第8話 殺戮と破壊の女神 後
残酷な表現があります。苦手な方はご注意ください。
私の黄金の髪よりも少し薄めの黄金色に輝く衣を身にまとい、身の丈ほどの長さの白亜の杖を手に持ち、私は天空城の上空に浮かんでいる。
地上三万メートルを超える世界。
天空城を守る結界をみんなに任せ、私は結界から抜け出しているのでちょっと寒い。
この高さを目指して飛んでいる竜種には、ちょっとどころではない寒さだろうけど。
でもそのおかげで力いっぱいお仕置きができる!
と言う気分で空の果てを眺めている。
素の状態ではハリィのように眼が良くないから、眼に力を込め視力を強める。
すると私の眼に黒い点が見えるようになった。
あれがお馬鹿な竜種ね。
そう思っていたとき、私の背後に巨大な私が映った。
今、世界中の空には私の姿が映し出された。
時間ね。
私は一度目をつぶり深呼吸をすると、目を明け、杖を振りかざした。
そして歌うように流ちょうに語る。
「聞け。
世界に暮らすものよ。
私の名はアハティス。
世界の創造神であり、他の六柱を束ねる神である。
今回、竜種が神に刃を向けた。
至極残念ではあるが、現在、神に逆らう竜種に組するものすべてに神罰を決行する。」
そう言ったとき、私の映像の隣に竜達の飛行する姿が映し出された。
「見よ。
こやつらが神に刃を向けた竜である。
竜は現在、神の居城に向かい進行している。
降伏勧告はしない。
神に牙を向けたもの、一切許さず、神の力を持って牙を砕く。」
私の目には黒い点であった竜種が、豆粒の大きさくらいに見えるようになった。
映像の中では、今の言葉を聞いて身をひるがえし離脱した竜も出ているようだ。
でももう遅い。
一度私達に牙を向けたのだから。
私にためらいは無い。
「愚か者が、逃げられると思うか!」
私がそう叫ぶと離脱を始めていた竜に向かって、空から黄金色の雷槍が降り注いだ。
雷槍は、その身をひるがえし逃げたすべての竜の体を貫き、その身を焼きながら命を奪い、地面へと落とした。
次は向かってくる竜たち。
こいつらは一撃では殺さない。
「まずは魔素を失い、寒さに震えなさい。」
私は力ある言葉によって世界に命じる。
その言葉に反応し、魔素の力で体を守りながら飛んでいた竜は魔素を失い体表面を白く凍らせながら大地に向かって落ち始めた。
「翼は石に。」
さらに力ある言葉により、寒さに耐え翼をはためかせて飛んでいた竜も翼が固まり大地に向かって落ち始めた。
そして竜たちは流星が大地に吸い込まれるように落ちていった。
数多くの竜は、落ちた先が陸海問わずにその面との衝突で大地を壊し、また自らの体を肉片とし飛び散り血だまりを作っていた。
それでも双頭竜や数匹は、その体の一部分を失うものも居たが生きていた。
私は分身体を用いて双頭竜たちそれぞれの前に瞬間移動する。
空に浮かぶ映像も切り替わり、私と対峙した竜それぞれを映している。
その映像のひとつに今回の騒動の原因となった双頭竜の姿もあった。
双頭竜、もとい、右半身から落ちたのか、右側半分、頭の片割れもつぶれた元双頭竜となっていたが。
「竜ごときが何を勘違いしたのか。
ただ、この高さから落ちて命があったことは誉めて使わす。」
私がそう叫ぶと同時に雷槍が高き空から落ち、元双頭竜や映像内の生きていた竜すべてにに突き刺さり、その命の灯火を消し去った。
「竜への罰とし、神に牙を向けた竜の命を輪廻に載せることはしない。」
私はそう叫ぶと、輪廻に載ろうとしていた竜の命を我が手に集め紫色の珠を作る。
「私の名前はアハティス。
世界の創造神であり、他の六柱を束ねる神である。
神の名の元にこれにて断罪は終了する!」
そして私は消え去る。
空には竜との衝突で真っ赤に染まり破壊された大地の映像だけが残った。
これが、殺戮と破壊の女神アハティスと言う二つ名が世に出回った原因となった事件である。




