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七の王国  作者: 毎留
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第十六章 瓜二つ(5)

 そして二十分が経過し、ようやくリゼールが戻ってきた。

「殿下、ペンダントをお持ちしました」

 その手の中で、七個のペンダントは炎のように燦然した輝きを帯びていた。カーウィン王子はそれを受け取ってから、シーナに差し出した。

「これがノアの方舟に入るための鍵だ。ペンダントにはそれぞれ無線信号の発信装置が含まれていて、それが七個揃うとロックが解除される仕組みになっている。このオリハルコンのカバーがアンテナと発電装置の役目も果たしているのだ」

「それではもしかして……」シーナが戸惑いの色を見せる。

「どうかしたか?」

「はい、実は私たちの時代に聖剣アトラスには、ある封印がなされていました。そしてそれはこれら七つのペンダントを集め、合言葉を言うと解除される仕組みだったのです」

「ほう、それでその合言葉は?」

 カーウィン王子が首をかしげた。その瞳はシーナを品定めするかのように、静かな光を帯びている。

「テラノム・サーサスールです」

 それを聞いた王子の表情が緩んだ。

「ふむ、方舟の扉を開ける合言葉と同じだな。おそらく方舟の扉を開けるための認証システムを、聖剣の封印とやらに流用したのだろう」

「そういうことだったのですね。ところで、その方舟の扉を開くための鍵となるペンダントを私たちに貸していただけるのですか?」

「無論だ。それにスクーターも必要だろう。上空から探せば、山頂にある方舟をすぐに見つけられるからな。この七個のペンダントを持っていき、方舟の前で先ほどの合言葉を言えば、入り口が開くはずだ。あの舟は高度な重力制御装置や防衛システムを備えていて、これまでマイヤたちに侵入された形跡はない。だからあの中には、まだオリハルコンやアルマニオンが残されているはずだ」

「アルマニオン?」

 キャランがその単語を復唱した。未来の世界で、グリンピア王宮跡の禁断の間に残された石板にもその名が記されていた。

「アトランティス王国の科学力が生み出したとされる、オリハルコン以上に貴重な幻の金属だ。私も実物を見たことはないが、聖剣を作るのであれば、うってつけの素材になるだろう。

「そのようなものが存在するのですね。必ずやそれを手に入れて、殿下の前にお持ちいたします」

 頭を下げるシーナに、カーウィン王子が右手を伸ばして待ったをかけた。

「早まるな。誰がそなたたちだけで行かせると言った? 私も同行するぞ」

「殿下、お待ちください。ヘンド王が病に伏せられている今、殿下の御身に万が一のことがあれば、この王国は瓦解がかいしてしまいます」

 色をなして反対するリゼールに、王子がいたずらっ子のような笑みを浮かべた。

「大丈夫だ。私が不在のあいだ、影武者を立てよう」

 その右手の人差し指はノクトを指している。

「え、俺?」

「そうだ、そなたなら衣装を着替えるだけですぐに私の影武者が務まるだろう」

「でも俺もこれまでラックやシーナたちと一緒に冒険してきたんです。それなのに俺一人だけ置いて行かれるなんて……」

「残念だが今回は諦めてくれ。私が同行し、代わりにそなたがここに残ること。それが方舟の鍵となるペンダントを貸し出す条件だ」

「そんなー」と肩を落とすノクトに、シーナが語りかけた。

「ごめんなさい。でも王族しか方舟に近づくことを許されていないのであれば、そこにカーウィン王子が同行すると言われるお気持ちはよく分かるわ。私だってグリンピア王国の禁断の間に、誰よりも先に入っていきたかったもの。だから今回だけは代わりにここで留守番をしていて」

 その言葉には優しい衣が着せられているが、そもそも方舟に近づくのはカーウィン王子だけの、グリンピア王国の禁断の間に入るのはシーナだけの特権であるはずだ。ノクトも自分が文句を言える立場でないことはよく分かっていた。

「うん、分かった。残念だけど俺はここに残るよ。でも方舟から帰ってきたら、そこでの出来事を詳しく教えて欲しいんだ」

 心細そうな面持ちのノクトに、ラックが笑顔で答えた。

「ああ、約束する」

「待っているよ」

「すぐに戻ってくるから心配するな」

 ノクトを残して謁見室から立ち去ろうとするラックたちを、リゼールが呼び止めた。

「少し待っていただきたい。つかぬことを聞くが、皆さんは聖剣を手に入れて、背中に羽を持つ者たちと戦うつもりなのか?」

「分かりません。でもそうなるかもしれません」

 ラックが振り返った。

「それならば、この話をしておこう。本来、未来とはさまざまな可能性に満ちたものであり、そこにたった一つの定められた運命などというものは存在しない。しかし背中に羽を持つ者たちが大王と崇めるラプラスは、奴自身のデルタイを使ってそれを歪めようとしている。つまり現在と特定の未来を結びつける黒い霧を作り出し、未来を特定の方向へと導いてしまうのだ。するとこの世界でおきる出来事は確定的なものとなり、未来を正確に予言することが可能になる」

「未来を予言ですって?」

 シーナがやや上ずった声を上げた。

 無理もない。彼女たちの未来では、剣士カシウスの言葉として、ノキリの村の石板に未来の出来事が予言されていたのだから。

 今にして思えば、あれは人間たちから未来の可能性を奪うラプラスに勝てなかったことを示す、剣士カシウスによる敗北宣言だったのかもしれない。

 そしてグリンピア王国滅亡後の宝物庫地下で読んだ碑文には、こうも書かれていた。

 しかしラプラスの定めた未来を変えることはできなかった、と。

「たしかに私たちはこれから起きる未来の出来事を知っています。でもそれはラプラスにとって都合の良い未来なのであって、それを再現してもダメなのですね。もっと別の未来を歩まないと……」

「そういうことだ。だが、恐らくそれには相当の困難を伴うだろう。自分たちの知る歴史をたどり、それを超えていく必要があるのだから」

 リゼールの言葉に、皆は小さくうなずいた。

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