偽新婚夫婦の話 弐
【前回のあらすじ】
婚約者と二人きり!気まずい!(今すぐ帰りたい! by優)
いや、厳密に言えば二人きりってわけじゃないんだよ。【Violenza】の黒服さん達がドアの前にいるから。
でも、それ以外に誰もいないの! おばあちゃん、日本でお留守番してるから!
カルロさんは、顔に帽子乗せながら腕組んで寝てる。カルロさんと話すっていう手もあるんだろうけど、正直、この人に関わりたくない。
わざわざマフィアになったのが理解できない。
人を殺して何とも思ってなかったのが気持ち悪い。
監禁犯だから信用できない。
怖いんだ。分からなくて、気持ち悪くて、信じられないから、僕はこの人が怖い。
だから関わりたくないし、拒絶してるんだけど、そんなことしたって気まずいのは変わんない!!
日本からイタリアまでをこのまま過ごすと思うと、空気にでも変わった方が楽だと思う。自分の身を守るためにイタリアに向かってるのに、死にたくなってるってどーゆーこっちゃ。
耐えきれなくなって、僕は深いため息をつくいた。
その瞬間、カルロさんが勢いよく体を起こす。どうやら寝てたわけじゃなかったらしい。(……びっくりしたぁ…。いきなり動かないでよ。)
カルロさんが手を叩くと、黒服さんの一人が瞬時にカルロさんの足元にやってきた。
「Gli dare dolce.」
「Sì.」
黒服さんは、カルロさんからなにか言われたあと、すぐに扉の向こうに行った。
なんだろう。何してるんだろう。部下に何させてるんだろう。なにか持って来させてるのかな?葉巻とか?この人かなり煙草の臭いするし。この臭い嫌いなんだけどなー。
だけど予想を裏切って、黒服さんが持ってきたのは……おかしだった。
状況からして信じられなかったけど、どう見てもおかしだった。ヘンな形のパンにアイスクリームが挟まってるみたいなおかしだった。
普通においしそうだけど、カルロさんあれ食べるの!?……ギャップ(笑)
でも、黒服さんはカルロさんの方じゃなくて、僕の方に洋菓子を置いた。
「えっ!!?」
「シニョーレからの、『ブリオッシュ・コン・ジェラート』デス。ドゾ、冷たいウチに。」
「あ、うん? ありがとうございます???」
それだけ言って、元の扉の前に戻ってしまった。
いや、『ブリオッシュ・コン・ジェラート』ってなんだよ。シニョーレって誰だよ。もしかしてカルロさん?
ってことは………もしかして…気を使ってくれた?
ずっと、居心地悪そうにしてた僕がついに溜め息漏らしたから、子どもが好きそうな(子供じゃない!!!)お菓子持ってきてくれた。……とか。
いや。無いわ。流石に無いわ。誘拐された子供、誘拐しなおして「俺のこねこちゃん❤」とかいう奴がそんなことするわけないわ。お婆様からなんか言われてただけだろ。
まぁ、わざわざ持ってきてくれたものを、食べないで溶かすのも失礼だし。冷めないうちに、って言われたし。相手さんの機嫌損ねたら、どんなことされるかわかったもんじゃないし。食べよう。
決して、甘いものに目が眩んだわけじゃない。
「いただきます。
んむっ……うまっ!」
『ブリオッシュ・コン・ジェラート』とかいうお菓子は、甘くて冷たいジェラートが口の中で溶けて、温かいブリオッシュにじんわり滲みる、最高に美味しいお菓子だった。
※カルロさんと、黒服さんの会話※
「彼に菓子をもって来い。」
「はい。」
『ブリオッシュ・コン・ジェラート』は、名前の通り、ブリオッシュにジェラートを挟んだお菓子です。食べてみたいです。