セーラー服が着たかったという話
「小説家になろう」を初めて利用しての小説投稿になります。
ずっと書きたかった内容をひたすらメモに打ち込んでいたら、いつの間にか小説になっていたので投稿するに至りました。
宜しければお時間のある時にでも読んでみてください。
私の想いが詰まっています。
「ねぇ、それどうなってるの?」
「は?」
私の唐突な質問に、妹の海那は素っ頓狂な声を出した。
「どうなってる…って、制服のこと?」
帰宅してきて、丁度スカーフを外そうとしている妹を捕まえたのは、些細な疑問からだった。
「そう。ほら、私達の中学はブレザーだったでしょ?んで、私は高校もブレザーだったから、セーラー服がどうなってるのか分かんないのよ。」
「どうって言われてもなぁ…」
突然そんな事言われても、と困ったような妹の反応は至極普通だろう。
めんどくさいと切り捨てられるだろうと、諦めてスマホに目を落とした私に、少ししてから答えが返ってきた。
「まず、セーラーカラー分かる?」
「へ?」
「ちょっと、聞いといて興味無くさないでくれる?」
「あぁごめん、まさか答えてくれるとは思わなかったから。…カラーって襟のことでしょ?その肩までかかってる部分のこと?」
「そうそう。んで、このスカーフはこのカラーの下を通して前で結ぶの。」
赤いスカーフがスルスルと音を立てて結ばれていく様子に、何とも心躍らされる。
「ほう、なるほど…!そこは分かった。」
「そんで、ここ…左の脇の所にチャックがあるのよ。」
「そこ開けて、ガバッて着るの?」
「うん、頭から被る。ちなみに、カラーの真ん中のこの部分は胸当てっていうの。」
「刺繍入ってるね。校章?」
「うん…何だっけなこれ…桐?だったかな。確か、学校を作った時に桐の木がその辺に生えてただとかそんな理由だった気がする。……で、この胸当ての内側にボタンが着いてるから、それを留めて、脇のチャック閉めて着替え完了。脱ぐ時はその逆ね。」
「へぇ…」
思ったよりも、結構めんどくさいんだなと思った。
勝手に憧れるだけで居たから分からなかったけど、意外と着替えるのが大変そうだということも知ったし、セーラー服って面白い。
「そう言えばさ、私の友達が高校の時にセーラー服だったんだけど、海那の所とは違って、スカーフじゃなくてリボンだったんだよね。あれも可愛いよね~!」
「あー、リボンタイプは可愛いよね~私立に多いイメージだけど。」
「まぁ、それはあくまでもイメージだけどね。…他にもいろいろ種類あるのかな?」
「調べてみる?何か私も気になって来たわ。」
2人でソファに座り、それぞれのスマホで検索を始めた。
そして、2人で調べた内容を構造やタイプ別に分けてみたところ、こんな結果になった。
【襟】
・関東襟
襟は肩幅より狭く、胸当てがある。(無いものもある)
白線などのラインは曲線(直線のものもあ る)で、バストラインより少し上でラインが繋がる。
東日本に多く、最も一般的な襟の形。
・札幌襟
襟は肩幅まであり、胸当てが無い。
ラインは曲線で、襟の下端は関東襟よりも上。
・関西襟
襟は肩幅まであり、胸当てがある。
ラインは直線で、左右のラインが繋がるのが関東襟より下であるため、襟のサイズは関東襟より大きい。
西日本に多く、襟の下端はバストラインより下。
・名古屋襟
襟は肩幅まであり、胸当てがある。
ラインは直線で、襟の下端は関西襟より下であるため、襟全体が大きい。
【装飾品】
・三角スカーフ
大きい三角形のスカーフで、襟の左右や背中から少し出し、アクセントとする。
そのまま結ぶものや、スカーフ留めに通すものもある。
・パータイ
帯状の長いスカーフで、襟や背中からは出ない。
・クロスタイ
ゴム部分を襟の下に通して、タイを前でクロスさせるもの。
クロスした部分にはボタンが着いており、それで留める。
・紐リボン
襟の下を通して、前で蝶々結びにする。
リボン幅は様々である。
・ネクタイ
大半はネクタイと襟の裏にスナップボタンが着いており、それで留める。
ネクタイの形は様々で、端が斜めになっているものや台形のものもある。
・リボン
ネクタイと同様、大半は襟の裏にスナップボタンが着いており、それで留める。
一般的なリボンから蝶々型のものまで様々である。
・何もつけない
装飾品であるスカーフやリボンが無い場合がある。
例)武庫川女子大学附属中学校・高等学校の夏服
・襟カバー
セーラー服の襟にカバーを付けて、襟カバーを取り替えられるようにすることで、襟が汚れてもセーラー服自体を洗わなくて済むようになっている。
最近は少なくなってきている。
【着用方法による分類】
・前開き型
前に着いているファスナーやボタンを開けて着脱する。
近年、防犯などの観点から、前開き型を採用する学校は少なくなってきている。
・被り型(横開き型)
脇下にあるファスナーを開けて被るように着る。
正面にファスナーが無い分、正面がスッキリとしたものになる。
【後ろ襟の種類】
・丸襟
襟に伴い、ラインも曲線である。
・ジャバラ線と平線
筒状の線(襟の下端と垂直になる角の箇所で線が一回転し、襟の下端と平行な線となる)を縫い付けたジャバラ線と、テープ状の線を縫い付けた平線がある。
(平線で、襟の角部分でクロスするものもある)
・交わらない
前から来た線が後ろ襟で交わらず、垂直な線のままのもの
【ラインの数】
・1本線
・2本線
・3本線
・4本線
・ノーライン
【その他のセーラー服】
・ワンピース型セーラー服
・セーラーブレザー
ブレザー自体がセーラー服の形をしているもの。
ブラウスを着用し、一般的なブレザーと同じく上に羽織る。
スカーフやネクタイをそのセーラーブレザーに着けるものが多い。
胸当てが無い(襟の下端が胸より下の)セーラーブレザーの場合は、下のブラウスにスカーフやネクタイを着ける。
【プリーツスカートの種類】
・車ひだ(送りひだ)
一方向に流れていて、上から見ると反時計回りになっている。公立の高校に多い。
・前ひだ(前箱ひだ)
車ひだに似ているが、左右対称に真ん中から広がっている。公立の高校に多い。
・箱ひだ(ボックスプリーツ)
ひだの部分が箱状になっている。
私立の高校に多い。
・アコーディオン・プリーツ
楽器のアコーディオンのような、蛇腹のプリーツ。
直線で立体的、裏表の区別がない。
更に幅の狭いものは「クリスタル・プリーツ」、幅の広いものは「アンブレラ・プリーツ」という。
「いやぁ…いっぱい種類あるんだね〜」
「私も普段着てるから気にしたこと無かったけど、結構面白いね。」
「そうだよね。…やっぱり憧れるわ~セーラー服。人生で一回は着てみたかったなぁ…今後の夢だわ…もうコスプレにしかならないけど…。」
大学生になって3年経つ私にとって、制服は最早懐かしいものになっていて、今後着る機会のない服であるからこそ、更に憧れが強くなる。
「お姉ちゃん、着てみる?」
「へ?」
いつの間にか部屋着に着替えていた妹が、手に持ったセーラー服を差し出しながらそう言った。
え?いいの?着ていいの?こんなに簡単に私の夢叶っちゃっていいの?
「私の脱ぎたてホヤホヤで良ければだけど。」
「言い方っ!」
と言いつつ、その脱ぎたてホヤホヤのセーラー服を受け取り、さっき教えてもらった着方でセーラー服に袖を通していく。
「うわぁ…ワクワクする…」
「そんなに?お姉ちゃん拗らせてるね。」
「うるさいな、憧れなんだからそりゃ拗らせもするでしょ!?」
普通の洋服とは少し違う素材に、学生にしか許されないものであるということに、やはりテンションが上がる。
それに加えて、謎の背徳感さえある。
そして、ちょっぴり罪悪感…。
「どうよ?憧れのセーラー服を着た感想は?」
口角をこれでもかと挙げて尋ねてくる。
「ニヤニヤしないでよ…まぁ、その…嬉しい。」
「うん、嬉しそうだもん。」
「あとね、やっぱり恥ずかしい。コスプレ感が強くなる…。」
「そうかな?まぁ茶髪で化粧してるから浮いてる感はあるけど、そこまでコスプレ感はないよ?まだ行けんじゃない?」
「いや…気持ちがしんどいわ…」
とはいえ、やっぱりこの高揚感に勝るものはなくて、とりあえず写真に収めようと自撮りを始めた。
「いやいやいやいや、それでTwitterとかインスタとかにあげないでよ?」
「あげるわけないじゃん!恥ずかしいわ!」
「じゃあ何、記念?だったら私が撮ってあげるよ。自撮りより全体写した方が後で見て分かりやすくない?」
そんな妹の計らいによって撮影された写真は、今もたまに見返したりしている。
当時妹はまだ行けると言ってくれたけど、今見ればキツイ。いや、21歳だったけど十分キツいわ。
今やもう制服はおろかスーツを着ることすらなくなったけど、妹に借りてセーラー服を着たあの日は、たぶん一生私の中で五本の指に入る程のキラキラとした思い出だ。
「ねぇお母さん、聞いてる?」
「あぁごめん、何?」
「これどうやって着たら良いの?私、この間までブレザーだったから分かんない。」
「これね、脇のところにファスナーあるでしょ。これ開けて、頭から被るのよ。」
「へぇ…それで、このスカーフを襟の下通すんだ?」
「そうそう。」
まるで自分が学生時代、セーラー服を着ていたかのように説明する私。
そう、明日は娘の高校の入学式。
ささやかだけど、私の「中学はブレザーで高校はセーラー服」という夢を私の娘が叶えてくれた。
この子は、一生の内にブレザーとセーラーの2パターンの制服を着ることができるだなんて、なんとも贅沢者だ。
だけど、私が感じたあの、ワクワクやドキドキ、背徳感と罪悪感を抱えて妹のセーラー服を着た時の気持ちを、彼女は感じられないのか…と思うと、少し残念な気もする。
それでも、その分他のことに対する感性を磨いて欲しい。
自分の好きなこと、興味のあることをとことん追求して行く力を身につけて欲しい。
私がセーラー服に対してそう思ったように、この子にも楽しいと思えることを継続して欲しい。
その力が私から受け継がれてるといいなぁ…と思いながら、私はセーラー服を着た娘の姿を、しっかりと写真に収めた。
いかかでしたでしょうか。
私が高校生だった時(数年前ですが)以降、本当にタイトルの通りのことをずっと思っているんです。
それを、どうにか形にしたいなぁと思っていたので完成してホッとしています。
感想、ご意見等ございましたら、お気軽にどうぞ!
駄作をお読みいただきありがとうございました!