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ニーズヘッグの日常


  ニーズヘッグが就職?  してから数週間が過ぎた。

  桐太の家に来た最初の1週間ほどは家でごろごろとしているだけだった彼女も、今では色々行動するようになっていた。


「それではとーた、行ってくるぞ」

「人様に迷惑かけんなよ?」

「最近はそんなことしてないぞっ……多分」


  来たばかりの頃は何でもかんでも食べていたニーズヘッグであったが、最近はそんなことはなくなっていた。

  完全に腹が満たされることはまだないのだが、それよりも味のしないものを食べる気がしないという気持ちの方が大きくなっていた。邪龍の姿をとっていた時にはできていなかったことが、人間の姿で行動するようになってからできるようになっている。ニーズヘッグにとって、それは成長しているということだった。もっとも、うっかり食器の類を食べてしまうのはたまにやらかしてしまうのだが。

  ニーズヘッグはこの世界へとやって来てよかったと思っている。相変わらず腹は膨れないが、この世界で行うこと、行った場所、食べるもの、その全てが新鮮だった。

  多少の空腹感はあるが、そこら中で食べ物は売っている。買うための金も、モデルの仕事で大量に入ってくる。特に困ることはなかった。


「おっ、嬢ちゃん!  ちょうど揚げたてだよ!  食ってくかい?」

「うむ、5個ほどもらおう!」


  道すがらに通りかかる商店街の肉屋で、揚げたてのコロッケを買う。普通の人間なら十分すぎる量だが、ニーズヘッグにはおやつにもならない。

  ひょいひょいと平らげると、すぐ近くのパン屋で数10個パンを買って、食べながら歩いていく。

  余談だが、美味しそうに食べるニーズヘッグを見て、彼女が立ち寄った店は売り上げが上がったらしい。特に毎日のように立ち寄る肉屋とパン屋は相当売り上げが伸びたそうな。

  そうして歩き続け、ようやく目的地へとたどり着く。


「来たぞ!」


  ずばんとドアを開け、あるビルの1室へと入っていくニーズヘッグ。その後頭部を、スパンと叩かれる。


「遅刻だよ。いつまでたっても治らないね」

「仕方なかろう。あの商店街は美味しそうなものの誘惑が多すぎるのだ」


  ニーズヘッグは後頭部を抑えながら後ろを振り向く。そこには、かさねが立っていた。

  なにやら少し怒っている様子のかさねに、ニーズヘッグはタジタジだった。それもそのはず、ニーズヘッグが遅刻している間かさねは待ちっぱなしだったのだから。それも、今日だけではなくもう常習犯だった。


「そんなものは言い訳にならない。今日という今日は説教だ」

「こ、怖いぞかさね。少し落ち着くといいぞ?  な?」


  こればかりはニーズヘッグの自業自得である。

  暴食の邪龍と恐れられていた彼女も、今はこうしてただの人間1人に怒られているのであった。

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