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史上最悪の悲恋  作者: 林檎月 満
悲劇(喜劇?)の幕開け
9/16

偽新婚夫婦の話 参

【前回のあらすじ】

好きな物が一つ増えた。


 半日以上のフライトを終えて、僕はイタリアの土地を踏んだ。半日以上って言っても、あの後ずっと寝てたから、そんなに長い間飛んでたって感じはしない。

 太陽の光を受けてキラキラと光る美しい海の先にある豪邸。手入れされた芝生のキャンバスに、点々と花が咲き、それを見守るように木々が並ぶ広い庭は、ずっと眺めていたくもなったし、思いっきり走りたいとも思わせた。

 ……ここがマフィアの家じゃなかったら最高なんだけどなぁ。


 脇に使用人らしき人間がいる玄関前で、よく知っている顔が青年と話していた。

 本当によく知ってる顔だった。鏡の前で見る自分の顔ととてもよく似た顔だった。

 てか、なんでここにいるんだよ。クソおやz……父さん。

 父さんはこちらの姿が見えた瞬間、走ってきた。……キメェ。マジ、キメェ。


「愛しの優華ぁぁ!会いたかったよぉ!

 空の旅はどうだった?ファウスト君の私物だからもちろん快適だったとは思うけど!!」

「どなたか知りませんが、抱き付かないでください。触らないでください。寄らないでください。視界に入らないでください。気持ち悪いです。」

「相変わらず冷たいねぇ。

 君は()()()なんだから、そんな怖い顔しないで、お華みたいに笑ってよ。名前の通りに、ね!」


 キモい。

 でも、こんなんでも【誠の月】の心臓ともいえる組長だ。その組長が来ているということは、やっぱりこの結婚はもの凄く大事なのだろう。

 一応、親戚の屋敷内でも、僕の性別を隠すこととかから察するに、慎重なのも分かる。きっと、プライベートジェットに乗せたのも、直属の部下だけなのだろう。あの黒服さんとかそれぽかった気がする。


 はぁーっ。ホンっト気が重い。

 まぁ、イタリアまで来ちゃったんだから、どんだけ考えたってもう逃げられないんだ。あんま考えないようにしよう。


 それにしても、この青年は誰なんだろう。ダークブロンドの髪も、高い身長も(羨ましい)、紫の目も、白い肌も、全然見たことないし、全く知らないんだけど。

 あぁ、いや……あの顔は見たことある…かも? だれかと似てる?


「ゆうかー。人の顔をまじまじと見るのは失礼だと思わないかー。

 ファウスト君困ってるぞー。」

「えっ、あ! ごめんなさい!!」


 言われてから、ようやく自分のしていたことに気付き、反射で頭を下げた。父さんに言われたことは癪だけど。


 でも、言い訳するわけじゃないんだけど、この人そんなに困ってなかったような気がする。……むしろ面白そうに微笑んでたような。それも、ちいさい子を見るような感じじゃなくて、値踏みしてるみたいに。

 気のせいかな。


 ファウストと呼ばれた青年は、父さんの方に向き直り、やけに流暢な日本語で話した。


「いいですよ。気にしなくても。まじまじ見たくなるのも分かりますし。

 誰かに似てるって思ったんでしょ?」

「え!? えぇ、まぁ。」


 なんでわかったんだろう。


「まぁ、縁切られたって兄妹だからね。

 似てるだろう? カルロに。」


 一瞬、なにを言われたのか分からなかくて、分かるまでに少し時間がかかった。

 意味が分かった途端絶叫した。


「えぇぇぇええええぇぇぇぇぇぇええぇぇぇ!!!?? カルロさんのお兄さん!!?」

「そーだよ。

 こちらの彼こそが【Violenza(ヴィオレェーンツァ)】のボスこと、ファウスト君さ!」

「いや、若すぎない? あの【Violenza(ヴィオレェーンツァ)】のボスでしょ!!? いくらなんでも若すぎない!?」


 【Violenza(ヴィオレェーンツァ)】のボスが、カルロさんのお兄さんっていうのは聞いてたけど、こんな若いなんて聞いてない!!

 これ絶対30歳越えてないよね!!

 いちマフィアのボスでしょ!? こんな若くてなれるもんなの?


「どーも。いちマフィア【Violenza(ヴィオレェーンツァ)】の、うら若過ぎるボスのファウスト君でーす。カルロの兄だよ!

 これからよろしくね!優華さん。」


 しかも、想像以上にフレンドリー。以外過ぎる。


 これが、実の妹の笑えない()()()聞いちゃった、シスコンのお兄さん!?

 これが、監禁犯のお兄さん!?

 これが、マフィアのボス!? あ、ダメだこれブーメランだ。


 なんかもう、信じられないようなことが次々目の前で起こっていて、ついていけない。

 とりあえず、よろしくと言われた以上、返さなきゃ。


「こ、こちらこそよろしくお願いします。ファウストさん。」


 そう言って、軽く頭を下げた途端、首筋にゾワっと何かが走った。

 驚いて、顔を上げるとさっきと変わらぬ笑顔で笑っている、ファウストさんの顔があった。

 さっきとは別のもので背中がゾワゾワした。恐怖だ。


「お義兄(にい)さんでいいよ。義妹(いもうと)さん。」


 アハハハ。反応に困るなぁー。

 そんな……殺気立たれると。


「アハハハ、ありごとうございます、お義兄さん。」


 他にどうすればいいのか分からず、苦笑いした。正直、自分が今何を言ったのかもよくわかっていない。


 怖かったからだ。

 目の前にいる人に、いきなり殺気立たれて、今、自分のいるここがどういう場所か再確認した。ただのお屋敷などではない。ここはもう、マフィアの敷地内なのだ。


 無意識に、父さんの影に隠れた。恥ずかしいとか、情けないとかも思ったが、それよりも恐怖が勝った。

 僕の状態を察したのか、父さんは何も言わなかった。


「それでは、挨拶も済んだところで、中へ。お二方。」


 使用人さんたちが開けた門の前でファウストさんがそう言うのを、父さんの後ろに隠れて聞いていた。

 足を踏み入れたら最後、そのまま引きずり込まれてしまういそうな気がして、中へ、と言われたのが怖かった。


 父さんが、優しく僕の頭をポンポンと叩いて、手を引いて中へと導いた。

 父さんが、ここへ来た本当の理由が分かった気がした。


「「お邪魔します。」」

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