モンスター総合相談会社の日常
「俺たちには力が必要だ」
「なんですか、藪から棒に」
とあるあたたかい季節、二人で昼飯を食べている時。田舎の某モンスター総合相談会社にて。その責任者で三十代後半の男である俺が、従業員の二十代前半の女子へ、壮大なビジョンについて語ろうとしていた。
「大切な話なんだよ。とにかく聞いてくれよ」
「給料を上乗せしてくれるなら聞いてあげても良いですよ」
「ろくに従業員に給料を払えないような会社なので、それは無理な相談というやつだな……」
「冗談です。でも手短に話してくださいね。長話を聞くのは私嫌いだし、後の仕事時間をロスして残業したくないので」
「じゃあ端的に言うぞ。あのな……」
◇◆◇
「ウハウハするために収益を増やしたい。そこで効率的にたくさんの仕事を処理する必要がある。そのために従業員のスキルアップをすれば良い。すなわち力を必要としている……そのように考えたと?」
「そうだとも。盤石な理論だろ?」
「……盤石な理論かどうかはともかく。強引にスキルアップに逃げずに、今の私たちのスキルで満足してくれる需要に応えるのでも良いんじゃないですか? 無理に頑張るのは毒だと思いますよ」
「というわけで、スキルアップ研修の予定を組んだ。俺と君と他の従業員で某会社に行く。そこで彼らが生け捕りにしたモンスターと戦闘訓練をしつつ、その戦闘データを彼らに提供して報酬を受け取る、という形になる。いや、スキルアップもしつつ報酬も貰えるとはなんて美味しい話なんだ!」
「私の話を聞いてませんね……まぁ、良いんじゃないですか? 私は自分の諸事情が解決すれば良いので、その話を特に断る理由はありませんよ」
「だろ? では追々、研修に行くための荷物の準備をするように!」
「相手方が信頼できる会社であれば良いんですけどね」
こうして俺たちは戦闘訓練と戦闘データ提供の仕事とないし研修を請け負うことになった。
◇◆◇
ゴブリン、トロール、飛竜、スライム、コボルト、アンデッド……等々。
野球ドーム程の広さに仕切られた空間で、選り取り見取りなモンスターが個別の檻の中に押し込められている。
戦闘能力やレベルが低い順にモンスターを解放していき、それを一体ずつ倒していくという段取りだった。
「よくもまあ、こんなにモンスターを集めて……。その上、血に飢えて好戦的になっている。いまにも檻から飛び出そうだ」
俺は若干戦慄していた。
「そんなにビビるなって社長。こんなモンスターなんて、僕の筋肉で関節をバキボキにしてやるからさッ」
「下手なモンスターの所業よりそれはむごいかもしれないな……」
俺の会社の二十代の男性の脳筋格闘家タンクな従業員だった。
「――雑魚は任せた。オレは飛竜にだけ集中させてくれ」
「頼もしいボスキラーだな」
この眼鏡をクイッと押し上げ、檻の中の飛竜を一瞥して、自分の得物である大剣を砥石で磨くのは、三十代前半男性のデカブツ使いの従業員。
「私は安全地帯からヒールとバフとデバフを投げ続けるので、みんな安心してフルパワーで敵を殴ってきてください。グビグビ」
「陰湿な戦いになりそうだ。動けなくなるほどに、飲み過ぎるないでね」
このMPバフドリンクをがぶ飲みしている人は、何やら諸事情を抱えている、以前一緒に俺の会社で昼食を摂った二十代前半のバッファー兼ヒーラーの女子の従業員。
「それではモンスターの檻を解放します」
ガラス張りのコントロールルームにいる相手方のオペレーターがアナウンスした。
「君たち。相手を倒すときは、できるだけ敵の亡骸の形状を維持しといてくれよ?」
従業員たちは肩をすくめたように応える。まぁそのリアクションにも無理はない。
なんていったって俺の能力は――――
◇◆◇
「敵の亡骸を集めて合成! そして、撃ち出す!」
さきほど倒されたゴブリンの頭蓋やトロールの骨や血が圧縮され、高速で飛竜に撃ち出される。
命中。
飛竜は雄叫びをあげて怯む。
「デカブツ君、今だ!」
「おう! どりゃあああ!!」
隙の生まれた飛竜の脳天に、大剣使いの彼が致命の一撃を喰らわせる。
飛竜は倒れた。
「君たち。敵の亡骸は可能な限り回収していくように。後で俺の弾丸として利用したり、戦利品として業者に売り渡すからね。いや、スキルアップとそのデータ提供することで報酬も貰いつつ、戦利品まで自由持ち帰って良いとは、相手方は太っ腹だよな!」
「うぇ。いつもの社長のやつだ……ばっちぃしくせぇから嫌なんだよな……」
「今回は高品質な消臭剤と防腐剤を用意したから大丈夫!」
「趣味が悪い」
「……なんというか、社長の能力はむごいですね……モンスターの死体を操作して攻撃するなんて。それに、ただモンスターの死体を操るんじゃなくて、死体同士を合成して、殺傷能力を高めて、自分の武器のように利用するとは。それにしても亡骸を利用するために、モンスターを倒すときに過度に破損させないように戦うのは、毎度のことながら難しいですね。バフやデバフの量に調整が求められますから」
俺、格闘家、大剣使い、ヒーラー兼バッファー。やや、てんでんばらばらのような感じだった。
「戦闘データ提供にご協力していただき、誠にありがとうございました。ご縁がありましたら、またご協力ください」
俺たちは相手方のその言葉を聞いて自分たちの帰路につくのだった。
◇◆◇
後日。
例によって昼飯時。俺と女性従業員。
「言うの忘れてました。裏を取りましたが、あの会社は私たちの脅威になるような存在ではなさそうでしたよ。今のところは」
「何? いきなり。また人様の内部データに勝手に侵入したの? 行儀が悪いよ」
「いや、私が調べなければ、詐欺られていた可能性だってあったんですよ? そしられる言われはありません。むしろ感謝していただきたいぐらいですね」
「まあまあ。そうなった時は、君たちに何とかしてもらうから大丈夫」
「自分の会社の失敗ですよ。そういう問題は社長のあなたが責任取るべきなのでは? 従業員に依存的になる社長ってダサいですよ」
「ごもっともだなぁ」
「適当に誤魔化そうとしてませんか……とりあえず、また彼らに協力する時は、不審な動向がないか潜入しておきますね。彼らがまだ完全に信用できる組織だと断定できた訳ではないので……あと、今回の潜入分のお給料を上乗せしておいてくださいね」
「今回の戦利品のゴブリンの骨で良い?」
「遠慮しておきます」
今日もうだうだと俺たちは仕事をこなすのだった。
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