【恥ずかしい日】
時間の感覚が曖昧だ。だが、何日か経った頃、周りの言葉や状況が分かるようになってきた。
「ごめんね。私のかわいい坊や。あまりおっぱい出ないねぇ…」
この綺麗な女の人は、新しい俺の母さんだ。マリーと言うらしい。顔の整った綺麗な人だが、ブロンド髪はぼさぼさで、身なりもボロボロだ。でも深く深く澄んだ青い瞳が優しくて、そして綺麗だった。
「無理もないよマリー。食べるものが少ないんだから…それにしてもローアルは元気だねぇ。この子もミルクを飲めてないのに。」
この初老の女の人、もといばばあはレベッカ。俺のケツをシバき上げた人物だ。産婆さんらしい。
「ローちゃんは強い子なのよねー。」マリーは優しい声色で俺を包み込む。
たしかに腹は減っている。だが意外と何とかなっている。ある日に気づいたことなのだが、生まれたときから見えている空間を漂う様々な光。これを食べる? と空腹感が和らぐのだ。最初はパクパクと漂ってきた光を食べていたのだが、こう身体を空っぽにする感じに集中すると光は俺の身体に集まり吸収することができた。
マリーや他の人にはこの光は見えていないのだろう。そもそも光を吸収して生き長らえるなど、塵や芥を主食にする仙人でもあるまいに。人間離れしすぎている。俺は恥ずかしながら母の乳を吸いながらそんなことを考えていた。