新しい出会い 続
「暇だ……」
ニーズヘッグは桐太の家でゴロゴロと暇を持て余していた。
家から出ないこと! と桐太から厳命されているのだが、それをニーズヘッグは律儀に守っていた。
ニーズヘッグにそれを守る必要は本来であれば無い。なぜならニーズヘッグはその気になれば桐太を殺し、この家を食らい、この世を地獄に変えることぐらいはできるのだ。魔力がなく魔法が撃てずとも、力は並みの人間よりは強い。
けれども、ニーズヘッグはそれを是としなかった。なぜならば、桐太を殺してしまえばニーズヘッグが初めて感じたあの味というものにありつけなくなるかもしれなかったからだ。だからこそ、ニーズヘッグはこの家に残り続けていた。
かといって家の中でニーズヘッグが何をできるわけでもなく、ダラダラとテレビを見ているだけだったのだが、1週間もすればそれもいい加減に飽きてしまった。
今日も今日とてベッドでゴロゴロしていると、ガチャリと鍵の開く音。
ピクリ、とニーズヘッグの耳が動き、ベッドから飛び起き玄関へと向かう。
「とーたー! 今日は早い……な……?」
桐太の横には、ニーズヘッグの知らない女が立っていた。かさねは玄関に立っていた美少女に目を奪われた。桐太はニーズヘッグの姿に言葉を失った。
桐太、ニーズヘッグ、かさねの3人が邂逅する。3人は3人とも絶句した。
(とーたが知らぬ女を連れてきた……こやつ何者だ……?)
(なんで服着てないんだよ! ちゃんと確認してから先輩を中に通すべきだった……)
(何この美少女!? けどなんで裸……?)
しばしの絶句の後、最初に動いたのは桐太だった。
「ニーズ、とりあえず服を着て来て……」
「う、うむ。わかったのだ」
ニーズヘッグは服が苦手だ。今まで着ていたことがなかったのだから、仕方がないといえば仕方がないのだけれど、肌にのっぺりと張り付くのがどうにも苦手だった。
それでも桐太がいるときは服を着ていた。しかし、桐太がいないときは服を脱いで開放的な気分を味わっていた。
すごすごと部屋へ退散していくニーズヘッグをよそに、桐太はかさねをリビングへと案内する。「お茶を淹れるので待っててください」と言われたかさねは、テーブルの前に座るがどこか落ち着かない様子だった。
かさねが落ち着かないうちに、寝室の扉が開きニーズヘッグが現れる。
桐太の中学時代のジャージに身を包んだ残念美少女だ。そもそも、裸で玄関先に現れた時点で相当残念なのだけれど。小顔に小柄、それに整った顔立ちはとてもかわいらしいのだが、いかんせんそのジャージが残念だった。色合いがエメラルドグリーンのような色で袖や裾が窄まった、いわゆる芋ジャーだった。さらに髪もボサボサのままで、もうとにかく残念だった。
「お持たせ」
桐太もお盆を持ってやってくる。お茶をテーブルへと並べ、御茶請けを用意する。それとは別に、ニーズヘッグ用へと山のようにお菓子を用意した。
桐太がかさねの向かい側に座ると、ニーズヘッグは桐太の横に座り、一心不乱にお菓子を食べ始める。山のお菓子はものの数分でニーズヘッグの腹へと消えた。お菓子だけではなく、お菓子の包装も一部腹の中へと消えた。
かさねがその様子に唖然としていると、桐太が話し始める。
「小林先輩に、こいつのことでちょっとお願いがあるんです」
そう、桐太は切り出した。