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買い物に行こう  2


  下着を身につけ、しっかり文明人となったニーズヘッグはげっそりとしていた。

  かさねに引き摺られ、何件も何件も店々を回り続けたからだ。

  この総合商業施設には、10数軒のアパレルショップがテナントとして入っている。中には男性物のショップもあるが、その大半は女性物のショップである。

  代わる代わる着せ替えをさせられ、ニーズヘッグはほとほと参っていた。

  一方で、桐太もへろへろだ。

  入る店々で最低1着、多いときは10着もまとめて買うものだから、荷物持ちにさせられた桐太にとってはたまったもんじゃない。両手には紙袋が大量に下げられている。


「小林先輩、そろそろ休憩がしたいです……」

「とーたに賛成だ、我ももう疲れたぞ……」


  桐太もニーズヘッグも、ベンチに腰掛けてぐでー、と空を仰いでいる。

  その様子を、行き交う人々がチラチラと見てくる。桐太はその視線が刺さるようで居心地が悪かったが、それも仕方がないというものだ。

  そもそもとして小林かさねは現役のモデルだ。メガネや帽子で変装をしているが、その溢れる美人のオーラを隠しきれてはいなかった。

  そしてニーズヘッグも視線を集めるのに一役買っている。

  今のニーズヘッグは、白いワンピースに薄ピンクの薄手のカーディガンを羽織り、御御足は隠れることなくヒールの高くないサンダルを履いている。元々の見た目と合わせてかなりの美少女に仕上がっていた。

  そんな美女美少女を連れて歩いている桐太には、羨ましいという男性からの目線が飛んでくる。

  かさねはそんな2人の様子を見ながら、スマートフォンを覗き時間を確認する。


「あぁ、確かにもういい時間だね。ちょっと早いけど、晩御飯にしようか?」

「賛成!  賛成だぞ!」


  かさねの言葉にニーズヘッグはものすごい勢いで食いついた。暴食の邪龍にとって、服よりも食事の方が重要だった。


「晩飯は俺も賛成ですけど、どこで食べるかとか考えてるんですか?  こいつかなり食いますし、服だって先輩が全部出してるのにこれ以上お金使わせるのも悪いですし」


  桐太の懸念は最もだった。

  今回の買い物、服や下着の代金はすべてかさねが出している。桐太がニーズヘッグの食事代ですでに金欠だったことと、かさね自身がニーズヘッグをコーディネートしたかったことが理由だ。

  服をかさねの好きに買う代わりに、代金はすべてかさねが持つという約束を買い物に出る前に行っていた。服に興味がないニーズヘッグにとっても、そもそも女性服に詳しくなく、金銭的にもありがたい桐太にとっても、その申し出は有り難かった。それでこんなにも疲れるとは、桐太もニーズヘッグも思ってもいなかったのだが。


「いやいや、1食分ぐらい大丈夫だよ。まぁ期待して奢られてくれたまえ」


  そう自信満々に歩いていくかさねの後ろを、桐太とニーズヘッグはただただついていくのだった。

  商業施設を離れ、しばらく歩いていくと飲食店の固まったエリアへとやって着た。

  そこら中からいろいろな匂いが漂い、フラフラと勝手に離れて行ってしまいそうなニーズヘッグの手を引きながら桐太は歩く。


「いろいろな匂いがするぞ!  あれはなんだ!?」

「ああ、勝手に離れるな!  先輩、一体どこに行くんです?」


  数ある店々に脇目も振らず、決められた店に向かってかさねは歩いて行く。そしてある1件の店の前で足を止める。


「それはね、ここに来ようと思ってたんだよ」

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