第2話 世界は混沌に満ちている
私の目の前には大海原がある。
先ほどまで立っていた大地なんかはもう影も形も見えなくなっていた。
私は水に飲み込まれたけれど、何事も無かったように上空に浮かび上がっている。
実際呼吸している訳でもないので、水の中でも平気なんだけど。
服がぬれるのもどうかと思うから浮かんで、既についてしまっていた水気は力で飛ばした。
その私の前には、八つの光が浮かんでいる。
「じょ……上級聖霊様……。」
私の星に力を注いでくれた、火、水、風、土を司る大聖霊様。
それぞれがこの場所に置いていった、それぞれの息子、娘となる上級聖霊様。
「ねーちゃん、そんなことは、どうでもいいんだよ。
まずは水と風に覆われてしまった星に、大地を作らないと。
何か用意してあるのかい?」
二つ浮かぶ茶色い光の片方が私に近付き、念話を飛ばしてきた。
「父の世界では、海を我が物顔で泳いでいた超巨大魚と父に離反した巨人族の王戦士を仕留め封じてきたわ。
母の世界では、母に離反した魔王とその第一の部下の獣帝を封じてきたわ。
それぞれの体を核にすれば、それぞれの特性を持つ大陸が作れると両親には言われたの。」
私は念話に対し声を出して答えていた。
「他には何か言われ無かったかい?」
もう一つの茶色い光からも念話がきた。
「あ、あと、どちらかの極には何か陸地を作りなさいって言われたのよね。
潮力がどうのこうの言われたんだけどよくわからないわ」
「じゃあ俺たちが五つの陸地を作るよ。
封印を出してもらえるかな。」
私は四つの封印珠を召喚しそれを土の聖霊様の前に浮かせた。
「その前に良いか?」
赤い光の、きっと火の聖霊様な一つが念話をしてきた。
「俺は大地の奥深くの玉の中で眠りにつき……じゃなかった、「玉」の炎の力を監視しているから。
それでいいか?」
私がその念話に、
「わかったわ」
と答えると、火の聖霊様の一つはその場から消えた。
その間に、土の聖霊様たちは封印珠と一緒にその場から消えていた。
私から見て右側の海が揺れた。
そしてゆっくりと海を割りながら大地が現れはじめた。
海が揺れ大地が生まれる。
そして空気も揺れる。
一回はそんなに長い時間ではないけれど、都合五回空気が揺れた。
きっと大地がその数、産み出されたのだと思う。
「さすが土の。
回転に問題が無いように陸を作ったようだ。」
緑の……風の聖霊様が念話をしてきた。
「空気に魔素がかなり濃く含まれ始めたけど何を封印していたの?」
続けて、もう一つの風の聖霊様が念話をしてきた。
「母の世界の魔素の塊と言われた魔王とその魔王が作った獣帝かなぁ。
確かに二体とも魔素の塊だわ……ははは……。」
私がそう答えたとき、
どがぁぁぁぁぁん!!
と大地が爆発するかのようなあたり一面に音が響き、最初にできた目の前の陸地の先に壁が生まれ、さらには噴煙を上げていた。
そして超巨大な岩が海の中に降り注ぐ。
「火の聖霊のばか野郎が、噴火させやがったか!」
土の聖霊様が現れながらに私に念話してきた。
「海が湯だってしまうわ。わたしは、海に潜らせてもらうわね」
一つの青い……水の聖霊様はそう念話をしてきながら消えて行った。
その時再度、
どがぁぁぁぁぁん!
と爆発が起こった。
「こんな爆発を続けていたら星の回転がおかしくなるわ。
私、あいつのところに行ってくる。」
そう念話を残してもう一つの火の聖霊様も消えて行った。
しばらくすると噴煙も治まり、世界にはいくつかの島が出来ていた。
「風の聖霊様、汚れたよどんだ空気をどうにかできませんか?」
私がそう願うと、任せてって念話をくれて風の聖霊様は踊るように飛んで行った。