肆…予知雨友共
間がとても開いてしまって申し訳ありません。
大幅に書き直します
『あぁ、宝石が……!』
セメストの視線の先では、頭陀袋から零れた色とりどりの宝玉が、先ほどの乱闘によって散らばり、中には踏まれて割れてしまっているものもあった。
『鬼人じゃなかったらこっそり戻しておこうと思ってたのに……!』
被害総額は一千万ではきかないだろう。
あまりのショックに棒立ちになったセメストの肩に手をかけ、ツァルトが満面の笑みを浮かべる。
『それはそれは、ご愁傷様です』
『ツァルト様嬉しそうですね……』
『主の不幸を笑うとは、貴殿なかなか我と気が合うのではないか?』
『黙れ吽形。ツァルトお前ー!!』
『ふふ…まぁまぁ、落ち着いて。……ほら、ありましたよ』
『これが落ち着いていられるかー!って、え?あった?』
怒りで涙目になって印を結び始めたセメストを軽くいなし、ツァルトが一つの宝玉を拾い上げる。
若干ひしゃげた台座にはめ込まれた、大きめの黒い石。
床に叩きつけられてなお、力強く輝く黒曜石。
『これは…………。なんと懐かしい……』
目を細め、眩しげにそれを見つめながら、ツァルトが呟く。
記憶に残るその人に、また出逢えると思うと、その顔に自然に笑みが浮かぶ。
母であり、姉であり、恋人であり、そして良き友であった女性。
彼女の名は、
『……嗚呼、思い出しました。レダ、また貴女に…………』
レダ=オブシディアン。
それが、彼女の名前だった。
そう呟いたツァルトは突然、足早に移動し始めた。
目指すは扉。
どうやらこの店の外、雨森へと向かっているようだ。
『お前らはここで待っていろ』
突然気配が変わった友人を訝しみつつ、セメストも阿形達にそう言い置いて後を追う。
雨森ではその名の通り、雨が降っていた。
暗く、冷たく。
まるで、これから何が起こるのかを、知っているのではないかと錯覚されるほどに。
まだ続きます。