サイコパスな昔話 ③
むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日、おじいさんは殿様の命を受け、竹藪へ出掛ける事になりました。
「おじいさん、これを……。」
「うむ……。」
おばあさんは、ずしりと重い刀をおじいさんに手渡します。
「どうしても、おじいさんが行かないと駄目なのですか?誰か、若い者に任せれば良いのでは……?」
「誰もやらぬのから、儂におはちが回ってきたのだ。仕方あるまい……。」
おばあさんは、おじいさんの身を案じますが、止めることは出来ません。
「あやつは魔性……。若い者に任せた所で皆、やつの掌で踊らされるであろうな。」
おじいさんはゆっくりと扉へ向かいます。
そして、扉の方を向いたまま、おばあさんに声をかけます。
「儂が戻らなかったら……、いや、皆までいうまい……。では、ばあさん、行ってくる!!」
「おじいさん!!」
おじいさんは、勢い良く扉を開け出ていくと、竹藪へ駆けていきました。
竹藪に着いたおじいさんは、数多ある竹の中から、一本の竹の前に立ちます。その竹は、あまりにも美しく、神々しく輝いていました。おじいさんは刀に手を懸けると、こう言いました。
「……おぬしはやりすぎた……。今ここで成敗してくれる!!」
そして、竹に向かって一閃!!
「でぇーーい!!」
パッカーーーン!!!
竹は綺麗に斜めに斬れ、大きくしなると、そのまま地面に落ちます。
「い……、いない!!」
竹の中を確認したおじいさんは、驚きの表情を見せます。
「こ、これは……、変わり身!!」
急いで周りを確認するおじいさん。
すると、先ほど斬った竹の輝きが、隣の竹に移っているではありませんか!!
「ば、馬鹿な!!こんな珍妙なことが……!!」
驚きを隠せないおじいさん。急いで刀に手を懸けると、輝く竹の中から怪しい声がします。
「ほほほ……。わらわを討ち取ろうとは……、なかなかに笑えぬ冗談よのう……。」
輝く竹は自ら割れ、中から妖艶な女性が出て来ました。
「そなた、名は?」
「儂の名は、いや、止めておこう……。」
おじいさんは、再び刀に手を懸けます。
「おぬしは、男を喰いすぎた。神妙に成敗されい。」
「ほほほ!!おぬしにわらわは討ち取れぬわ!!」
今、おじいさんと竹女の一騎討ちが始まります!!
「どおおぉぉりゃぁーーーー!!!!」
竹女に向かって、横斬りを繰り出すおじいさん!!
しかし竹女は、刀をひらりとかわし、空に浮きます!!
周りの竹は一斉に斬られ、大きくしなります。
……しかし、竹は落ちて来ません。
竹女が空中で操っているのです!!
「ほほほ!!だから言うたではないか!!わらわは討ち取れぬと!!この竹藪はわらわの手足も同然!!討たれるのはおぬしのほうぞ!!」
竹女は竹という竹を抜き、おじいさんの周りに突き刺します!!
ガガガガガ!!
「おおおおおっ!!!!!」
身動きが取れなくなってしまったおじいさん。竹女はフワリと地面に降りると、ゆっくりとおじいさんに近づきます。
「どうやら、これまでのようじゃのぉ?」
「……………。」
その時です!!
シュルシュルシュル……。
「こ、これは!!」
竹女の足に縄が括られ、勢いそのままに、宙に浮くではありませんか!
そして、竹女は逆さ釣りになり、今度は竹女が身動きが取れなくなってしまいます!!
「誰が仕掛けたか知らんが、動物の罠を踏むとは……。運は儂に味方したようじゃのう……。」
形勢逆転をし、勝利を確信するおじいさん。
しかし、竹女は不適に笑います。
「ほほほ……。本当にそうかな?周りを良く見るがよい!!」
「なんじゃと!!」
周りを見るおじいさん。すると、何か、声が聞こえます。
竹女に逆らうものには死を!!
竹女に逆らうものには死を!!
竹女に逆らうものには死を!!
竹女に魅了された若い者が操られ、おじいさんの周りに集まって来ます。
「こ、これは……!!」
「さあ、どうするのじゃ?これでは手も足も出まい。」
おじいさんと竹女の間に張り詰めた空気が流れます。
「たけおんなぁーー!!」
「この、もうろくじじぃがぁーー!!」
「あなたー?食事の用意、手伝ってくれるー?」
突然、割って入ってくるピリピリした妻の声により、空想世界は幕を閉じる
「え……、今良いところ……。」
「いいから、こっち来て!!」
「は、はい……。」
夫は断ろうとするが、妻は無理やり台所へ連れ込む。
「あなた、何を考えてるの!!いつもいつも言ってるでしょ!!娘に変な事吹き込むなって!!何度言ったら分かるのよ!!」
夫を戒める妻。しかし、夫は平然とこう言った。
「よし、全部わかった!!」
「何が?」
不安でしかない妻。
「次の昔話を考えよう!!」
それを聞いた妻は一言。
「あなたが思っているほど、周りは面白いとは思って無いからね………?」
ごめんなさい、
あぁ、ごめんなさい、
ごめんなさい。