♥ 厄日は続くよ何時までも
白い粉雪が空からチロチロと舞い落ちる中で、僕はとある歌を歌っていた。
早い話が今回、僕のバディになったアホなサンタクロースをモデルにした替え歌だ。
どんな歌詞か気になる?
ダメダメ、通報されちゃうから載せられないよ★
「 ──それ、誰の歌だい? 」
「 やあ、トナカイ4734号。
僕が担当してるサンタクロースの実話さ 」
「 へぇ……。
クリスマス過ぎに着いちゃったのかい? 」
「 あはは…。
そうなんだよねぇ…。
猛吹雪にハマっちゃうし、コンパスは故障しちゃうしで、大変だったよ。
挙げ句の果てには魔法の袋を落としちゃうし、見付けられないまま帰還する事になっちゃって…。
散々なクリスマスで参ったよ… 」
「 災難だったね…。
──で、トナカイ2875号、君はこんな所で何をしてるんだい? 」
「 サンタクロースの裁判が終わるのを待ってるのさ。
時間潰しに歌詞を考えて歌ってたんだよ 」
「 魔法の袋、行方知れずなのかい? 」
「 そうなんだよ。
一体何処にあるのやらさ…。
これからは魔法の袋に発信器を縫い付けとく必要があると思うね! 」
「 そうだね…。
──そうそう、聞いたかい?
トナカイ5559号の話! 」
「 5559号??
──あぁ、赤鼻のトナカイ?
彼奴がどうかしたのかい? 」
「 実は──── 」
僕はトナカイ2875号。
今年のクリスマスに僕のバティとなったアホなサンタクロースがやらかした大ポカの尻拭いをする為に、僕は今、人間界に来ている。
酷い話さ。
魔法の袋を紛失させたのはサンタクロースなのに、「 バティのトナカイも連帯責任だ! 」とかで、魔法の袋を探す羽目になったんだ。
トナカイの役目は、サンタクロースの指示に従って魔法の雪車を引いて夜空を走る事なんだけど……。
断じてサンタクロースの尻拭いをする為にバティを組んでるわけじゃない。
魔法の袋を見付けた後、絶対にサンタクロースを訴えてやるんだ!!
トナカイの姿で人間界を歩くわけには行かないから、人間の姿で魔法の袋を探す事になっている。
あの赤鼻のトナカイこと、トナカイ5559号が人間に姿を変える方法を研究していたなんてね!
然も、その研究の成果を知る為に、僕が実験台に抜擢されるなんてね!!
災難続きだよ!
厄日かなぁ……。
アホなサンタクロースがサンタクロースを解任されるか解任されないかは、僕が期限内に魔法の袋を探し出して持ち帰れるかに掛かっているらしい。
ぶっちゃけ、どうでもいいよ!
もう逸そ、解任されちゃえよ!!
──ハッ!
いけない、いけない。
魔法の袋を探さないとだ。
門外不出の魔法の袋が人間に悪用されてなければいいんだけど……。
トナカイ2875号、行っきまーーーーすっ!!!!
「 う〜〜〜ん……。
無いなぁ…。
魔法の袋の痕跡は確かに此処にあったみたいだけど……。
やっぱり誰かが拾って持ってたのかなぁ… 。
う〜〜〜ん……。
落とし物を拾ったら、交番へ届けるのが人間界のルールみたいだし、行ってみるかな〜〜 」
──という訳で、親切な人間が魔法の袋を届けてくれている事に期待して、交番を探す事にした。
交番を探していると街中で赤い頭巾を被った女の子がマッチを売っている。
へぇ〜〜人間界ってのは、こんな幼い女の子まで働かせるのか…。
あぁ〜〜あ……両手が真っ赤だし、寒そうだよ…。
歩いてる大人達は知らん顔か…。
出来る事ならマッチを1箱でも買ってあげたいけど、生憎と人間界のお金は持ってない。
僕も他の大人達と同様にマッチ売りの少女の前を通り過ぎた。
「 交番は何処かな??
──あっ、彼に聞いてみようかな?
おーい、君ぃ!
ちょっと道を聞きたいんだけど… 」
「 あ゛ぁ゛っ何だよ? 」
随分とガラの悪い…………狼…男??
「 えぇと……君は狼男なのかい?? 」
「 あ゛ぁ゛?!
見れば分かるだろが!
オレは獣狼族のガフナン様だ!
文句あんのかゴラァ!! 」
「 別に文句は無いよ。
僕は唯、道を聞きたいだけなんだ 」
「 道だぁ? 」
「 そうだよ。
交番って何処にあるかな?
僕のバディが、落として無くしてしまった物を探してるんだ。
“ さがしもの ” が交番に届けられてるかも知れないから── 」
「 はぁぁぁぁぁん??
落とし物だぁ?
『 交番に届けられてるかも 』だって?
アホかよ。
今時、そんな奴いねぇよ!
拾ったもんは拾った奴のもんだぜ。
馬鹿正直に交番に届ける奴なんて、いねぇんだよ! 」
「 嘘…だよね?
だって、拾い物は交番に届けるのが人間界のルールで── 」
「 …………あんなぁ、兄ちゃんよ?
田舎もん丸出しは止めとけや。
人間だけの世界はなくなったんだ。
今は人獣族,獣人族と共存共栄してる世界に変わってんだぜ。
人間だけのルールなんて何処にもねぇのさ! 」
「 そんな……。
じゃあ、誰かが拾った袋を猫ババしてるかも知れないのかい??
…………それは困るなぁ…。
見付け出して持ち帰らないと行けないのに…… 」
「 まぁ…どうしても “ さがしもの ” ってのを見付けたいなら、彼処に行くこったな 」
「 彼処?? 」
「 ワンワン探偵事務所に決まってんだろが! 」
「 ワンワン探偵…………。
其処に行けば、僕の “ さがしもの ” が見付かるのかい? 」
「 嗅覚が優れた獣人族が揃ってるからな 」
「 有り難う、ガフナンさん!
ワンワン探偵事務所へ行ってみるよ! 」
ガラと口調は悪いけれど、意外と親切な獣狼族のガフナンさんに御礼を行って、僕はワンワン探偵事務所を目指して走り出した。
──あっ、しまった!
肝心のワンワン探偵事務所の場所を聞くのを忘れちゃったよ!
………………頑張って探そう…。
人間界に来てから、探し物が増えちゃったよ…。
交番の場所を尋ねる為に獣狼族のガフナンさんに声を掛けたのは、人間に扮しているトナカイ2875号こと、イケてる好青年風の僕でっす☆
ガラと口調が悪いけど割りと親切だったガフナンさんから教えてもらったワンワン探偵事務所を探して早、3000里────。
はい、嘘吐きました。
未だ3時間しか経ってません。
ワンワン探偵事務所って……何処にあるんだろう??
魔法の袋を探す前にワンワン探偵事務所を探して見付けないといけないなんて、ついてないなぁ……。
道を尋ねても誰も「 ワンワン探偵事務所なんて知らない 」って言われるんだ。
…………もしかして、僕……ガフナンさんに騙されたのかな??