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転生

<一定以上の思念の存在を感知しました。能力、【自己解釈】スキルを付与します。>


 そんな報告じみた声に意識を持ち上げる。


 ん?

 あれ、俺は死んだはずじゃ?

 トリックでも仕掛けていただろうか。


 だが、そんな状況で自分の視界は、未だにブラックなままのようだ。

 ブラックアウトからのフェーズアウトは何時頃でしょうかと、声を上げようにも声を発することは出来ない。


 何だこれ。

 あれ、もしかして死後の世界と言うやつじゃないだろうか。


 見た様子、異世界直前でありがちな白い空間でもないし、なんなら感触も視覚も嗅覚も、ペロッ、味覚もないみたいだ。

 舌すら動かせた気がしない。


 今考えられる一番しっくりする答えは、あの隕石衝突でなんとか生き延びたけれど病院の上で植物状態になってしまった、というのが有力だろう。

 ん?

 ああ病院の上ってなんだ、ベッドの上だな。


 でもあれ、確実に逝っちゃったやつだったと思ったんだけれど、どうなのだろう。

 眉間を打ち抜かれたのは間違いない筈だし、ピストルの銃弾なんて目じゃないくらいに破壊力はあったはずだ。

 モハメドさんも真っ青なダメージである。


 一般人の自分の肉体なんて頭どころか全身木っ端みじんでもおかしくない。

 なんかあの場にいた人にショッキングな映像をお届けしてしまった気がするな。

 最悪頭だけ飛び散って首無しトモエさんにSANチェック必至である。


 お子さんには是非でも見せられ無い奴だろう。

 それだけは保証付きで間違いない。

 そんな皆さんには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいである。


 まあ、そう言う訳で体感的には確実に死んだはずなんだけれど。

 それともあの情景自体夢で、夢落ちだったらいいなあ、なんて……。


 まあ、それ以前の記憶も、隕石にぶつかった記憶もホント思い出したくないレベルで鮮明に覚えているから、そんな言い逃れ出来ないんだけれど。


 じゃあ、もしかして、もしかするだろうか。

 身体も動かせないし、五感も何もないけれど、こんな状況でも最後に至った夢くらい過ってもいい。


 ――異世界転生。


 目覚める直前も耳に意識に何やらが響いた気がするし、試すだけならタダなのだから。

 意識を集中させて、頭の中に念じてみよう。

 そう、ステータス、と。


--------------------------------------------------


名称:ノルタイト

分類:天然石:凝灰石

耐久:120(+20)

硬度:56

色彩:濃灰色

性質:【頑丈】【吸着】

意志:【自己解釈】


--------------------------------------------------


 ひいぃっ。

 って、え、何だコレ?


 すると意識の中なのか、視界ではない何か良くわからない領域に、文章なのか概念なのか、それすら自分の認識ではわからないのだよ、ってなものが、虚空に浮かんでいる。


 ん?

 え、何だコレ?

 思ってたのと随分と違うんだけれど。

 随分と言うか、随分諸々ごっそり違うんだけれど。


 ……落ち着いてよく考えてみよう。

 深呼吸をして、深く息を吸って、吐いてー、ふぅ……。

 息とか吸えないんですがそれはどうしたらいい?


 ああ、そうか、理解ったぞ。

 つまり、自分は――、


 “石に殺されて”“石になった”って訳だな?


 いや、まるで意味が理解らんぞ。


 隕石で頭がやられたか? 

 いや、十中八九、九分九厘粉砕デストロイな訳なんだろうけど。

 ちょっと落ち着いてもう一度確認してみるか。


 そう思って頭の中に、先程の情報を映し出す。


--------------------------------------------------


名称:ノルタイト

分類:天然石:凝灰石

耐久:120(+20)

硬度:56

色彩:濃灰色

性質:【頑丈】【吸着】

意志:【自己解釈】


--------------------------------------------------


 うん。

 問題なく、間違いなく情報が頭に入ってきている。

 まあ分類から察するに石っぽいので、頭とか脳とか既に消え去っているんだろうけどそこは比喩だ。


 で、この状況で自分がこの意味不明な情報を鵜呑みにするか、と言われれば答えはYESとなる。

 何でかと言うと、もう色々どうでもよくなっているから、というのが一番の理由で、ここで「まさかそんな」って考えていても一向に構わないけれど、いっそ自分は“意志のある石です”だとか言っちゃったりなんかした方が、事実として精神衛生上楽だからって事だ。


 もういっそこの状況を楽しんでしまった方がいい。

 物事っていうのはそんな感じに適当に転がしてた方が面白可笑しく生きていける。

 と、思う事にしよう。


 よし。

 性能の確認だ。

 なんだかんだで心はドキドキ、胸はわくわくはしているはずだ。

 死んで消えてなくなる覚悟も少しはしていたわけだから、この棚ぼた状況にはちょっとハイテンションなきらいがあるのだ。

 意識的な雰囲気で腹式呼吸をしつつ、そろそろ本題。


 まず、自分の名称は「ノルタイト」というらしい。

 どうせならファンタジーにありがちなアダマンタイトにしておいてくれればよかったのに、なんて思ってみたりするが、実際どうしてもアダマンタイトになりたい訳じゃない。

 オリハルコンとかミスリルでもいい。

 なんならダイヤモンドでもいいのだ。

 ついでにさらに欲を言えば人間がいい。

 やっぱ人間がいいよね。

 ちらっ……。


--------------------------------------------------


名称:ノルタイト

分類:天然石:凝灰石

耐久:120(+20)

硬度:56

色彩:濃灰色

性質:【頑丈】【吸着】

意志:【自己解釈】


--------------------------------------------------


 まあ、そうですよね……。

 じゃあ、次、分類かな。

 天然石で凝灰石らしい。

 人工なんて目じゃない、正真正銘の天然っ子である。

 やったぜ。(やったぜ?)


 凝灰岩と言えば火山灰が堆積して出来る岩石という話だったはずだから、火山の麓とかが現在位置だろうか?

 川に流されたりしていたらもうよくわからないけれど……。

 まあ、見えないし聞こえないしで特に場所なんて無意味だから、気にはなっても大して重要度は高くない。


 それで、次は硬度、ねぇ……。

 正直数値にされてもピンと来ない。

 ダイヤモンドの硬ささえ、ああ、確か世界一堅い鉱石って有名だよね。

 程度の浅ぁい認識だ。

 一時期、気になってネットで調べた時に、ダイヤモンドよりも固い物質があるって知って、まあよくわからんな、と結論を出したことを思い出す。

 結局そんなの一般人には厨二心を満たすためのスパイスに過ぎないんだから。


 で、色は濃灰色って情報だけど……これも正直確認のしようもないし重要でもない。

 なんかオーソドックスな路上の石のイメージカラーだってことで良いだろう。


 さて、ようやくメインディッシュなわけだけれど。

 性質、【頑丈】と【吸着】ねぇ……。


 字面だけじゃあさっぱりわからん。

 せめて注釈の1つや2つ貰えると助かるのだが、と。


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【頑丈】

 固く、丈夫である性質。

 耐久力に20の上昇修正。

 また、【割れ】の状態変化に中の耐性を持つ。


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【吸着】

 自身の接触面に存在する物質を自身の一部に接着する性質。

 接着した物質は、その物の一部として認識される。


--------------------------------------------------


 やれば出来るじゃねぇか。

 おっと、台詞が上品ではないね、言い直そう。

 出来るじゃあないか。


 おそらく次に見ようと思っていた【自己解釈】君のおかげだろうけれど。

 そこら辺は気にもせず、注釈を読む。


 まあ、おおよそ字面通りらしい。

 頑丈で、周りの物を吸着する性質。

 カタ◯リダ◯シイでもすればいいのだろうか?


 取りあえず流れで【自己解釈】にも注釈を貰う。


--------------------------------------------------


【自己解釈】

 自己を認識する意志に、最初に付与される知的系スキル。

 猶予期間内に自己が想っていた形で自身を認識することができる。

 残り時間:00:43:08


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 ふむふむ、ふーん。

 なんだかよくわからないが、この効果じゃあ所謂自分の様な、「異世界から意識持ち越してる」みたいな輩じゃない限り、これ自体自覚できそうもない様に感じる。

 自己を認識っていうのがどのタイミングなのかわからないけれど、自分の事を知るために文字にして理解しようなんて発想が、そんな即興で出来るとも思えない。

 そんなのは最初からそこそこ出来上がってる意識体じゃなければ難しいだろう。


 どっちでもいい考察を、なんかドヤ顔しているつもりで考えてみるも、だからなんだという話で、一人でやっていても虚しいだけだった。


 で、この後どうしようか。

 取りあえず読み終わってしまった。

 残り時間とか出ているけれど、特に今ので不都合もない。

 出来れば【自己解釈】の範疇に視覚とか触覚を貰いたいところだけど、流石に無理だろう。

 自己を解釈するスキルなのか自己の解釈のスキルなのかそこが良くわからないからなあ。

 これがもし自己の解釈で効果が変化するチートなスキルなら急いでいろいろ考えないといけないけれど、そんな記述はどこにもないからなあ。


 あれがいいかな、異世界ファンタジーの鉄則、魔力の知覚とか。

 やってみるか。


 んん、んんんっ?

 んぐっ……、ん?

 ぐむむむむむむむっ!

 こいっ!!


 なんだこれ、すっごい阿保みたい。

 石に感覚なんてないってのを最初に自覚しちゃった所為だろうか?

 それとも普通に魔法なんてないんだろうか。


 でもこんな文字が得体の知れない領域に浮かんでるし、これが自分の幻覚や妄想だと確定しない限りそんな世界なんだと信じていたい。


 でもよく考えてみたら自分のステータスに魔力なんてなかったよなあ。

 魔力の表示付け足してくれない?


--------------------------------------------------


名称:ノルタイト

分類:天然石:凝灰石

耐久:120(+20)

内包魔力:0

硬度:56

色彩:濃灰色

性質:【頑丈】【吸着】

意志:【自己解釈】


--------------------------------------------------


 なんだよ魔力あるじゃないk……、

 チッ、なんだよつまらぬなあ。

 魔力あるんなら少し位くれてもいいじゃないか。

 全くこんな仕打ちとは、ひどい話だ。


 とかなんとか文句は勿論吐いていくけれど、でも考え方はこれで間違ってない気もした。

 なんか自分の認識というか、掴めそうな感覚があった気が、しないでもない気がする。

 こういう時は合わせ技、コンボを決めればおのずといい感じの結果が得られる気がする。

 なんか気がするばっかり言ってて、説得力に欠けるけれど、まあ手探り状態だから致し方ないだろう。


 取りあえず【吸着】とやらで自分の周りの物質を自分の一部にしようとすれば、自己の範疇に増えている物を知覚くらいできるんじゃなかろうかと、【自己解釈】と併用でもしてみましょうか。


 気合入れて行くぜ。


 うおおおおおっ!

 せいっ!!

 やあ!


 すると、ぬるり、と。

 何かが自分に流れ込んでくるような気色悪い感覚が――、

 あ。

 これ出来たわ。

※誤字などあったら教えて下さい。

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