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行き場のないカルロスの冒険とその終わり  作者: スーザン・ソンタグ・ラブ・エクスペリエンス
10/30

エリオットは10万羽の鳩を殺す

地面に手をついてそのまま逆立ちを試みる。俺の体は軽くて容易に体は持ち上がって成功。バランスがとれなくてグラグラするのだけれど、空中から紐で吊るされてるかのように不思議と体勢は維持できる。5分ほどそのまま逆立ちをし続けた。まだまだ続けることが出来そうだったけれど、手のひらに砂が食い込んでちょっと痛くなってきたので切り上げた。両手の砂をはたき落とす。これが俺の最初の魔法だった。


「鳩殺しのエリオット」という魔法使いがいる。俺の師匠だ。彼は俺にこんなことを言ったことがある。

「魔法とは個人に備わった形式性により発揮されるものであり、普遍的な体系により解釈されるものではない。それ故、魔法使いはその初歩においては、自らの形式性を認識しなければならない。オーケー?」

「んー、notオーケー。自らの形式性とはなんですか?」

「まあ、しっくり来るってことじゃよ。魔法は自分にとってしっくり来る使い方をするのが一番大事。君はしっくり来たことはあるかい?」

「えー、どうでしょう?なかなか難しい質問ですね」

と、俺は濁したけど、俺はしっくり来たことはない。生まれたときから、家でも地域でもしっくり来ることはなかった。常に、ここにはそぐわないのではないかと思って生きてきた。

「環境にしっくり来るかどうかはあまり問題じゃないぞい。魔法使いなんてみんな変わり者の被迫害者じゃ。逆にマジョリティーの連中じゃ魔法は使えんよ。そういうものだ。」

「なんか、俺の心を読んだかのような受け答えですね」

「読んだからね。まず、自らが囚われている制度や衝動、そういったものを認識し、その流れに乗る。そして加速する。そうすると自らを規定していたものから抜けだせる瞬間があるのじゃよ。そこからお主の形式性がようやく立ち上がるってわけじゃ」

「そうですか」


そんなやり取りのあと、エリオットは「とりあえず逆立ちでもしてみたら?」と言って俺のもとから去っていった。「鳩殺しのエリオット」ほ鳩を殺さなければいけない。今まで殺した鳩は10万羽以上。それを生業にしているわけではないし、彼の欲望がそうさせているわけではやい。それが彼の形式性なのだ。

エリオットが去ったあと、俺は真面目に逆立ちのをし続け、3日後には通常の逆立ちとは違う感覚を得ることができて、よく分かんないけどこれが魔法なんだろうなって思った。

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