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降嫁した姫の物語  作者:
怒りの姫
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-2-

「面を上げよ、黒虎将軍」


翡翠の髪を垂らした国王は、柔らかな笑みを浮かべて、玉座より見下ろす。



王の膝下が見える程度に顔をあげた将軍。はっきりって、玉座に座っている王からその顔をうかがうことはできない。


来度(こたび)、隣国より届いた救援の増援、さらにその増援においての数多くの敵の御首級(みしるし)の頂戴、その他にも数え切れぬほどの戦果、誠に見事である」


「ありがたきお言葉でございます、陛下」


「うむ」



眠い…………エメルが今日は朝から出かけているから補佐は期待できないし、はっきり言って毎朝会議する必要なんてあるのかな?


眠くて仕方がない低血圧型の国王、エジュエルは眼を閉じないよう必死だった。


平時であれば妹が傍にいるという緊張からか、眠気など無いのだが(首が一回でもカクンッと上下しようものなら臣下の前でもお構いなしに鉄拳が降ってくる)今日は事情が違った。


おまけに普段より時間が長引いているからものっそ眠くなる。


昨日から妹の予定は分かっていたからまだましだが、これが急な外出となればまず会議の内容はとぎれとぎれ会話が分からなくなっていた。


前日に早めに寝たからまだこれで済んでいるのだ。


子供みたいとは言うな。



しかもまだこの深々と頭を下げている臣下へは言葉を送らなければならない。



「今回の褒美として、勲章と、そして師団長の職務をそなたに任せる。以後も国の為を思い、その力をふるってくれ」


「恐れながら陛下」



これで号令を下してやっと終われると、そう思っている時によりによって礼儀に凝り固まった男だと思っていた、今も頭を下げている臣下が言葉を返した。


早く部屋に帰って寝たい……昼まで寝たい…



「私は、恩賞も、勲章も、なにもいりませぬ。ただひとつ、叶えていただきたい願いがございます」



王の間近、両隣の両大臣が動揺した。


特に国防大臣は打ち合わせに無かった事をしゃべり始めたこの出来た部下を、決してこんな勝手な行動をとるような男では無かったのだが……


向かい側にいる国務大臣の視線が痛い。



「よい、何でも申してみよ」


「それでは…」



大臣二人、そして控えていた各省の長官たちもギョッと反応した。


もし無茶な要求でもされたらどうするつもりだ。



「私が望むことはただ一つ………………」




あー、何言ってるかもうよくわかんないや…適当に返事しとけばいいよね。


でもエメルが勲章と師団長職は必ず与えるように言われてたな、おまけで付けておこう。



まわりの臣下が青ざめているなか、すでに眠気が臨界点に達している王は、この後妹より最大級の怒りを買うかうとは、頭の端にすら浮かんでいなかった。



「あいわかった。そなたの願いを聞き届けよう。だが勲章と栄転は受け取ってくれ。我が妹からの発案でな」



「はは、お聞き願い誠にありがとうございます。未来の妻よりの褒美、確かに受け取りいたします」




眼が覚めた。ついでに頭も覚めた。



「うん?」



「我が願い、エメルエル・エムブラント・レミウス姫を妻にしたいという願い、感謝いたします。以後も、国の為、姫の為、そして王の為に、わが剣を奮いいたします」



エジュエル…


本名、エジュエマルス・エムブラント・レーゼウスは、両隣の大臣、更に朝議の席についている長官達、書記や警護員。


眼に見える範囲の者全てを見渡す。


皆一様に王を直視していた。



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