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史上最悪の悲恋  作者: 林檎月 満
悲劇(喜劇?)の幕開け
12/16

優の話 I

【前回のあらすじ】

 凄く意味が分からないままで、披露宴に出席することになった。


 青年は、着物の裾が足早にドアの向こうに消えていくのを、ソファの上で笑顔で見送った。

 だが、ドアが閉められたのを見ると、糸が切れたように、フッ とそれが終わる。さっきまでの不敵さが嘘のように、ぐったりとソファに身を沈めた。

 そして、溜めこんでいたものを、口から吐き出すように大きく息を吐いた。


「……A pezzi(つっっかれたぁー). 」


 その姿は()の有名な【Violenza(ヴィオレーンツァ)】のボスではなく、もはや、ただの青年だった。



  はぁー。……疲れた。


 もう長いことボス演じているけど、何年たってもコレには慣れないな。きっと、これからも慣れない。向いてないんだ。

 無理して快い笑みを作るのも、わざとらしく殺気立つのも辛い。


「まぁ、その演技に素直に引っかかっちゃったけどね。あの子は。」


 彼というのはもちろん、優華さんこと優くんである。


GRAZIA(グラツィア)様の孫と聞いていたから、どんなものかと思えば。随分、普通の子だったな。」


 (一応、親戚とはいえ)得体のしれないマフィアの敷地内ってことで警戒したり、出来る限り本心悟らせないようにしたりするところは、懸命だとは思うけども、それでも普通の子だ。

 知らないものにビクビクして、気を許せる人がいたら安心して、殺気を向けられたら普通にビビる。ただの男の子。


 でも。

 腐っても鯛だ。流石に血を受け継いでるだけあった。


 俺が隣に行って脅かしたときの動きは、隙の無い、洗練されたものだった。あの年の子供ができる動きじゃない。

 確実に、グラツィア様に仕込まれたものである。


 しかし、元暗殺者に教えられたにしては、殺気が微塵も感じられなかった。

 本当に、攻撃されかけたから身を守るだけで、自分から攻撃しようとはしないし、武器もスタンガン。

 だから


「その辺は、グラツィア様がわざとそうさせたんだろう。『自分の身は自分で守りなさい。でも、人殺しはしないで。』って。

 全く。過保護なことで。」

「あらあら。カルロさんのことで、あんなに牽制してた子がそんな事言えるのかしらン?」


 そうやって、グラツィア様はパソコン越しに挑発的な笑顔を向けてきた。

 それに俺は、自嘲的な顔で苦笑しながら返す。


「そうかもしれないけど、グラツィア様ほどじゃないですよ。」

「まぁ! 貴方に言われたらおしまいだわ。」


 口に手を当て、わざとらしく驚きながらグラツィア様が言った。


「じゃ、言われたとおりにしましたし。もうこれで。」

「えぇ。披露宴での報告も楽しみにしているわ。Ciao(チャオ)!」


 そう言い残して、通信は終わった。

 画面には、幼子のように無邪気なグラツィア様の笑顔が、まるで切り取られたように残っていた。

優(について話す二人)の話

「最初から、私たち二人で話してたわよ♪」



次回:優くんドレスアップ!……のハズ

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