ラブエクスペリエンスに関する覚書 その4
「不必要ね」とラブエクスペリエンスは言った。
僕にたいして言っているのだと思った。
彼女が確信を持ってそう言う。
それは本当に確かなことなのだ。
確かなものによる追認。僕はなぜか笑顔になってしまった。
「やはりカルロスは不必要ね。消さなければいけない」と言って、ラブエクスペリエンスは足早に部屋を去っていった。
なんだ、僕のことじゃないのか。
でも、僕はそれで安心したりすることはもはやできなかった。彼女が去った部屋で僕はひとり笑顔で突っ立っていた。
それから僕は動けなくなってしまった。
部屋のベッドにうずくまる自分に気づいた。あれからどれくらいの時間が経ったのか僕には分からない。
何かを具体的に考えることはもはやできなかったけれど、僕がなにかしらの刺激を受け取ったりなにかしらの刺激を発したりすることはもはやないように思えた。
スルッポンが見舞いに来てくれたようだ。
たぶん目の前にいる男はスルッポンなのだろう。
「ちょっと休んだら完全に回復するようだよ。よくある症状のようだ。徐々に気力がなくなって最終的に動けなくなる。でも、それから回復するんだって」と彼は言う。
一体、なにについて語っているのか分からなかった。それでも、彼は続けて言う。
「ラブエクスペリエンスはカルロスの抹消を決めた。今、プロジェクトが本格的に稼働している。カルロスの現在地もつかんだし、そのための装置も作成中だ。久々の大仕事だね。君にも手伝ってもらわないとね」
そう彼が言っているのを聞いた。
日光が窓から差し込んで目に当たっている。
目の中が光で満たされる。
こういうときどうしていたのか思い出せなかったので、ただじっとしていることしかできない。
目から溢れた光が部屋全体を包みこんでいった。