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ニーズヘッグとお勉強


  九重桐太は大学生だ。地元を出て、バイトと仕送りでもってどうにかやりくりをしている一人暮らしの大学生だ。

  日中は授業を受け、昼や夕方からアルバイトを始める。ファミレスの調理の係だ。

  朝はニーズヘッグのための大量の朝食を作り、昼、夕方はアルバイトで料理を作り。夜帰ってきてからはまたニーズヘッグのために料理を作る。

  桐太自身料理は嫌いではなかったが、こうも料理漬けだと流石に疲れてくるというものである。


「そういうわけで今日は外食です」

「桐太少年の料理を食べにきたのだけれど……」

「諦めてください。流石に疲れたんです」


  都合が取れ、桐太の料理を食べようと思ってやってきたかさねにとっては、これは不幸だったと言える。

  ニーズヘッグはそんなことはつゆ知らずと言った様子で、今日は何を食べるのだ?  何て聞いてきた。


「いいや、まだ決まったわけじゃないさ。つまりはそう、桐太少年を癒してあげればいいのだろう?  ならばこの身体」

「却下。何をする気かわからないけど却下です」

「本当はナニするかわかっているんだろう?」

「あーあー、聞こえません聞こえません」


  桐太とかさねがじゃれあっていると、ニーズヘッグが疑問を顔に浮かべながら訪ねてくる。


「とーたを癒すのにかさねの身体を使って何をするのだ?」


  桐太とかさねは顔を見合わせる。

  彼らにとってはこのような内容のやり取りは、そう頻度こそ多くはないが行われる。ニーズヘッグにはその意味がわかっていないらしい。

  そんなニーズヘッグを他所に、桐太とかさねはひそひそと話し始める。


「これは、どうしたものかな」

「先輩が言い始めたんだから、先輩がどうにかしてください」

「はぁ、仕方がない」


  かさねはニーズヘッグの方へと振り向くと、ある質問を投げかけた。


「ニーズちゃん、赤ちゃんってどうやってできるか知ってる?」

「ぶっ」


  桐太は思わず吹き出してしまう。


「あんた何言ってんだ!」

「いやいや、こう言うのは照れなんてしないで直接聞いた方が早いだろう?」


  あっけらかんと答えるかさねに、桐太はブツブツと文句を言う。

  ニーズヘッグは少し考えてこう答えた。


「わからん。が、男女がキスでもすれば子ができるのだろう?  タラスクのやつが昔そんなことをいっとった」


  固まる。桐太とかさねは完全に固まっていた。色々と、聞き捨てならない言葉がニーズヘッグの口から出てきたからだ。

  ニーズヘッグはお茶をすすりながら懐かしむように言うが、桐太とかさねはそれどころではなかった。


「ちょっとまって、思考が追いつかない」

「桐太少年、落ち着こう。いや、私も落ち着けていないのだが、うん、落ち着こう」

「なんだか酷いな。……あ!  よもやタラスクの奴、嘘を教えたのか!  あの軟派野郎め!」


  桐太の思考はさらに固まる。

  ニーズヘッグが「軟派野郎!」なんて言いだしたのも面白かったし、意外と勘が鋭いな、なんて思ったり。


「あー、うん。ニーズちゃん。タラスクというのはその……邪龍の仲間なのかな?」


  かさねが恐る恐るニーズヘッグに尋ねる。

  ニーズヘッグはなんでもないという風に、あっけらかんと話し始めた。


「タラスクは我と同じ邪龍でな、なんだったか……色欲の邪龍だったか。そんな風に呼ばれてたな」

「タラスク……聞いたことないなぁ」

「日本じゃあまり馴染みはないかもね、旧約聖書に出てくる龍……というよりは亀のような化け物だったはずだ」


  亀のように硬い甲羅を持ち、6本ある足や長い尾で暴れる龍。子どもを喰らい、若い娘を襲う。そういう化け物だと、かさねは言う。

  ニーズヘッグも「そうだったそうだった。いや、子どもは食べなかったが……うん、大体あってる」と言っている。


「つーか先輩なんでそんなに詳しいんですか」

「常識だよ常識」

「雑学に分類されるんじゃないんですかねぇ」


  知識を披露したのにもかかわらず、なぜか残念に思われるかさね。桐太の言葉に対する返しが悪かったのだろう。

  桐太はそんな軽口を叩きつつも、何かのフラグじゃないだろうかと1人不安になるのだった。


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