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Just-Ice ~明星注ぐ理想郷にて~  作者: 福ノ音のすたる
第8章 ~門を開き、その先の魔道へ~
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133.集いし三人の弟子 **

 翌日。玲奈はかつての生活を取り戻すべくギルド書庫へと向かう、はずだった。

 今日のギルド・ギノバス周辺は妙に騒がしい。その感じ取ったささやかな違和感は、まさしく大正解だった。例の魔道四天門なる催しは、どうやらギルド・ギノバスで行われるらしい。

 「……マ?」

 そしてそれに伴い、ギルド書庫は臨時休業。このまま帰るのも虚しいので、玲奈の足は必然的にギルドへと向いた。

 会場となるのはギルド裏の広大な庭。以前訪れたときは相当な荒れ地だったが、今は見栄を張ったように整備されている。

 会場は既に人でごった返していた。恐らくは皆がギルド魔導師で、王都の外からやって来たもの多いだろう。彼らは次なる国選魔導師を一目見ようと集ったのだ。

 そしてそんな荒くれ者の集会場には、当然見知った顔のギルド魔導師も居合わせる。遠くから手を振ってくれたのはヴァレンだった。

 「レーナさーん! こっちこっち!!」




 ギルド食堂から引っ張っり出されたテーブル席が太陽の下に整然と並ぶなか、その一つを陣取っていたのはダイト=アダマンスティア。そしてもう一人、ギルドマスター・トファイル=プラズマン。

 「……おやおや、レーナ君じゃないか。体、もう治ったみたいだね」

 「え、ええマスター。にしても何です? このお祭りみたいな雰囲気。私はてっきり、もっと厳かでひっそりとした催しなのかと……」

 「つい数年前まではそうだったんだけど、いつの間にかこの有様だよ。まあ、楽しいし良いんじゃないかなぁ」

 「そ、そういうもんですか」

ダイトは苦笑いで呟いた。

 「皆さんよく集まりますよね……すぐ傍で魔法戦闘が始まるってことは、当然流れ弾が飛んできたりするかもしれないのに」

 「……え。聞いてないそんなこと。帰ろうかしら」

トファイルは手を横に振った。

 「大丈夫大丈夫。行われるのはあくまで模擬戦だし、金の卵を傷付けるわけにもいかないから、ちゃんと戦闘を止める役が居るのさ。ほら、あそこ」

指の先に居たのは、国選魔導師・ツィーニア=エクスグニル。ただ彼女は、遠目から見ても分かるくらいに不機嫌だ。

 「……刃天さん、なんかお怒りでは……?」

 「ツィーニア君、最近引っ張りだこなんだよ。本当はあの役目、フェイバルの仕事だったんだ。でも彼は今動けないし、私が直前で頼み込んだわけ」

 「そういえばツィーニアさんって王都マフィア掃討作戦にも参加してたし、めちゃハードワークですね……南無……」

 「でも、ファイバルだって相当だろう。実質的に国選依頼が二人の国選魔導師で回転してる点に、問題があってね……」

ヴァレンは席に腰を下ろしながら口を開く。

 「でも刃天さんしか居ないんですよね。国選魔導師に近い力を持つ者同士の戦闘を止める役なんて」

トファイルは頷いた。

 「そうそう。力及びそうな王国騎士団の師団長も決して実力は劣らないのだけど、なにぶん彼らは参戦者が推薦に足る実力かを見定める当事者な訳だから、そういう仕事は国選魔導師に流されるんだ」

ダイトは玲奈に囁く。

 「レーナさん、あれ、あれ。覚えてますか? あの人」

 「んーと、どれどれ」

忘れるはずも無かった。向かいの区切られた特別席に腰掛けるのは、王国騎士団第二師団長の大男。筋骨隆々の見た目をしておきながら妙に女性口調で語る変質者、と玲奈は記憶している。

 「うわ……」

そんな中、玲奈のすぐそばに腰掛ける男が一人。こちらもまた変質者としては劣らない、ドニー=マファドニアスである。

 「やあやあ諸君、ご機嫌麗しゅうて」

 「あれ、ドニーさん……?」

ダイトは玲奈が言いかけたことを代弁してくれた。

 「いいんですか? こんなとこに居て。だってドニーさん出場者ですよね?」

ドニーは人差し指を左右に振る。

 「いいかいダイトや。模擬戦は一日で一試合。俺の出番は明日からってこと」

ヴァレンは呑気に再会を喜んだ。

 「ド(にい)久しぶりです!」

 「おうヴァレンや、久しいな」

玲奈はツッコまざるを得ない。

 「何そのキモあだ名……」

トファイルは和気藹々とした様子を俯瞰しながら、どこか嬉しそうに呟いた。

 「三人の弟子が勢揃いとは、賑やかしくなってきたねぇ」

玲奈はその言葉を聞いて思い出す。そういえば玲奈が三人の弟子と一挙に顔を合わせるのは初めてのことだった。

 ドニーはご機嫌で語り出す。

 「にしても何よ。みんなして俺の晴れ舞台に立ち会ってくれんの? 明日以降も見に来るんだよな??」

ヴァレンは扱い慣れた様子で対応した。

 「晴れ舞台だなんて、そんな軽口叩いちゃって。他の三人だって相当な手練れなんですよきっと」

 「……そりゃーそうだろ多分。あんま知らねーけど。ましてや王都の外から来る奴なんて、名前すら聞いたこと無ーわ」

 「なら、今日はその敵情視察ですね。明日以降にばっちり生かしていきましょう」

そのときトファイルは、おもむろに懐中時計を確認する。

 「お、そろそろだね。始まるよ、魔道四天門の一日目が」

No.133 ギルドマスター


魔導師ギルドの運営を担う最高責任者。有事の際にはギルド魔導師を召集する権限を有している。

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