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Just-Ice ~明星注ぐ理想郷にて~  作者: 福ノ音のすたる
第9章 ~魔導師と侍、天使と堕天使~
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154.王都動乱 **

 それが偶然か、はたまた運命の導きだったのかは分からない。それでもフェイバルは、ただ真実をロベリアへ告げた。

 「昨日のことだ。俺は雅鳳(がほう)組の連中と接触した」

突然の告白に彼女の返答は一時遅れる。

 「……それってほんと? 王都で?」

 「ああ。そいつらの場所には心当たりがある。連中の拘束と、本部への急行。どっちが優先事項だ?」

 「前者ね。騎士を寄越すから、連中の身柄を拘束次第、すぐに連絡を頂戴」

 「了解した」

 フェイバルは通信を終了する。そして彼は、続けざまに玲奈とヴァレンへ指示した。

 「聞いての通りだ。まず向かうべきは、あいつらの宿。昨日は仲良しやっちまったが、もしも抵抗したら容赦するな」

玲奈は黙って頷く。ただしヴァレンは、どこか動揺を隠せない様子だった。




 リオとメイの宿はギルドから直ぐ近く。ゆえにフェイバル宅からも、そう距離は離れていない。三人の魔導師は混乱する街を駆け抜け、すぐに現場へと到着した。

 王都全土にサイレンが鳴り響いたこともあり、宿の周囲は騒然とした雰囲気が漂う。ただし自治区・ミヤビによる宣戦布告の旨はいまだ公に発信されておらず、よってリオとメイは生まれ故郷の反逆など知る由も無かった。

 宿の扉を勢いよく開けたフェイバルは、宿の主人らしき人間を探しだす。広間には取り乱した宿泊客が多くおり、それらの人影が目的の人間を覆い隠した。ただそんな最中(さなか)でもフェイバルの観察眼は凄まじく、彼はある一角に、困惑した客をなだめる中年の男の姿を見る。根拠は無くともそれが宿の主人であると悟ると、フェイバルは客を押しのけて主人らしき男へと迫った。

 「――おい、ここにミヤビの人間が泊まってるだろ。奴らはどうした!?」

 「か、彼らはまだ部屋に……」

 「どこの部屋だ!?」

 「に、二階の隅の……」

そこまで聞いたフェイバルは、もう階段へと駆けだす。玲奈とヴァレンも、必死にそれへと続いた。




 目的の部屋の前に到着すれば、フェイバルは躊躇無く扉を蹴破る。玲奈はあまりにも手荒な男に困惑したが、直ぐに事態の重大さを自らへと言い聞かせ、強引に自身を納得させる。そして彼女もヴァレンと共に、懐から魔法銃を取り出した。

 第一声、フェイバルは強い言葉を選ぶ。

 「……動くな。余所見もするな。お前らの行動次第では、殺すことになる」

本来の目的は拘束である為、殺害の示唆がブラフであることを知る玲奈は、あえて冷静に聞き流す。しかし事情を知らないリオとメイは、当然ながら困惑した。

 リオは事の子細を伺う。

 「ま、待て! 一体何が起こっとる!? さっきのサイレンは何じゃ!?」

フェイバルは冷酷に言い放った。

 「込み入った話は後だ。とりあえず腰から剣外せ」

メイはその一言へ怒りを露わにする。男は右手を太刀の柄へ近付けて吠えた。

 「刀を差し出せだと? お前は侍を侮辱するのか?」

フェイバルは魔法陣を展開し、冷静に警告する。

 「黙れ。剣を握るな。手ェ離せ」

場は一触即発。それでもリオは咄嗟にメイとフェイバルの間へと割って入る。苦悶の表情を浮かべながらも、どうにか妥協点を探った。

 「……わ、分かった。刀は一度預ける」

その言葉を聞いたメイはリオを叱責するが、リオはそれを無視した。

 メイの顔は、いまだ浮かばれない。その一方で、リオは率先して腰から二本の刀を外した。メイは耐えかねてフェイバルを睨むが、リオは冷静にそれをなだめる。

 「メイ、刀を外せ。こりゃ副長であるわしの命令じゃ」




 数分もすれば、部屋には数名の騎士が到着した。騎士たちは二人の刀を押収し、そのまま身柄を拘束する。錠や枷こそ無いものの、両脇を掴まれ身動きを封じられた二人は、さながら罪人の如き扱いだった。

 そんな最中(さなか)、フェイバルは騎士へと尋ねる。

 「戒厳令の内容、外だともうぼちぼち噂になってんのか?」

 「……ええ。早くも号外が広まっています」

 「そうか」

フェイバルは、サムライという生き物から刀を奪う去るということがいかほど侮辱的な行為か、心のどこかで理解出来ていた。だからこそ彼は、自らの口をもってしてその全容を二人へと明かす。

 「おいお前ら。戒厳令の内容は、自治区・ミヤビからの宣戦布告だ。俺たちの敵は雅鳳(がほう)組。お前らだよ」

そこで遂にリオは、激しく取り乱す。

 「何じゃと!? ま、待て! そんなことがあるはず……!」

男はその組織の二番手である副長の座に位置するのだから、それは至極真っ当な反応。それでもフェイバルは粛々と言い放つ。

 「事実だ。ミヤビはギノバスへと挑戦した」

そのときリオは、必然的に雅鳳(がほう)組組長の名を口にした。

 「……アズマか? でもなぜ……なぜだ!? クソ……どうして……」

リオの零した人の名を知らないフェイバルは尋ねる。

 「アズマってのが、お前んとこの大将の名前か?」

 「……雅鳳(がほう)組の組長だ。確かに奴はギノバスに反感を持っておった……しかしだからと言って……」

そのとき騎士の一人が会話を遮った。

 「恒帝殿、お言葉ですが、まずは騎士団本部へ」

 「……ああ、そうだった」

玲奈はフェイバルへと呼び掛ける。

 「車、到着しました。行きましょう! ヴァレンちゃんも!」

No.154 音響魔法具


魔力を元に音声を発する魔法具。王都では全域にわたって配備済み。

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