クラスメイトとかけっこ
1話からご覧ください
俺が手当たり次第みた図鑑には、妖怪ものも多々ある。
広く浅い知識で簡単に説明する。
牛鬼
読み方は、うしおに・ぎゅうき。
頭か体のどちらかが牛。
角は鬼のように大きい。
頭が牛の場合、体は鬼か昆虫が多い。
俺の中では、鬼か蜘蛛が多いように思う。
蛇っぽいのもいるらしいが、お目にかかったことはない。
ここまでの定義でいうなら、おいしそうなクラスメイトが追いかけられてるのは、牛鬼でとりあえずはいいだろう。
まだまだ地方によって色々あるのだが、些細な差なのでおいておく。
そんなことより、ここからが重要だ。
牛鬼は、獰猛で残忍。毒を持つこともあり、人を殺す。
つまりだ、牛鬼とエンカウントした俺がとるべき選択肢は、逃げる一択ということだ。
ちなみに、いらない知識としていうなら、おいしそうにはみえる。
味はまずいと思うが、食べてことはまだない。
おいしそうなクラスメイト、もとい、いい加減名前を言うべきであろう彼は、倉持という。
細い一本道を2階まである大きさの、頭が牛で体が鬼の、最悪コンボきめた牛鬼に追われてこっちに向かってくる。
あちらのものは、実は意識させなければ正に文字通りのスルーができる。
存在を認識しないことは、影響も及ぼさないのだ。
だから、1番の回避方法は、牛鬼をいないことにして通り抜けさせることだ。
だが、今回は無理だった。
倉持が追いかけられてるのはみてわかるし、何より牛鬼と目があって、恐怖を感じてしまった。
これはもうアウトである。
俺は帰宅方向とは逆に踵を返して逃げる。
それをみた倉持が、眼鏡の奥で驚いた目を向けていった、
「君もアレみえてるの?」
バカヤロウ、現実を突きつけるな。
嘘にできなくなるだろ。
俺は、逃避したい気持ちを抑えつつ、仕方なしに頷いた。
倉持はさらに驚いた顔をして、今度は口を開けたまま固まった。
倉持、口は閉じたほうがいいぞ。
この会話の間、俺たちはほぼ全力で走ったままだ。
息が乱れやすくなるし、乾くから、持久力勝負なら喋ることすら、お勧めしない。
ほんとに冗談ではない。
走るのは苦手なんだよ。
なんとか打開案はないかと考えながら、走り続けた。
続きます