耳を疑う話 肆
【前回のあらすじ】
CARLOさんが土下座した。
「こんな感じで、二人が結婚することになったの!
二人とも仲良くしてね♪」
一通り話を聞いてから僕は心の中で叫んだ。
――――どぉぉぉしてこうなったぁぁ!
散々(心の中で)叫んで多少は落ち着いた。
「てか、カルロさんって本当に女性なの?
どっからどうみても男なんですけど。」
「正真正銘、女の子よ♪
まったく、失礼しちゃうわ優くん。こんなにかわいい娘なのに。」
目付き凄い悪くて、細身だけど男みたいに筋肉質な体つきで、身長が180センチぐらいあって、明らかにカタギの人間じゃない、幼気な少女を現在進行形で監禁しているかわいい女の子ってなんなんだ。
いい子って聞いてたけど監禁犯だよね!
かわいい孫の婚約者、ビアンでヤンデレだよね!
「まぁ、わざと男性に似せているけど、性転換手術もしていないから、中身は女の子よ。
それに、この結婚はあなたの身を守るためのものでもあるのよ。」
「え!?」
絶対、手術してると思ってた……。
というか、ずっと政略結婚だと勘違いしていたことが、いきなり自分の身を守るためのことなんて言われて、頭が追い付かない。どゆこと?
「ほらっ、いたでしょう?イギリス人のお見合い相手。」
「あぁ、あの人……。」
「あの人なんて呼ばなくていいわよ。」
黒いよおばあちゃん!!ギャップが怖いよ!
「そいつが、販売をしようとした人間の一人が別口だったの。」
「一人だけ特定の人物に買われるのが決まっていた?」
「そういうこと。その人物が誰だかはわからないのだけれどね、怪しいのよ。どうも。」
「? 莫大な額をだしていたとか? それで、そんな資産を持っているなんて怪しい。っていうこと?」
「それが逆なのよ。無料だったの。タダで商品を渡すなんて、何か繋がりがあるとしか考えられないわ。」
商品としての人の価値は高い。丸々一人買おうとすると、ゼロがたくさん付く。
それを無料で渡すなんて怪し過ぎる。絶対に何か特別な繋がりがある。
考えられるのは、そうすることで何か別の利益があるのか、そうすることを強要されているのか、或いは……、
――――神に捧げる貢ぎ物だったのか。
この可能性は考えたくない。
「怪しいじゃなくて、真っ黒でしょ。ソレ。」
「そんな真っ黒な奴らを、優くんに近づけさせたくないの。
これから、どんな方法で近寄ってくるのか、分からないし。
カルロさんに、嫁って理由で守ってもらえば、まわりに怪しまれないし。なにより安全。」
「と、いうわけで。」
あらかた話が終わったので、締めくくるようにパンッと手を鳴らした。
「優くんは、自分の身を守れる。カルロさんは、好きな娘と一緒になれる。ね!都合が良いでしょう?」
「はぁ。なるほど、わかったよ。結婚する。」
こんな事情があるならば仕方ない。腹をくくって結婚しよう。
そもそも断る理由がなくなってしまっ…いやっ!生涯の伴侶がヤンデレってどうなんだよ!
「そう。分かってくれて良かったわ♪
じゃっ!そろそろ出発しましょうか!!」
「 ?!どこに?」
「決まってるじゃなーい❤
二人の、偽りの愛の巣。イタリアのカルロさんのおうちよ♪」
こうして、僕は16年間過ごした我が家から、旅立つことになった。
同棲するんだぁ……。まぁ、夫婦だもんね。
たとえ、条件がそろっただけの偽りの関係でも。愛なんて二人の間に無くても。
――――ホントに愛の無いものならよかったのになぁ……。