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第十七章『新しい仲間』

 幸華がカフェを卒業してから数週間が経ち、もふもふカフェの中には少しだけ寂しさが残っていた。スタッフたちはそれぞれがカフェ業務を補い合いながら、幸華がいないことに少しずつ慣れ始めていたが、誰もがふとした瞬間に彼女の笑顔を思い出していた。

「やっぱり、幸華がいないと整理が大変ですね……」将之が棚の上に無造作に積まれた備品を見て苦笑する。

「そうだな。幸華の几帳面さが恋しいよ。」広孝が肩をすくめながら同意する。

「でも、彼女は新しい夢に向かって進んでいるんだから、俺たちも負けてられない。」

 その時、カウンターでメニューを書き直していた美優香が、ふと笑顔を見せた。

「実は、今日新しいスタッフが来るんです。」

「え?そうなんですか?」将之が驚くと、美優香は頷いた。

「幸華が卒業することを知って、動物カフェで働きたいという方が応募してくれたんです。とても前向きで素敵な方でしたよ。」

「どんな人なんだろう……」味夏が興味津々に耳を傾ける。

 その時、カフェのドアが静かに開き、一人の女性が入ってきた。長い黒髪を一つに束ね、爽やかな笑顔を浮かべている。少し緊張している様子だが、凛とした立ち姿が印象的だった。

「はじめまして。今日からお世話になります、白井葵しらい あおいです。」

 その丁寧な挨拶に、スタッフたちが自然と笑顔になった。美優香が優しく迎える。

「葵さん、今日はよろしくお願いしますね。」

「よろしくお願いします!」葵は元気よく頭を下げた。

 将之が自己紹介をしようとしたとき、ルカが葵に興味津々で近づいていった。葵はしゃがんで、ルカにそっと手を差し出す。

「可愛いですね……初めまして、ルカちゃん。」

 葵の声がとても優しく、ルカもすぐに懐いて甘えた声を出した。

「おお、ルカがすぐに懐くなんて珍しいな。」広孝が感心していると、涼楓が冷静に観察しながらポツリと言った。

「動物の扱いが上手い。安心させる技術を知っているのかも。」

「実は、前職はペットショップで働いていました。動物たちの世話をするのが大好きで、このカフェの評判を聞いて応募したんです。」葵がそう説明すると、スタッフたちは納得したように頷いた。

「なるほど、即戦力ですね。助かります。」佑佳が少し安堵した表情で言う。

「葵さん、動物たちのことは任せても大丈夫そうですね。」将之もほっとした。

 その後、カフェの業務を一緒にこなしてみると、葵はすぐに仕事を覚え、動物たちのケアも手際が良かった。モルモットのブラッシングをしながら、ふと笑顔でつぶやく。

「動物って、素直で可愛いですよね。私もたくさんの動物と一緒に過ごせるのが嬉しいです。」

 その自然体な言葉に、カフェの空気がさらに和やかになる。味夏も興味津々に話しかけた。

「葵さん、動物に関して何か特技とかありますか?」

「そうですね……動物の気持ちを読むのが得意かもしれません。表情や仕草から、今どう感じているかを考えるのが好きなんです。」

「すごい!それってまさに動物カフェ向きですね。」味夏が目を輝かせる。

 夕方、少しだけカフェが落ち着いた時、将之がふと声をかけた。

「葵さん、今日はどうでしたか?初日で緊張したでしょう。」

「はい、少し緊張しました。でも、みなさん優しくて、すぐに馴染めた気がします。動物たちも、とても穏やかで可愛いですね。」

「ここは、動物たちの癒しがテーマですからね。葵さんが来てくれて、カフェがさらに明るくなりましたよ。」

「ありがとうございます。私も早く役に立てるように頑張ります。」

 その時、美優香がカウンターから微笑みながら話しかけた。

「葵さんが来てくれて、本当に嬉しいです。カフェの仲間が増えると、動物たちも安心するんですよ。」

「そうなんですね……じゃあ、私ももっと頑張らないと!」

 葵が前向きに話す姿を見て、将之は自然と笑顔になった。幸華が卒業して生まれた空白を、葵が少しずつ埋めてくれるような気がしていた。

 夜、カフェが閉店するとき、葵がふと外を眺めながらつぶやいた。

「春の風って気持ちいいですね。動物たちも喜んでいるみたいです。」

 その言葉に、将之は頷きながら思った。新しい風が吹き込むことで、カフェもまた成長していくのだと。葵がここに加わったことで、もふもふカフェはさらに暖かい場所になっていく気がした。

「これからよろしくお願いしますね、葵さん。」

「はい、頑張ります!」

 春の空気に包まれながら、新しい仲間と共にカフェの未来を描き、将之は胸の中に希望を抱いた。

(終)



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