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七の王国  作者: 毎留
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第七章 永い眠り(5)

 翌日、ルサンヌを仲間に加えて旅支度を整えたラックたちは、リューイ率いるイエローサ軍とともにオアシスの中央にある井戸へと来ていた。

 井戸をのぞくと、逆サイフォン式の地下水路によってグリーンサンド王国との国境に面した湖から取水された水が、10プース(3メートル)ほど下のところになみなみとたたえられていた。周りには桶を手に、生活用水を汲みに来た住人たちの姿もある。

 リューイの話によると、ハプスの村までは徒歩で三日ほどかかるらしい。それまでの間、自分が消費する水は自分で持って歩くのが旅のルールである。

 今回の内乱とシシカ女王の崩御によって、一時的にイエローサ王国の軍事力が低下したことは誰の眼にも明らかだった。その間隙かんげきをついて他国が攻め入る事態を想定しないといけないが、シーナの件があるのでグリンピア王国がすぐに攻めてくることはないだろうというのがリューイの見解だった。

「このような事態も半ば想定していたので、あの時グリンピア王国のタイラー王に恩を売ることができたのは幸いでした」とはリューイの弁である。ティーナ姫によく似た人物を国境付近で見かけたというグリンピア兵の報告が国王まで上がるなら、シーナが人質に取られている可能性を考慮し、なおのこと攻めこみにくくなる。

 その一方で軍事力による侵略の意図を隠そうともしないレッディード王国は、ここぞとばかりに攻撃を仕掛けてくるかもしれない。だからこそレッディード王国と国境を接する北方への派兵は急を要するのだという。十五年前、赤いトラに急襲されたハプスの村はその道中にある。リューイはラックとの約束を守り、ハプスの村に住むカシウスの朋友ほうゆうの子孫に引き合わせてくれることになっていた。

 そのような訳で慌ただしい出発になったが、シーナの仲間たちは快くルサンヌを迎え入れてくれた。シーナの話を裏付けるため、ラックは炎のように燦然と輝く不思議な金属がはめ込まれたペンダントを見せてくれた。金属の名をオリハルコンと言うらしい。

 そしてそれを目にした瞬間、永いあいだルサンヌの脳裏に忘れ去られていたいくつかの記憶がよみがえってきた。

「ルサンヌ、何百年先か分からないけど、また会おうね。その時も私たちは友達だよ。そしてルサンヌにはきっと新しい友達ができているはずだから。その子の名前はシーナだよ」

 たしかにあの時、メルネはそう言っていた。二百年以上前にシーナとの出会いを予言していたとしか思えない、とても不思議な出来事である。

 そしてルサンヌは、淡い恋心を抱きながらいつしかその顔を忘れていたカイモンのこともはっきりと思い出すことができた。

 彼は筋肉質の大柄な身体で、黒髪の精悍な若者だった。

 その姿はそう――目の前にいるジールという青年に瓜二つだった。


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