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ニーズヘッグ、働くってよ


  お願いがある。そう桐太は切り出してから、ニーズヘッグのことを話し始めた。

  ニーズヘッグとの出会いのこと、今一緒に暮らしていること、そして、ニーズヘッグが邪龍、化け物であることを。

  ニーズヘッグも自身のことを話し始めた。元いた場所でありとあらゆるものを食べつくしていたこと。世界樹の根に齧りついていたら、攻撃されて気がついたらこの場所にいたことなど。それは、桐太もまだ聞いていないこともあった。


「こんなにかわいいのに、化け物だなんて信じられないな」


  そう言ったかさねの目の前で、お茶の入った湯のみを噛み砕いたニーズヘッグを見て、さすがに桐太も引いた。ニーズヘッグはお茶が無くなったと残念そうな顔をしていた。

  かさねも相当驚いていたが、すぐに平静さを取り戻して桐太に話し始めた。


「つまり、ニーズちゃんの食事代がまずいということだね」

「全くもってその通りですよ」


  かさねの指摘に、桐太は肩をすくめてそう言った。

  ニーズヘッグは暴食の邪龍だ。その食欲はとどまることを知らず、今も彼女は腹を空かせている。もっとも、味を覚えた今は段々と量より質に拘ってきているが、それでも常人の食べる量に比べれば何倍も多い。

  そしてその食事は桐太が用意をしている。材料費から調理まで全て桐太持ちだ。外食でもしようものならお金がいくらあっても足りないだろうと、せっせせっせと食事をこしらえていたが、それすらももう限界が見えてきていたようだった。


「確かに、このかわいさならモデルとして十分に、いや、十二分に通用するよ。私が保証する」

「まぁ、見てくれは通用すると思うけど……常識がないしなぁ……」

「馬鹿なことを言うなとーたよ、我だって常識ぐらい持ち合わせておるわ」


  てれびで見たからな!  なんて高笑いをするニーズヘッグ。存外この世界に馴染んでいる様子だ。


「今回はヘルプだし、私とセットでの写真だけだからね。そこまで常識は必要ないよ。ただ……」

「ただ?」


  大丈夫だと言いつつもうむむと唸るかさねに、桐太は疑問を返す。

  かさねは神妙な面持ちで言葉を返す。


「ただ、この子のかわいさだと、次も出てくれ、なんてオファーが来ると思ってね」

「えぇ……そんなバカな」


  そこまではないだろう、と桐太は思いつつニーズヘッグの方を向いた。

  白い肌に、透き通るような白髪。全体的に小柄ではあるが、かえって庇護欲をそそられる見た目だ。

  ニーズヘッグはといえば自分用に別置きしていたおやつを、淹れ直したお茶とともに頬張っていた。まるでリスのようにお菓子を頬張る姿は、何度見ても残念だ。

  確かに黙っていればかわいいのはわかるのだけれど、普段の残念さの方が際立ってしまってどうにもそういう風には見れない桐太。


「いやいや、十分にあるよ。現役でモデルしてる私が言うんだしね」

「先輩は単に美少女好きなだけじゃないですか」

「かわいいは正義って、昔から言うだろう?」


  机に肘を置き顎で手を組みつつニッコリと笑うかさね。

  かさねはかわいいものに目がなかった。初めはぬいぐるみだったり服だったりしたものが、どこでどう拗らせたのか、今は特に美少女を愛でるようになっていた。

  そして自分自身もかわいくあろうと、その努力を怠ることはなかった。ただ、かさねの理想よりは、自分の身体は出るところが出てしまっていたのだが。


「まぁ、とにかく善は急げだ。早いとこ終わらせて報酬がないと、ご飯が食べられなくなくなってしまうだろ?」

「なに!?  それは困るぞ!」


  今まで話についていけず黙っていたニーズヘッグだったが、ご飯が食べられなくなってしまうという言葉に反応する。


「ニーズちゃんの写真を撮らせてくれたら、お金がもらえてそれで美味しいご飯が食べられるんだけどなー」

「先輩、あんまりニーズに変なことを……」

「やるぞ!  うまい食事ななくなるなぞもってのほかだ!  かさねよ!  我をそこへ連れて行くが良い!」


  すっかりやる気になったニーズヘッグを、桐太は止めることができなかった。

  原動力は食事でも、食事以外にやることができたのはいいことかもしれないと思ったのも、止められなかった理由の1つだ。


「じゃあ早速着替えて出かけようか」

「あ、それなんですけど」


  準備をしようというかさねに、桐太が待ったをかける。


「ニーズ、他に服持ってないんですが」

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