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史上最悪の悲恋  作者: 林檎月 満
悲劇(喜劇?)の幕開け
14/16

偽披露宴(準備)の話 弐

【前回のあらすじ】

カタコトさんのサングラスの下は男の勲章だった。


「サて、ドーデモヨイ私メの話ナド置いトイテ、披露宴ノ準備ヲ始メまショウ。」


 カタコトさんは、自虐的な切り出し(そこまで言わんでも)で、重たい空気を振り払った。音すらさせずに、革靴が奥の部屋へと消えていく。

 さっきも音もせず、気づいたら後ろにいたけど (ガラガラ) 、あの人は (ガラガラ) 忍者か (ガラガラ) なんか (ガラガラ) なのだろうか。 (ガラガラ) イタリア (ガラガラ) 版 (ガラガラ) 忍者?


って


「って、さっきから、モノローグのあいだに出てくる、このうるさいガラガラ音なんなの!!?

邪魔なんだけ……」


 叫んだ言葉はガラガラという音ではなく、目の前の光景に掻き消された。絶句した。眼前の


「ドーゾ、オ好キな物ヲお選びクダサイまセ。」


 ドレスの量に。


 さっきのガラガラの正体は、カタコトさんが両手を使って持ってきた、大量のドレスたちを支えるキャスターの悲鳴だった。色とりどりの綺麗なドレスが、僕の目の前に一列に並んでいた。

 今、鏡を見たら、間抜けに口を開けた、僕の顔が写っていることでしょう。空いた口が塞がりゃしない。


「このドレス……全部……」

「エェ、貴方様ノ為ノものデス。」


 空いた口が塞がる気配は一向にない。


 …………えぇー………………。

 この中から、自分が着るの選ぶの…………? 別に、なんでもいいんだけど。なんだったら、勝手に選んどいてもくれてもよかったぐらいなんだけど。

 だって、ホントの披露宴でも、新婚夫婦でもないし。偽物だし。


「どレニされマスか?」

「いやなんでもいいです。」

「……………。」


 心の声を本当の声にしたら、案の定。カタコトさんは少し困ったような顔をした。

 流石に正直すぎた! そう思って、すかさずフォローを入れる。


「えっと、僕 イタリアの披露宴とかよくわかんないので、お任せしたいんですけど良いですか?」

Certo(チェルト)!」


 取ってつけたような言い訳に、カタコトさんは頷いて返してくれた。多分アレは、「OK!」って意味のイタリア語かなんかだろう。多分。その証拠に、すごい勢いでドレス手に取りながら、スマホでなんか連絡してるし。

 ………気合の入った仕事ぶりが、なんだかすごく申し訳ない。主役の僕がいちばんうんざりしてて。


 勝手に罪悪感に襲われてた僕を、引き戻すようなナイスタイミングで、カタコトさんのドレス選びが終わった。


「こチラでイカがデショウか?」


 カタコトさんが持ってきたのは白、紺、ピンクの3着のドレス……3着?


「僕が着るのって、1着だけじゃないんですか?」


 てっきり、着るドレスは1着だけだと思っていたのだが………この中から一枚選べという意味だろうか?


 ふと浮かんだ疑問の答えは、予想外のものだった。


「優様にハ、式が終わるマデ表に出てイタダキきタイのデス。

 けレド、『いきなり知らない場所に連れてこられた上、知らない人間にずっと囲まれてるのは辛いだろう。』とカルロ様が言ワレタノデ、このヨーに。

 オ色直しノ合間合間に、少しバカリご休憩なさってクダサイ。」


 1回言われただけではイマイチ意味がわからず、もう一度聞き返してしまう。


「カルロさんが?」

「? エェ。」


 カタコトさんは、なぜ僕がそんなことを聞くのか分からないらしく、心底不思議そうな表情(カオ)で聞き返してきた。まるで、カルロさんがそうするのは当たり前みたいに。

 「カルロ様は、優シイ人なノだカラこんなコト当たり前でショウ?」とでもいうように。


 ………………………………………。

    ぶんぶんぶんぶん!!

 ありえないだろう! そんな事!


 チラ、と少しだけ思ってしまったことを、頭を振って追い出した。


 そもそも、僕がここで考えても、しょうがないことだろ!

 今! 僕がやんなきゃいけないことは、披露宴を無事に乗り切ること!


「綺麗なドレス選んでくれて、ありがとうございます。気に入ったのでこれでお願いできますか?」

「カシこまりマシた。でハ、サっソク」


 カタコトさんが一呼吸おいて、ドアの方に向き直った。その瞬間、図ったかのようなタイミングでドアが開く。


「オ召かエヲ。」


ドアの先には、赤髪のメイドが慎ましやかに礼をして僕を待っていた。


「フィッテングルームまでご案内いたしますわ。優華様。」


 カタコトさんはメイドさんに僕の衣装を渡して、ドアを閉めた。ここで着替えればいいのに。って思うけどもちろん口には出さない。しきたりとか段取りとかそんなんだろ。多分。

めっちゃ更新遅くなってすいませんでした!! m(__)m

次話はできるだけ早めに!

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