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愛を知りたい  作者: はる
プロローグ
4/5

1-4 挨拶

すいません。

ちょうど二か月ぶりの更新になります。

「「あの……っ!」」

 まるでタイミングを合わせたかのように、一卵性の双子とも思わせるように、ぴったりと声があってしまった。

 もちろん、そのどちらでもないことを僕は知っているのだが。

「先どうぞっ……」

 少し顔を赤めながら彼女――牧下さんはそう言ってきた。

 そう言われても、僕としたらこの静かな空気を変えようとしただけで、特に話すことはない。

「牧下さんからでいいよ……です」

 だから僕に来た会話権を彼女に譲る。

 まさか僕からなんて思っていなかったから敬語を忘れてしまっていた。

「じゃあ……」

 彼女はうつむいたまま話し出し、すっと顔を上げると、

「敬語禁止!」

 右手を人差し指を立てて僕の口の前に突き出した。

「えっ」

 突然のことに驚き、そんな声を出してしまった。

「ほら、絶対その敬語作ってるでしょ。それが癖って言うかなんて言うか……まあ、慣れてるんなら別にそのままでもいいけど、でも旗谷君はそうじゃないよね。だから別にかしこまる必要ないよ? 私、知ってるんだから」

 一体何を知っているというのだろうか。

 まあ、話がややこしくなりそうなので口には出さないが。

「ね? わかったら返事!」

「えっ……あ、うん」

「はい、みんな静かにしてー」

 座席の移動が終わったらしく、担任がみんなに呼びかける。

 よし、これでこの話をやめられる。

「じゃあまず隣の人に自己紹介から始めましょっか。はい、自己紹介スタート!」

 そう思ったのだが、担任のこの言葉で喜びが儚く散ってしまった。

 できれば関わりたくない。

 それは彼女が星宮に通っていたことを知ってからずっと思っている。

 でも、席が隣になってしまった以上、まったく口をきかないことなどできないだろう。

「それで……さ」

 僕は仕方なく思いながら彼女の方を向く。

「やっぱり私のこと覚えてないの?」

 少し上目づかいで彼女は訪ねてきた。

「うん……」

 それに返事をすると、僕が悪いような気になって、つい声に力がなくなる。

「私ははっきり覚えてるんだけどな……」

 それはただのつぶやきだった。

 それが風に乗って僕の耳に届いた。

 彼女を見るとどこか悲しげな表情をしている。

 今聞こえてきた声はただの幻聴だったのではないかと思うほど、さっきまでの明るさは感じられなかった。

「ってことは、旗谷君としては私に会うのは今日が初めてと」

「記憶の中では初めてのはず」

「あ、ごめんね。そうだよね。知らない人が突然馴れ馴れしく話して来たらあれも普通かもね」

 きっとさっきの、授業前のことを言っているのだろう。

 冷たくした理由は、別にそう言うことではないのだが、彼女の思うようにさせておこう。

「じゃあ、せっかくだし、改めて自己紹介しよっか」

 いや、改めるも何も自己紹介は今が初めてなのだけれども。

「私からね。名前は……? あれ? そういえばさ、さっき旗谷君私の名前言ってたよね」

「正確には苗字だけど」

「なんでわかったの?」

「これ――名札があるじゃないですか」

 僕は自分の名札に手を添えながら言う。

「そっかー。そう言えばそうだったね」

 彼女は大げさに、握った右手と開いた左手を合わせてそう言う。

「覚えてたわけじゃ、ないんだね……」

 でもすぐ表情が暗くなって、また何かつぶやいたようだけど、今度は聞こえなかった。

「何か言いました?」

「…………えっ? ううん、なんでもない」

 そういって、彼女は微笑む。

「じゃあ仕切りなおして……私の名前は牧下友香。出身幼稚園は星宮幼稚園で、小学校は……やっぱりいいや」

 また何か辛い顔をした。小学校に何か嫌な思い出があるのだろうか。僕は小学校で嫌な出来事は特になかった。もっとも、その前に幼稚園の嫌な思い出があるから、その印象が強くて覚えてないだけかもしれないけど。

「じゃあ次旗谷君」

「もうですか?」

「だって私特に言うことないもん。好き嫌い特にないし、他のことも……だから」

「僕も同じです」

「じゃあ別にいいよね。はい、旗谷君の番」

「名前は……あの、これ要ります?」

「旗谷知久、でしょ?」

「やっぱり必要ない、ですよね……」

「……って、あー! また敬語使ってる! ダメって言ったじゃん‼」

「はい。じゃあとりあえず今はそこまでねー」

 そんなとき、担任の佐久谷の声が聞こえてきた。

「もぅ……。旗谷君のせいで全然話せなかったじゃない……」

「そもそも、知っていることを離したって意味ない――――」

「話すことに意味があるの! 知ってるかどうかはそのあと!」

 なんか急に怒られた。

 何か悪いことでも言ったのだろうか。

「それじゃあ、係決めていきましょうか」

「「「おーっ」」」

 担任の声で、また声が上がる。

 いちいち面倒なクラスだ。



 そんなこんなで授業(?)は進み、今日は下校となった。

 決まったことと言えば委員会とクラスの係だが、もともと委員会の定員は一年生のため少なく、立候補でそのすべてが埋まった。

 それに対して、係はほぼ自由だった。

 僕の係りは、残り物のだった集配係になった。

 ちなみに彼女も同じく残った、黒板消しの係りになった


早く書き溜めを作りたいです。

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