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撮影会


「ニーズちゃーん、目線こっちに向けて……できればもうちょっと笑顔で!」

「こ、こうか?」

「いいよー、じゃあ撮り始めるからねー!」


  パシャリ、パシャリ。シャッターを切る音が聞こえ始める。以前買ったワンピースに身を包んだニーズヘッグが、写真を撮られている。

  シャッターを切るカメラは一般用のそれではなく、いかにも高級そうな、それでいて高性能そうなものだ。桐太やニーズヘッグにはカメラの違いなんてわからないのだが。


「しっかし……初めて来ましたけどすごいもんですね」

「普通はこんなところに来られないからね」


  桐太はニーズヘッグが撮影されているのを眺めながら、かさねと話していた。

  今日はニーズヘッグの初めての撮影日だ。かさねからの依頼で雑誌のモデルのヘルプをしてほしいとのことで、フォトスタジオまでやって来た。本来は桐太は来る必要はないのだが、保護者枠ということで今日だけは来るようにとかさねから厳命されていた。特別問題が起きなければ、次からは1人で、もしくはかさねと一緒に来る予定だ。

  問題らしい問題は起きてはいないが、桐太は別のことで頭を抱えることになる。


「というか、なんで先輩が今俺の横に立っているんですか」

「いやぁ、カメラマンの彼がニーズちゃんのことを気に入ってね?  いや、カメラマンだけじゃなく、他のアシスタントや雑誌の編集なんかもそうなんだけど、『1、2ページぐらい作るからニーズちゃん単品で撮りましょう!』なんて気合はいってさ」


  元々ニーズヘッグは体調を崩して来られなくなったこの代わりであった。その子の単独での撮影は終わっていて、かさねとのツーショットを撮る必要があったのだが、体調を崩してしまった。

  その代わりにやって来たのがニーズヘッグなのだが、随分と関係各所に気に入られてしまい、かさねとのツーショットは撮り終わったのに、未だに撮影が続いているのだった。


「はぁ、なんだってこんなことに」

「まぁまぁ、いいじゃないか。これで人気が出れば、いや、間違いなく人気出るよ。そうしたら雑誌に引っ張りだこで収入が多くてに入る。食糧事情は解決じゃないかな」

「そうなればいいですけどね」


  桐太はニーズヘッグが人気が出るだなんて、これっぽっちも思ってはいなかった。

『あの』ニーズヘッグだ。家で食っちゃ寝して、常人の何倍も食べ、常識だって足りてない、あのニーズヘッグだ。確かに見てくれはいいかも知れないけれど、中身が残念すぎる。

  たかだか数日、されど数日一緒に暮らしていればそれぐらいわかる。

  などと桐太は考えていた。


「いやいや、なるよ。現役モデルである私がいうのだから、間違いないさ」

「本当ですかねぇ」


  この後発売した雑誌『dólce』が過去最高の売り上げを記録し、ニーズヘッグは専属モデルとして有名になるのだがそれはまた後の話。

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