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《暗闇の咆哮 3》

ドライバーを集めて、無限のスタッフが説明を始めた。


「コースの下見とタイヤを温めるために、1本目は抑えて走る。

お互いに他車の癖を掴んでおいて、接触等無いようにお願いしたい」


スリックタイヤを履くシビックには、タイヤを温める時間は重要なのだろう。


おれ自身も、初めて走るルートなので下見は有り難い。


シビック、RX7、ガゼールの順にスタートした。


スタートするとすぐに、センターラインの無い、狭く曲がりくねった道になった。


シビックは意外な程ゆっくりと走る。


知らない道であるためと接触を防ぐために、おれは車間を開けて走行した。


ゆっくり過ぎてやる事がない。


しかし、後続のガゼールは違っていた。


左右に車体を振って蛇行している。


やかましい程の空吹かしをしている。


車間を詰めたり、開けたりと、落ち着かない運転をしている。


自己主張が強いらしい。


コーナー入り口では、おれのRX7のイン側に、無理矢理ガゼールのノーズを入れようとする。


接触ギリギリまで近づいて来るガゼールを、おれは暫く無視していた。


少しずつシビックの速度が上がっていく。


タイヤウォーマーを無限は用意していた。


だんだんタイヤが馴染んできたのだろう。


順調に下見は進んでいると思った時に、RX7にガゼールが追突した!


ミラーには、驚いている斉藤の顔が映っていた。


バンパープッシュではなく、調子に乗りすぎて追突したようだ。


そこまで下手くそか?


次からは下手に出るのかと思った矢先に、ガゼールが強引に割り込んで来る。


馬鹿なのかコイツは?


これ以上当てられても嫌だと思い、おれはガゼールに道を譲った。


前に出たガゼールは、さらに下品な走りを披露した。


これでは走り屋というより、暴走族に見える。


シビックがさらに速度を上げていく。


ガゼールが追いつけなくなった。


車間が開いていく。


ちょうどいい。


タイトコーナーでガゼールのインから一気に抜く。


続くコーナーを慣性ドリフトで曲がり、ガゼールを置き去りにした。


すぐにシビックにも追い付いた。


加速しようとするシビックに、おれはクラクションを鳴らして合図を送った。


後ろのガゼールが付いて来ない....と。


しょうがなく減速するシビックとRX7に、やっとガゼールが追い付いた。


ゴールの橋を渡り、Uターンしてスタート地点に戻った。


サイドターンで180度向きを変えて駐車するシビック。


さすがプロ。


上手いものだ。


アクセルターンで180度向きを変えて駐車するRX7。


おれだって出来るんだ。


何度も切り替えして180度向きを変えて駐車するガゼール。


一人だけカッコ悪い。


本当にコイツが群馬最速なのだろうか?


長野最速もあの程度だったから、こんなものなのか?

それと比べて栃木はレベルが高い。


いろは坂最速のKP61スターレットは、おれと8秒差しかなかった。


霧降高原道路最速の328GTBは、おそらく5秒程度。


塩原街道最速の黒い弾丸はルートが短い事もあり、せいぜい2、3秒差だ。


深山ダムでFZR1000を駆る真船は、おれに一番近い速度で走る。


那須ボルケーノハイウェイを仕切っていた広瀬とひろあきの2人は、5、6秒差だった。


全ておれが勝っているが、10秒の差は開かない。


長野最速と群馬最速の2人では、栃木の走り屋の中堅ってレベルだ。


しかも実名を挙げた3人の走り屋は、おれの高校の同級生だ。


真船は、おれと連んで一緒に走っていた仲だ。


おれの世代は、レベルの高い連中が多かったようだ。


おれは車を降りてガゼールのドライバー、斉藤の前に立った。


もちろん全力でぶっ飛ばした。


おれのRX7に追突した分のお返しだった。


「さっきの下見で問題が発覚した」


おれが周囲の人達に声を掛けた。


「どういう問題だ?」


「ガゼールが、おれ達の走りに着いて来られない。

これでは撮影にならないと思う」


周囲が騒つく中、ガゼールの斉藤が声を荒げた。


「そんな事はない。

おれは2台に着いて行けてる」


固定カメラを積み換える時間はない。


どうする?


「カメラカーはガゼールで行きます」


しげのが決定した。


周囲が沈黙する。


頑張れよガゼール。


そして、2本目の準備に入った。


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