クラスメイトと初会話
1話からご覧ください。
倉持と鉢あった道は細い一本道だったが、いくつもの分岐を経て、今、俺らは広い空き地にいる。
何度も撒こうとしたのに、何故か俺の隣には倉持がいる。
相手様の姿はまだ見えないが、こちらへ近づいている音がする。
相手、もとい、牛鬼の狙いは明らかに倉持だ。
俺は長いため息をついた。
「なんで俺についてくるんだ。」
相手を待つ間、仕方なしに尋ねれば、ストレートの長い前髪の間から、眼鏡越しにこちらをうかがうような目を向けてきた。
倉持はどちらかというと、小柄で細身だ。
そんな体のどこに体力があったのが不思議なくらい息が乱れていない。
俺は、少し息が荒くなってる。全力で走りまわったんだから、当然だ。
倉持は静かに、
「なんとなく。」
と答えた。
なんとなくで、他人を死地に巻き込まないでほしい。
「お前は、アレ、なんとかできるのか?」
呆れるように言えば、
「微妙、です。」
怯えるような声で、返事がきた。
「なんだ、その曖昧な返事。」
俺は何に巻き込まれてるんだ?
無理心中か?
俺にはどうにもできないぞ?
学ランという走りにくい格好のため、襟口をあけて、ワイシャツのボタンも外す。
春先といえど全力で走り続ければ、暑い。
倉持は制服を全く着崩さない。
実は忍者か?
「実は、僕はああいうのをいれる蔵を持っています。そこにまだ空きがあるので、あれらを突っ込めば、なんとかなるかと思います。」
短い沈黙が俺と倉持の間に流れた。
空き地の青々とした草も揺れていなかったので、まさに無音の時間だった。
口火を切ったのは、俺。
「その蔵はどこに?」
色々突っ込みたいことはあり過ぎたが、一先ずはそこだろう。
「僕の中です。」
前言撤回。
まずは質問だ。
続きます。