秘密結社LINE
俺はこの世界でカルロス・フィンチョンという身分を得た。父は金貸しであるファファヒコ・フィンチョン。一番上の兄がメルヒコ・フィンチョンで三番目の兄がヘルヒコ・フィンチョン。母ソプン・フィンチョンと二番目の兄トゥルヒコ・フィンチョンは故人だ。
フィンチョン家は村一番の金持ちで、なんでそんなちゃんとした家が俺みたいな得たいの知れない異世界生物(書き忘れていたが異世界生物の額には青い角がある。一センチくらいの小さいやつ。フランソワは熊なのであんま目立たなかったけど)を養子にしたのはちゃんと訳があって、特段善意とかではなく、金持ちらしい権力欲からだったのだろうけど、そこは人to人なので結果俺はフィンチョン家の人には受け入れてもらえて、結構可愛がられた。
可愛がられた話はともかく、フィンチョン家が俺を受け入れるメリットは何かっていうと、まあ異世界生物ネットワーク「LINE」ってのがこの世界にはあるわけなのよね。
「異世界生物ネットワークLINE!?いったいなんだいそれは、フランソワ?」
バンバラ村の屋敷でフランソワとお茶をしている。ここに来て翌日で、フランソワが森へ帰る前にいろいろとレクを受けることになった。
「異世界生物のフリーメイソンみたいなものだよ。カルロスは人の姿だからそうでもないけど、僕みたいに動物の姿だと普通に殺されたりしちゃうんだよね。」
「あー」
「だからお互い助け合うためにネットワークがあるのさ。歴史が古くて500年前からある組織なんだよ。リーダーは鷲のルシュド。この世界の最高齢の異世界生物で、12世紀のイスラム神学者で十字軍とも戦った男だ。この世界に来てから800年近くたってるみたいだね」
「うえっ!?寿命とかないの?」
「僕らの額にある青い角。これがある限り僕らは老いない」
「すげえな。でも、ということは取ると老いるんだ。取れるの、これ?」
「特殊な方法を使えば取れるみたい。取っちゃうと、こんなふうにコミュニケーションできなくなっちゃうけど。僕なんて熊だからね。発声器官なら人の言葉を出すことは難しくなるだろうね。現地語も理解できなくなる」
「すごい角だな」
「本当に。だからこれがあるだけで僕たちはコミュニケーション強者なわけ。言語体系を持つ現地生物とだったら誰とでもコミュニケーションを取ることができる。人でもオークでも龍でもね。都だと通訳やってるお仲間も多いよ」
「あーー、そっか!じゃあそのLINEってめちゃくちゃ情報集まるね。やばいね」
「そうそうそう。だから既存権力にとっては危険なんだよね。だから相互不干渉の取り決めはしっかりしてる。情報はあくまで我々の安全のためだけに使われるしね。国家や商会と関わることは禁じられている。破ると角取られちゃうんだよね」
「なるほどね。好き勝手できないわけだ」
「そういうこと」
「どこいたって変わらないね」
「姿は変わりまくりだけどね。ちなみに、カルロスはラテン系日本人って言ってたけど、日本語以外も使えばたんだよね?」
「親父がメキシコ人だったんだ。会ったこともないし、行ったこともないけど、小学生の頃にスペイン語を勉強してて割りと使えるる。あんま使わなかったけどね。あと、英語もそこそこかな。でも、いきないなんで?」
「異世界生物は、なぜかマルチリンガルばかりなんだ。僕はドイツ語と英語が使える」
「へええええー、なんでだろ!?」
「なんでだろうね。それも500年経ってもよくわからない」
本当になんでだろう?