはい」
風呂屋に入ると、男湯と女湯に分かれている。
もちろん当たり前なんだが・・・
「ちぇ~混浴じゃないのか~」
「当たり前だろ・・・ていうか浴衣に着替えるときにこっち見んなとか言ったくせに何で混浴ならオッケーなんだ?」
「着替えるところ見られるの恥ずかしいもん!」
裸を見られるのも恥ずかしいと思うが・・・
「まあいいや、とりあえず入ろう、じゃ、また後で・・・」
神楽は少し悲しげに女湯に入っていった。
なぜ俺と入りたいんだ?それ以前に俺の理性は保つのか・・・?
と、ギャルゲーの主人公が考えるようなことを考えつつ、上乃助は男湯に入っていった。
「はぁ~気持ちい~~」
神楽はお湯につかったようで、結構気持ちよさそうだ。
神楽の声が、男湯にも聞こえてきてもともと入っていた3人のおっさんが興奮し始めた。
「何だあのおっさんたち・・・」
いい忘れたが、ここは露天風呂だ。
そのため、女湯のにいる女性たちの声が男湯にも聞こえる。
神楽の声が結構目立っている。
高いからか、声が大きいからか、よくわからんが、目立つ声って言うことは確か。
「(なんか腹立つ)」
なんて思いつつ体を洗い、お湯につかる。
「あ、結構気持ちいいや」
普段喋る声より少し大きめの声を出した。
神楽にこっちも気持ちいいよ、という感じで伝えるために。
すると、女湯が少しざわめき始める。
「何?今の声・・・かっこいい~~~」
「ほんと~よね~どんな男が入ってるのかなぁ?」
「男前なのでしょうねぇ~」
と、こんな感じの声が聞こえてくるが、気にしない気にしない。
そんな感じで20分後・・・
まだざわざわしている。
すると・・・
「そんなに上乃助の顔が見たいなら見せてあげるよ~」
いやな予感が・・・。
念のため、腰に布を巻いて、男湯と女湯を仕切ってる板の前に立った。
「どーん」
バキッ
男湯と女湯を仕切ってる板の真ん中あたりに穴が開き、そこから神楽がキックしながら出てきた。
「やっぱりか・・・」
といいつつ、神楽の足を掴み、穴に向かって神楽を投げる。
「とりゃ!」
「わわっ!」
穴の向こうで倒れた。
「って裸かよ!せめて体に布を巻いてキックしろよ!」
キック自体がダメだろ。
「えへへ~ごめんごめん」
「まったく・・・ってちょ!」
気づいたら周りにいたおっさんたちが開いた穴を覗いていた。
「きゃあ~~~覗き~~~~~」
「助けて~~~~」
悲鳴が聞こえる。
だがその悲鳴の中に神楽の声はなかった。
「あれ?神楽気にしてないのか?
ま、いいや、とりあえず気絶させとくか」
上乃助はおっさんたちに駆け寄る。
「覗いてるところ悪いけどお前等には気絶してもらう」
「なに?」
「ふざけんじ(ry」
ドスッ
「ぐふぅ」
一人のおっさんの鳩尾を殴った。
おっさんはそのまま白目をむいた状態で倒れた。
「なんだてめぇは!ぐふ!」
「ぐぱぁ」
上乃助はさらに2人のおっさんを気絶させた。
「よえぇ~~」
全員、腹が出ていて太っている。
「こんなに腹が出てるのにすぐ気絶すんのか・・・」
そういいつつ、穴を覗いてみると、神楽はお湯につかりながらで寝ていた。
「おいおい」
神楽の状態を確認していると、穴に向かって4人の女性がこちらに来た。
「「「「ありがとうございます!」」」」
4人の女性がお礼をいいはじめた。
「なにかやってほしいことはありませんか?」
「たとえば・・・」
「あぁ・・・じゃああの湯につかって寝てるあの馬鹿を起こして脱衣所に持って行ってくれません?」
苦笑いをしながらそう言うと・・・
「え~もっとないんですか?」
「例えば○○○とか」
「失礼します」
と、脱衣所に戻った。
性欲丸出しじゃねぇかよ。
「えぇ~~待ってくださいよ~~せめて一緒にこの温泉街を回るとか」
「・・・」
もう無視した。
面倒くさかったから。
それにしても何で神楽が思いっきり俺の名前言ってたのに俺が内葉上乃助だって気づかなかったんだろう・・・。
そしてお風呂代と壊した板代を払って、渋々風呂屋から出た。
その後、神楽に振り回され、そうこうしているうちに日が暮れかけていた。
「もう日がくれそうだし宿屋に
戻ろうよ盗賊団の話も聞きたいし」
「それもそうだね、じゃ、宿屋に帰ろ~~~」
「おいおい走んなって、もう疲れてるのに・・・」
と、いいつつ、走った。
宿屋に着いた頃にはもうヘトヘトだった。
そして夜、裕を上乃助たちが泊まる部屋に呼び出し、上乃助たち3人は酒を飲みつつ、裕は盗賊団の話をし始めた。
次回、温泉街の異変‐後編‐