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行き場のないカルロスの冒険とその終わり  作者: スーザン・ソンタグ・ラブ・エクスペリエンス
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10万羽の鳩はエリオットに殺される。

はい、じゃあ、「鳩殺しのエリオット」についてこれから話したいと思います。あ、「鳩殺しのエリオット」というのは俺の魔法の師匠であるわけなんですけど、ていう話はこの前ちょっと話したんですけど、というか、師匠って言っても魔法の練習してる俺の前に一回現れてちょこちょこってレクチャーしただけで、しかもそれが俺の魔法の発達に役に立ったかは、うーん、いまいち分かんないなあ。でも、とにかく俺の師匠って言ってしまいたい何かが彼にはあって、あー、これ言うと「自慢してんの?」って思われるかもしれないんですけど、俺はこの世界で最強の魔法使いなんですよね。これ言うと知らない人とかは「勘違いしてる三下が!!」みたいに思ったりするかもしれないんですけど、まあ、まあ、まあ、しょうがないか。そりゃこんなチビが言ってる話しですからね。ていうか、可愛いチビッ子が「俺は世界一の魔法使いなんです!!」って言ってたりしたら、なんか普通に可愛いよね。うん、まあ、そんなふうに思ってもらえるのは結構いいなって思うんですけど、まあ、俺はとにかく世界一の魔法使いなんですよね。これは分かる人には分かるわけ。最強の魔法使いって言うと、ものすごい才能があってめちゃくちゃ努力したと思われるかもしれないけど、そういうこっても実はないのが歯がゆいところで、ほとんど事故みたいな感じで最強になっちゃったんですよね。だから自分が最強の魔法使いであることには、いまいち誇りが持てないところはあるんですけども、あー、まあ、なんかごめんなさい、ちょっと自分の話しすぎですよね?オーケー、自分の話終了!!あー、本当に伝えたたかったのはですね、俺が最強の魔法使いであることを明示して、それでその師匠であるエリオットについて興味を持ってほしかったんですよね。決して俺の自慢がしたかったわけじゃないんですけども、そうですねえー、いやあやっぱ自慢したかったのかなあ。ほら、さっきいまいち誇り持てないって言ったじゃないですか、最強であることに、俺は。って言っただけあって、やっぱ人前で自慢とか普段しないわけですよ。だから抑圧されてたのかなあって思うんですけど、エリオットの話をするつもりがついつい自分の話をしちゃったんじゃないかなって思いますね。うんうん。とはいえ、そういった俺の漏れでた自意識を揶揄するのは簡単ですけどね、あなたにこういったことがないって言えます?まあ、あなたのことはよく知らないからよく分かんないんで、本当にないかもしれないですけどね。まあ、でも、人の自意識にケチつけられるような人間はとにかく下らないと思いますよ。これは俺が年がら年中人の自意識にケチをつける国で生まれ育ったからこんなこと思うんでしょうかね?まあクソみたいな国に生まれ育ったわけなんですけど、それでも愛国心はありましたけどね。俺の意識の一部もそのクソでできてるわけなんで。体がこんなふうに変わっても洗い流せないクソもあるんですよね。へ、へ、へ。

あー、こんなこと言ってたら、エリオットだったらこんな俺になんて言うかなって思っちゃうなあ。なんつうんだろ?

とういことで、今からエリオットの話をしたいと思うんですよね、鳩殺しの。つってもまあ、ほとんど知らないんですよね。一回しか会ったことないし。

まあでも推察するに彼も俺と同じ異世界生物だと思うんですよ。名前の感じからすると。アメリカ人かイギリス人だと思うんですけど。あー、今思うとそのへんちゃんと聞いときゃよかった。なんで聞かなかったんだろうって思いますね。マジでなんで聞かなかったんだろ?まあ、エリオットってけっこうあっさりしてるって言うか、気づいたらそこに居て、気づいたらいなくなってるみたいな感じがあって、まあ実際そうだったんですけどね。あんまりあっさりしてて、なんか受け入れちゃうっていうか、この人になんか聞いてみようって思わないんですよ。その時は。そんで振り返ると、なんか一緒にいて心地よかったなあとか思うんですよ。あ、とか言うとぜんぜん害のない人だと思いますよね?いやー、それがとんでもない!あいつはとんでもないサイコ野郎なんですよ!!

あ、「あいつ」とか言っちゃった。笑

いやー、師匠、すみません。笑

つっても俺のこと弟子だと思ってないでしょうし、忘れられてる可能性大なんですけどね。

サイコ野郎って勢いで言っちゃったけど、本当にサイコ野郎ってわけじゃなくて、いややってることはサイコ野郎で、つーかもったいぶってもしょうがないんで言っちゃうと鳩殺しまくりなんですよね。ヤバイっしょ?笑

え、ああ予想できた?あ、「鳩殺し」って言ったもんね、俺。え、でも本当に鳩殺してると思った?比喩とかだと思わなかった?へー、あ、そうなんだ。オーケー、オーケー。

まあ、鳩殺してんのよ、俺の師匠のサイコ・エリオットは。今まで累計10万羽くらい。しかも自分の手でポキッと首折ってさ。そんな殺して鳩って絶滅しないから凄いよね。そんで、なんでそんなことしてるかって師曰く「魔法使いはそれぞれ自分の形式性に則って魔法を使わなければならない。私の場合は鳩を殺すことが、その形式性である」んだって。師匠がそう言った刹那、どこからともなく鳩が飛んできて、師匠がそれをひょいと捕まえたと思ったら首をポキッとやったんだよね。そしたら鳩の死骸を天に掲げてさ。そしたらその鳩の死骸から巨大な雷が天に舞い上がったんだよね。すげえ音でさ。どぎょぎゃぎょぎゃっぶおおおおおおおおおおおん。みたいな感じ。を100倍にした感じ。を想像してもらえたら嬉しいな。なんか、俺それ見て感銘受けちゃったんだよね。魔法のパワーが凄いっていうのもあるんだけどさ。鳩殺して魔法使うってめちゃくちゃ馬鹿げてるでしょ?そうしないこともできたわけじゃない?でもそれが自分の形式性だっつって鳩殺しまくってるわけよ。すげえ嫌悪感。本当にすげえ嫌悪感だったよ。でも、師匠はだからっつって邪悪なのかはわかんなくてさ。実際俺にいろいろアドバイスくれたわけだし。役に立ったかわかんないんだけどさ。形式性。形式性ね。その師匠の姿見てからさ。俺は魔法使うたびに形式性って言葉を思い出すわけ。今でもよくわかんないよ、形式性って。最強の魔法使いなのに、俺は自分の形式性ってよくわかんない。でも、「形式性」って言葉は俺の魔法の中にずっとあるわけ。

ほら、俺は最強の魔法力を事故みたいな形で手に入れたっつったじゃない。それってけっこう怖いことで、俺のいろんなものを脅かしてるんだよね。怖いよ。ストーリー化できない巨大な力ってのは本当に。巨大な象と一緒に暮らしてる気分。完璧に制御してるつもりでも、いつ暴走するかわかんないんだから。でも、師匠の「形式性」って言葉が、そんな自分の力と自分自身を蝶番みたいにつないでんだよね。弱々しくはあるけれどそれがないとバラバラになっちゃう気がするんだ。だから「鳩殺しのエリオット」は俺の師匠なわけ。10万羽の鳩を殺したサイコ野郎が俺の師匠なわけ。オーケー?

え、エリオットの外観?なんかでっかいローブかぶってたから知らないよ。君もくだんないこと聞くんだね。

ちなみに「人殺しのカルロス」って魔法使いもいてさ。

あ、そっちのが興味あるって?笑

オーケー、オーケー、じゃあ、これから「人殺しのカルロス」について話した位と思うんですけど

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