スキル(孤児育成)
「貴方のスキルは孤児育成です」
俺は子供の頃から冒険者、ひいてはその中でも強い者に与えられる称号、勇者に憧れていた。この世界はスキルによって人生が縛られる、そんな事はない。
例えばスキル(料理人)でも勇者になった人はいる。
なんでも包丁やナイフ、料理に使えるなら全ての物を操れる。それで勇者になった。
他にも魔法使いの称号、賢者にはスキル(花火師)
なんでも花火を爆弾のように使い、賢者となったらしい。このようにスキルの使いようで上を目指せる事ができる。
だが、俺のスキル(孤児育成)は戦闘には向いていないだろう、この世界で育成スキルは基本人に教える事に特化している、中には手本を見せるためスキルにより強化される人もいるようだが、基本的には教職や、市役所などの仕事に就く人がほとんどだ。
「孤児育成か、俺にはちょうどいいのかもしれないな」
俺はもともと孤児だった、捨てられていたところを今の親と呼ぶ存在、ゼパエルさん、彼に育てられた。彼はスキル(剣士)だったが魔物を討伐するのがあまり好きではなく、田舎に行こうとしたところ俺を見つけたらしい。
「ただいまー」
「おかえり、先に言っておくが俺はお前がどんなスキルでもお前の事は嫌いにならないからな!」
「あの心配しすぎだから、10年一緒にいてそんな事ぐらい分かってるから」
「タケル〜お前って奴は、お前って奴は、俺を泣かすのが上手すぎるだろ〜」
ゼパエルさんは涙目になりながら俺に抱きついてくる。彼はスキルの影響もあり体がゴツいので絵面は凄いことになっているだろう
「それで、スキルなんだけど」
「あ、ああ」
「孤児育成だってよ」
「孤児育成?初めて聞いたな、だけどスキルとしては名前の通りだろうな」
「で、でも俺はタケル、お前に1番合っていると思うぞ、お前が勇者を目指していたのも知っているが、お前は誰よりも優しい、そしてさっきも言った通り俺はお前を絶対見捨てたらしないからな!」
「分かった分かった、だからね一回離そうか体が…潰れる…」
「すまんすまんつい感極まってしまった」
「ところでタケル、お前これからどうするんだ?」
「うーん…スキル通り孤児院でも始めようかな」
「そうか……それじゃあこの家は寂しくなるな」
「え?いや俺この近くで始めようと思ってるんだけど?」
「いやお前この家から出てくって事は変わらないだろ?」
この人俺のこと好きすぎだろ
「いや……俺が孤児院作ればそこにいるのは俺の子供みたいな子達だ、 それにアンタは、お、お、オレの…オヤジならその子達は孫みたいな存在だろ、だから寂しくないだろ…」
「タ、タケル…お前って、お前って奴は…」
彼はそれからずっと泣いていたしかも、泣き止んだと思っていたらすぐに走り出し帰ってきた時には、背中に背負った特大の袋に沢山の子供用服や、小皿や大きい鍋などを買ってきていた。