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行き場のないカルロスの冒険とその終わり  作者: スーザン・ソンタグ・ラブ・エクスペリエンス
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スーパー世界最強魔法使い

「ごきげんよう、カルロス。世界最強魔法使いがこんなところに何の用事で?グングンポニーで遊ぶのはもう飽きたんですか?」とハルカが不機嫌そうに切り出す。やっぱりブスとか言わなきゃよかったと思う。

「あー、お前さ、俺のこと世界最強魔法使いって呼ぶじゃん?俺のこと世界最強魔法使いって言い出したのお前だけど、実際根拠あるわけ?」と俺は核心を聞き出す。

「ふ、そんなこと」とハルカが鼻で笑う。

「予言者の私が言ってるんだから当然そうに決まってるでしょ。つーか、あんた自信が確信持ってるはず」

実際のところそうなのだ。俺は俺自身が世界最強魔法使いでないとはどうしても思えない。つまり俺は世界最強魔法使いなのだ。なんでだかわからないけど。

俺はあらためてそれを指摘されてたじろいでしまう。たじろいでしまい、とりあえずハルカのおっぱいを見る。巨大なおっぱいだ。巨大なおっぱいが2つある。2つの巨大なおっぱいを持つベジタブル・ハルカ。ていうか、そもそもベジタブルってなんだよ。聞いてみよう。


「ところで、お前はどういう意図でベジタブル・ハルカって名乗ってんの?なんだよベジタブルって。ウケる」と、俺は挑発的な態度で聞いてみる。

「は?野菜が好きだからに決まってるじゃない?つまらないことを聞くのね。カルロス・フィンチョン」とベジタブル・ハルカがあまりにも普通に答えるのでまたしてもたじろいでしまう。野菜が好きなのか。実は俺も野菜が好きだ。大人になってから、ちょっといい店で食べた地物の有機野菜の野菜スティックが感動的に美味くて「うめー、うめー」と騒ぎながら一瞬で平らげたことがあって、それ以来野菜に目覚めた俺は休みの日になると山形県内各地の農家を巡って「カルロスの山形美味しい野菜地図」というブログに野菜の記事を書いていた。そこそこ写真と文章のセンスがあったためか、ブログは結構な人気を得た。いや、今思うと毎回記事に野菜や畑や生産者と戯れる俺の写真を載せていたおかげな気もする。とにかく俺は超絶美男子だったのだ。書籍化の話もあったのだけれど、いろいろと手続きが面倒で、ほっぽったままになってしまっていた。

「マジか。お前、もしかして「カルロスの山形美味しい野菜地図」って読んだことある?」と俺が聞くと「え、嘘。なんであんたが知ってんの?ってカルロスって、嘘!?」と色めきたったので「山形のカルロスって俺だよ俺!」と教えてやった。

「うっそーーー!!あんたがカルロス!?ずいぶん変わっちゃったのね!!わたし、ブログ超読んでたよ。楽しみにしてた」とひとととおり盛り上がった。


「私たちお互い遠くに来ちゃったね。いろいろ変わっちゃったね」とハルカは悲しそうに言う。俺はハルカを後ろから抱きしめた。彼女はあまりにも巨乳なため、子どもの体の俺は彼女を前から抱きしめることができなかったからだ。

「ねえ、ハルカ。元の世界に帰りたい?」

「そりゃ帰りたいよー。でも帰れないことに確信持てるんだよね。私って予言者だから...」

「俺さ、世界最強魔法使いってことちゃんと受け入れるよ。でもその世界最強魔法使いってお前の予言のいう世界最強魔法使いとは次元が違うんだよね。つまり、お前が予言したのは「世界最強魔法使いA」、俺がなるのは「世界最強魔法使いB」。つまり、お前の予言を越えてやるわけ。スーパー世界最強魔法使い、みたいな?はは、意味わかんない?まあ、すごいやつになるよ、俺はさ。そんでさ、お前の予言だか確信だか?それを覆せるんだよ、スーパー世界最強魔法使いはさ」

「ふふ、そういうのはっきり言いなよー」とハルカは涙を流しながら笑って言う。

「あー、お前のこと帰してやるよ!スーパー世界最強魔法使いのカルロスがさ」と俺は言った。勢いで言った。何の展望もないのに言ってしまった。

「ふふ、あんた勢いだけよね、本当。グングンポニーでのゲリラと一緒。考えなしではじめめて。どうせすぐにどうでもよくなるよ。でも、ありがとう。ちょっと嬉しいよ」とハルカは言った後お互い黙る。

「ブスとか言ってごめんね」と俺は謝り、ハルカも「本当やめたほうがいいよ、ブスとか言うの。でも、私も汚れ仕事たくさんさせてごめんね」と謝って、お互いノーゲームになった。

それから、グングンポニーの件を収束させる件について相談して、その日は別れた。


俺はスーパー世界最強魔法使いになると誓ったが、我ながら意味が分からなかったのでどうしていいかわからなかった。ちょっとした冒険をするときも「スーパー世界最強魔法使い」について頭の片隅に留めておいたが、留めておくこと以上のことをなにひとつしなかった。

結局、今のところハルカの言うとおりだった。

俺は今でも「世界最強魔法使い」であるが、それ以上でもそれ以下でもない。そのことが俺を悲しい気分にさせる夜が何度もあって、俺はそのたびに創作落語が作って夜を乗り越えた。

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