閑話2 凶暴竜
リアル都合で間が開いてしまってすみませんでした。
さらに今回、かなり難産でした。
生き物が死ぬ描写がありますので嫌いな方はバックをお願いします。
竜種、それはこの世界最強の一角。
神龍カルミルアが自らの力により生み出した最上位固体七種。
焔の泉に住む紅焔竜。
大海を優雅に泳ぐ水蛇竜。
大きな翼を広げ空を舞うように飛ぶ翼飛竜
巨大で堅い岩のような体を持つ巨岩竜。
雷を纏う雷電竜。
氷雪の大地に住む氷凍竜。
漆黒のハンター、竜種最強の爪と牙を持つ凶暴竜。
その眷属がそれぞれ八体。
それらが世界に放たれた。
最上位固体を中心にコロニーを作りその地の情報を集める種族。
最上位固体を含むすべての固体が単独で行動し情報を集める種族。
その方法は千差万別であったが、最初はほぼすべての竜が従順に神龍カルミルアのために情報を集めた。
七種、見た目も能力も異なる種であり情報の集め方にも差があったためか、その出来も違っていった。
出来の違いは優劣を生み、優劣はおごりやねたみを生み、それらは神龍カルミルアへのひいては創造神アハティスへの反発を生むきっかけとなった。
「従順であるままであればよかった」と言ったのは、眷属すべてを失い生き残ったとある最上位固体の一体の言葉である。
漆黒のハンター、凶暴竜の眷属である双頭の黒竜は、獲物の肉を食べながら自らがテリトリーとするこの地には自らよりも強きものが居ないことに気付いた。
凶暴竜の元へ情報を届けたとき、同族である他の黒竜種を知り、それぞれの住む地においても竜種以上の強者が居ないことを知った。
それと同時に、凶暴竜にはかなわないまでも他の同族の中では、一、二を争う強者であったため、自らよりも強きものはこの世界に生きる生物には極端に少ないことに気付いた。
凶暴竜の元から自らのテリトリーに戻る途中でのこと。
たまたま休憩を取った高台から見えた平地で、弱き人族が武器を持ち集団となることで巨体な魔獣に向かっていき勝利する様子を見たことで数が力になることに気付いた。
弱きものであっても数が力になるのであれば竜がまとまれば最強になりうることに気付いた。
自ら一匹では倒せない主である凶暴竜を倒し、主の主である龍を倒し、自らが世界最強の龍となる。
その力で「世界のすべてを自らのものとする」と言う野望が生まれた。
双頭竜はまず、凶暴竜の眷属である他の七竜をその力と知恵を持って仲間とした。
同時に単独で行動をしている他の六竜の眷属竜やその子孫である若い竜を、その力と知恵を持って集めていった。
若い竜が自分の父母である眷属竜を説得し仲間とすることもあった。
翼飛竜種の一匹を仲間をしたことにより、その行動範囲が広がり予想以上に仲間は増えていった。
紅焔竜、氷凍竜に巨岩竜はコロニーを作っているので、数と数の戦いになる。
水蛇竜は海中、翼飛竜は空を舞うため数で戦うことが困難である。
自らの主である凶暴竜は竜種最強。
それらを考え、最初の獲物として雷電竜を狙うこととした。
雷電竜の情報収集の時期を知ることで雷電竜の位置を知った。
雷電竜の眷属の一匹に他の眷属竜の数体が、数日遅れ到着することを伝えさせた。
雷電竜が情報を伝えた眷族と二匹となった時を見計らい雷電竜に数で襲い掛かった。
結論から言うと雷電竜は倒された。
雷電竜により倒された竜も出たが、数の力の前に雷電竜は倒れ双頭竜の血肉となった。
最上位固体の一体である雷電竜を倒したことにより、双頭竜の次の獲物は単独行動を行う最上位固体、自らの主である凶暴竜となった。
凶暴竜の力を知る双頭竜は、竜種のコロニーを作りそこで子を成し育てることで数を増やすことにした。
その間にも他のコロニーから出た若い竜を仲間とし、着々と数を増やしていった。
時は満ちた。
手下も増え、弱いものの爪や牙を研ぎ強化した。
それも無理なものには武器を持たせた。
双頭竜は自らの爪や牙にも磨きをかけた。
凶暴竜の眷属は双頭竜側であり、凶暴竜はただ一匹だけである。
双頭竜は、小さく牙が無い手下に命じ凶暴竜のねぐらを探させた。
ねぐらを見つけ出すと、空高くから凶暴竜の動きを見張らせた。
凶暴竜のねぐらは洞くつだった。
凶暴竜が居ないときに洞くつの中に小さい手下を潜らせ中の確認を行った。
手下達は小柄なために大型な竜種では見つけられないいくつかの空気穴を見つけ、それを塞いでいった。
そして準備を万端とし、とある夜に凶暴竜の討伐を決行した。
凶暴竜は焦っていた。
眠りについていたところを煙にいぶされ、危うく息ができなくなるところであった。
凶暴竜は、そのような状態であってもなんとか巣から出たところで、新鮮な空気を取り込もうと息をしようと立ち止まる。
そこに狙いすましたかのように空から巨大な石が降り注ぐ。
凶暴竜は、酸素が足らず頭が回っていない状態で、動き回ることを余儀なくされた。
何かに躓き倒れたところに巨大な石が落ちてきた。
咄嗟に体をひねり直撃を避けたが、左の腕の関節に巨石が直撃し左の腕は動かなくなった。
そこに竜達が襲いかかる。
立ち上がりながらも最初の数匹は右手の爪で切り裂き、牙で噛み付いた。
ある一匹を噛み付こうとしたとき、その異変は起こった。
ある竜の腕に牙を突き刺し、力で竜を振り回し投げ捨てるつもりだった。
そう考え牙を突き刺し、首だけではなく体をひねった。
口に入ったもの、それは竜の体ではなく幾重にも重なった茶と紫色の竜の鱗だった。
そして、事もあろうか、硬い鱗と硬い鱗の間に詰められた何かが牙に絡みつき、牙を抜くことができなくなった。
凶暴竜は逃げることを考え翼をはためかせる。
まるでそれを予想していたかのように、上空から幾匹かの飛竜や爪を研いだ竜が翼をめがけ降り注いだ。
さすが最上位種と言うべきか、飛竜や他の竜の爪は翼で打ちのめし折ることができた。
ただ一匹、双頭竜の爪だけが右の翼を切り裂くに至った。
凶暴竜はその痛みのためか、世界を呪うような大きな鳴き声を上げ双頭竜に突進をした。
双頭竜はそれを向かえうたず、空に避け、右の首で凶暴竜の首に噛み付いた。
凶暴竜は、双頭竜を首に噛み付かせたままに他の竜に突き進み、双頭竜の体を他の竜に体当たりさせ自らの首から外すと、そのまま走り抜けた。
空を飛ぶ竜が先回りし眼の前に立ちふさがるが、右手の爪それだけが最後に残された武器となり敵を切り裂いた。
凶暴竜は走り続けていた。
足を止めたとき、そこで命が終わるときになると予感がして……。
更に凶暴竜の運は悪かった。
自らの眷属の中で最大の巨体を誇る多首種、八蛇竜が現れた。
蛇のように細長い首が八つあり、それを支える体は巨体。
万全な状況であれば勝てるが、現状の右腕一本では勝てるものではない。
そう考えられる状況であっても、凶暴竜は突進をし、八蛇竜の体へぶつかっていった。
凶暴竜は、八蛇竜の最初の一本の首を爪で切り裂いた。
だが左から来た二本目の首が動かない凶暴竜の左腕に噛み付く。
右手を狙ってきた三本目の首は切り裂くことができたが、その隙をついで四本目の首が右肩に噛み付いてきた。
更に五本目の首が右腕に噛み付く。
それでも凶暴竜の突進は止まらず六本目の首が凶暴竜の喉を狙ってきたが、噛み付かれる寸前に凶暴竜の体は八蛇竜の体を捕らえた。
巨大な二つはぶつかり合いもつれ合うように重なり転がった。
転がった先、そこは崖であり二匹はそのまま谷底へ落ちて行った。