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Just-Ice ~明星注ぐ理想郷にて~  作者: 福ノ音のすたる
第8章 ~門を開き、その先の魔道へ~
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135.音の都に生まれた男 **

 玲奈はトファイルに解説を求めた。

 「ねえ!? あの子の魔法って何なんです!? 見えないのに訳分からん!!」

こうして魔法戦闘を蚊帳の外から見るのはどこか新鮮で、玲奈はついつい興奮してしまう。トファイルはそんな彼女を微笑ましく思いつつも、どこかもったいぶって返答した。

 「あれを初見で見抜ける魔導師は、そうも居ないだろうねぇ」

ドニーは特に考えもせず口にする。

 「諜報魔法じゃねーの? 目に見えない魔法陣で、空に浮かぶナミアスを叩き落とした。なかなかの遠隔魔法陣だけど、理論上は可能だ」

 「いーや違うね」

 「ふぁ? 魔法陣すら見えないのに、他にどんな手があるってんだよ」

 「固定観念に囚われてはいけない。確かに諜報魔法は魔法陣が無色透明だが、他人の魔法陣が自分のすぐ傍に展開されれば、さすがに自分とは違う魔力を感知してすぐに回避できる」

 「……なら、何かの発現魔法か?」

 「残念。彼女の魔法は――」




 「――変化魔法。付加魔法に属し、強化魔法を対人系の付加魔法とするのなら、変化魔法は対物系の付加魔法」

 ナミアスは答えへと辿り着いた。戦闘において頭が切れるのも、彼の優れた武器。ロコは少しだけ驚いた顔を見せる。

 「……正解。だけど、そういうのは声に出さないほうがいいと思います」

忠告も束の間、ロコはまた攻撃を仕掛ける。魔法杖を振り下ろせば、また目に見えない間合いを持った鈍器が、男の脳天を狙った。

 ナミアスは回避しながらも、得意気に推理をひけらかす。

 「空気に硬度及び重量を付与した……ってとこか。そして硬質化した空気の塊を握った魔法杖の先端に連結させることで、透明な長物の武器を作り出したってわけね」

 「……正解かどうかは教えてあげませんよ」

ロコは種を探られた杖の魔法を解除し、再び近接戦へ持ち込むべく接近を開始した。ナミアスは咄嗟に速射を繰り出すも、それは颯爽と回避される。ロコは速度を緩めず、男への接近を続けた。

 ナミアスはすぐさま次の手段へと出る。

 「風魔法・飛行(フライ)――!」

男は銃の無力を悟り、右腕を前方へ突き出した。その魔法は己を飛行させるものではなく、目の前に強力な上昇気流を生む代物。ロコは為す術無く、空へと舞い上げられた。

 空中に漂ってしまえば、それはもはや無防備な的。回避の選択肢は奪われ、防御に徹することしかできない。ただそれは、変化魔法を持たない魔導師の話である。

 ロコは変化魔法で空気の一層を硬質化させた。束の間、そこに生まれるのは目に見えぬ足場。ナミアスから再び魔法弾が放たれるものの、硬質化された空気の床はそれを易々と阻んだ。




 「うおおおお! ありゃパンツ見えるぞ!! スカート履いてくれてありがとう!!」

 ドニーはテーブルに掌を叩きつけて立ち上がった。ヴァレンは緊張感皆無のドニーを叩きのめす。ダイトはそれを特に気にせず、ふとトファイルへと尋ねた。

 「変化魔法……ですか。やはり珍しい部類の魔法なんですか?」

 「そうだね。あそこまで使いこなす魔導師は久しぶりたよ。発現魔法のように無から物体を生み出すことはできなくとも、周囲に存在する地面や空気を硬質化させて威力を創り出す。素晴らしい応用力だ」

 「……王都にこんな魔導師が居たなんて」

 「なーに。彼女はまだこんなものじゃあないだろうよ」




 無造作な乱射は得策ではない。ナミアスは射撃を中止した。ロコは空気の層から飛び降りると、着地点の地面を変化魔法で軟化させ、安全かつ華麗に着地する。二人はそこでまた向かい合った。

 仕切り直し、そんな雰囲気ではありながらも、観戦者の多くはロコに軍配を見る。ナミアスもまた、戦闘の主導権を奪われている事実を受け止めた。

 そして男は、ある決断を迫られる。

 「……一筋縄でいく相手なんていねーとは思ってたけど、まさかの一戦目でこれかよ」

 「またお喋りですか。さっさと終わらせますよ」

 「生憎お喋りが好きなものでね。会話とはすなわちジャムセッション。ウィザーデンでは常識だ」

 「どうでもいいです」

そしてロコは一歩を踏み出す。執拗に近接戦を迫り続けることが、彼女の見た勝ち筋だった。

 それでもナミアスはこの期に及んで会話を止めない。

 「……荘厳な教会音楽。道端で銭稼ぎをする、しがない音楽家。風の音と人の喧騒。全てが同じ音楽」

突拍子も無い言葉の羅列。ロコはそんな男の不可解な論理を気にも留めず、ついに駆け出した。

 そのときナミアスは囁く。 

 「……その街は、ただのノイズでさえも許容する」

ロコが駆け出す瞬間を見計らい、ナミアスは魔法陣を展開した。淡い青に発色するそれは、風魔法のものではない。

 「音魔法・放射(ラディエート)……!」

刹那、魔法陣から直線上に放たれたのは強烈な大音波。名の通り音速で迫るそれに、ロコは生身で晒された。

 破裂した鼓膜からは血が噴き出す。その意表を突いた攻撃に為す術は無い。ロコは耳を抑えたが、既に時は満ちていた。

 放たれたのはたった一発の魔法弾。もはやロコにそれを回避する手立ては無い。そしてそのたった一発が、戦闘の流れを転覆させた。

No.135 音魔法


音源を生み出す発現魔法。魔法陣は淡い青色。

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